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第13話 生クリームが残された現場

やはりいい風が吹く。

この島に来るのは何年ぶりだろう。

風の心地良さは少しも変わらない。

「よく来てくれた、友よ」

「王よ、私のことを未だに友と呼んでくださることには感謝しますが私のような島を出た者をそのように呼んでは示しがつきませぬ」

「なに、今ここには私とそなたしかおらぬのだ。構わんだろう」

私の尊敬する王は全く変わらないご様子だ。


「そもそもな、王だなんだとこんな仰々しい名前で呼ばれるのに私はもうウンザリしてしまっているのだよ」

「その様なことをおっしゃってはなりませぬ。御名は祖先より代々受け継がれる偉大な名ではありませぬか」

「それなのだがな…

実は全島民の名を統一して全員一つの同じ名前にしようかと思っている。」

驚いた。風の声を聞き、星の夢を見ると謳われた我らが王のロマンティストぶりは未だに健在らしい。


「女王様には相談なされたのですか」

「妻は今日は既に寝ている。明日話すつもりだ。まぁあれで憐れみ深く、情けの深い女だ、話せばわかってくれているだろう。」

たしかに女王様は反対はされないかもしれない。

「お子様方はどうなのですか。もう学校にも通われてらっしゃるご年齢ですよね」

「どうであろうな。むしろあやつらの学校嫌いが改善されないか期待しているのだがな。恐らく学校で王の子供と特別扱いされるのも嫌気がさしているのであろう」

どうやら説得は難しいようだ。

王は一度自ら決めたことをそう簡単に翻す方ではない。


「して、その島民全員同じにする名は既に決めていらっしゃるのですか?」

「いや、実はそれがまだなのだ。古より島に伝わる儀によって決めようと思う。その見届けをして欲しくてそなたをここに呼んだのだ」

「左様でございましたか、では早速用意をしましょう」

半ばやぶれかぶれですぐに準備に取り掛かることにする。

この島に古より伝わる儀とはボウルに生クリームをなみなみいっぱいにし、そこにヤシガニを落とした際の生クリームの飛び散り方によって島の大切なことを決めたり未来を占ったりする方法だ。

「では参りますね」

「始めてくれ」


なるべく高くからボウル目掛けてヤシガニを落とす。

暴れて足を振り回すヤシガニ。

相当の生クリームが飛び散った。

「形を見てくれ、何か文字は見えるか」

「これは…ハ、メ、ハ、メ、ハ…

ハメハメハ、と読めますね」

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