古臭い憎まれ口を言ってくる女
離さないで
絶対にその手を離さないで
目覚めると自分の部屋の玄関だった。
昨晩の記憶が途中からすっぽり抜け落ちている。
よくここまで辿り着いたものだ。
スマホを見ると、電源が切れている。
電池切れだな。
しかしなんだろう。
靄に包まれた水辺で誰かに手を離さないでと懇願された、ようなイメージだけが頭に残っている。
それこそ頭に靄がかかっているようだ。
友人の経営するバーで飲んでいたところまでは記憶がある。
その後ここに辿り着くまでにそのような幻想的な体験をしたとはとても思えないのだが。
やっぱり今見た夢かな。
ようやくスマホの電源が入る。
友達から何度も電話がかかってきていた。
メッセージも30件以上ある。
本当に心配性なんだから。
大丈夫だよ、と返信した途端電話がかかってきた。
「今どこにいるの?」
自分の部屋だけど。
「あんた、めちゃくちゃ酔っ払って女と店出てったんだよ。」
女と?
「知り合いだって言ってたけど。」
知り合いねぇ…
朧気ながら記憶が蘇ってくるような感覚がある。
そうかあの公園。
帰り道に一つ池のある公園がある。
あそこに誰かと一緒に行ったような気がする。
頭が痛い。
もう少しベッドで寝たら散歩しに行ってみるか。
何か思い出すかもしれないし。
離さないで
絶対に手を離さないで
またこの夢か。
池に落ちそうになった私の手を掴んでくれた。
一緒にいた彼女が。
あなたは誰なの。
全く…私がいないと本当にダメなんだから。
もしかしてあなたは




