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第15話 怪魚

目覚めたのは砂浜だった。見渡す限り大海原が広がっている。振り返ると鬱蒼とした人間の手の入ってない森。記憶がようやく戻ってくる。そうだ、私は漂着したのだ。ここがどこなのか全く検討がつかない。取り敢えず人間を探してみることにしよう。海岸に沿って散策してみることにする。


そして最悪の事実を突きつけられた。おおよその感覚だが30分から1時間ほど歩くと一周して同じ場所に戻ってきてしまったのだ。ここはそれほど大きくない無人島のようだ。私は途方に暮れる。

サバイバルの知識も経験も全くないのだ、こんな場所で何日生きられることか。しかし助けが来ることを信じて今は兎に角生き延びることを考えるしかない。

さっき島の周りを歩いた時に川を見つけることが出来た。

なんとかまずは水を確保しよう。今度は川沿いに上流に向かって散策してみることにする。道中なんとなく食べられそうな木の実を見つけることが出来た。

川の水も澄んでいて飲むことが出来そうだ。もしかするとしばらく生きていけるかもしれない。



そうして時折り川で水を飲み、集めた木の実などを食べながら海岸で救援を待ち続け数日が経った。全く船の影はなく、救援が来る気配もない。

木の実だけではやはり限界があるだろうか。魚でも食べられないものか。しかし私には釣りの経験もなければ道具もない。

ダメ元で川に入ってみるが勿論そう簡単に魚は捕まらない。しばらくチャレンジして諦めかけていたところ、少し奇妙な魚がいることに気が付いた。鱗は赤や紫色でやたらと派手に光り、何より泳ぎ方がおかしい。泳いでいるというよりは流れにフラフラと揺られているようだ。疲れ切っていた私はこの魚ならば捕れるかもしれないと思い手を伸ばす。そして驚いたことに簡単に掴めた。落とさないように気を付けながらすぐ川岸に上がる。どうしたものか、火を起こす手段もない。少し逡巡した後意を決して魚に齧り付いてみる。意外にも美味だった。もっと生臭いものかと思ったのだが。暫くぶりのタンパク質だ、心なしか活力を得た気がする。これからもあの魚を探せば捕らえられるかもしれない。満足して海岸に戻る。

しかし変化が出たのは夜のことだった。


私は悪夢に魘された。ひどく暑くてたまらなかった。とにかく水に入りたくて仕方がなった。そしてあの場所から離れたかった。私は海に入るとがむしゃらに泳ぎ続けた。力の限り泳いで泳いで泳ぎ続けた。どれほど泳いだかわからない。気付くと一隻の船が見えた。辺りが明るくなっていた。私は一晩中泳ぎ続けていたのか。船員が私に気付き、引き揚げてくれる。そこで私の意識は途絶えた。


ドニールリッジ号の行方不明になっていた乗客の一人が見つかったが間もなく死亡が確認された。発見された際様子がおかしかったため、解剖したところ未知の寄生虫が体内から見つかったことがわかった。この寄生虫はまず魚に寄生する。寄生された魚は鱗の色が変化し、まともに泳げなくなり非常に捕食されやすくなる。そして寄生された魚を食べたものが新たな宿主となるのだが、この寄生虫は宿主の行動に作用する可能性があるというのだ。この寄生虫に寄生されたものはなるべく遠くまで泳ぎたいという強迫観念に支配されるのだという。実際この男性は肉体が限界を迎えても泳ぎ続け、衰弱死した可能性が高いようだ。現在、男性がどこでこの寄生虫に寄生されたのか調査が進められている。

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