警備員と訓練
あぁ、あんなにかわいい娘なのに、まさかあのニオイに気づいてないのか?
派遣されているデパートでもかわいいと評判の女性が、まさかニンニクのニオイをまとっているなんて・・・
いや、これは戒めだ。
まさに「人の振り見て我が振り直せ」ってやつだ。
アラフィフである俺は、普段からかなりヤバいニオイを撒き散らしているはず。
人目につきやすいあんなかわいい娘ですら、無防備になることがあるのに、油断しやすいおっさんが、うっかりニオイケアを怠ったなら・・・
まあ、間違いなく周りからドン引かれるだろうな。
気をつけよう。
と、自虐的な話はこれくらいにして、今日の話は「訓練」だ。
警備員で訓練?とピンと来ないかもしれないけど、警備員は年に10時間以上だったかな?法律で研修が義務づけられているんだよ。
その時間のほとんどが業務連絡や失敗したことへのフォローや反省、原因追求に使われるけど、万一の際、例えば急病人が出たり、火事になったりした場合の対応を実際に道具や機械を使って実践するんだ。
これは、レストランとかで言えば、新メニューの説明会兼調理研修みたいな感じになるのかな。
それを法律でやんなきゃいけないって決められてるんだから、警備員はしっかりしなければいけない仕事なんだって、国からも見られてるということなのかもな。
で、研修なんかで教わったことは、そのままだといつか忘れてしまうから、職場に帰っても何度も繰り返し練習したりする訳だ。
だけど、日常の仕事もあるから、そうした練習や訓練の時間は契約先と取り決めてからでないと作れない。
職場によっては、ひとりで仕事をしている警備員もいるから、そういった人たちはもっとできないだろうな。
なので、何も復習しないままで時間が過ぎ、せっかく教わったものもきれいさっぱり忘れちまう警備員が続出するわけだ。
職場で訓練の機会がないなら、どうするのかって?
そんなの、自分で勉強、復習するしかないんじゃないの?
バットの握りや振り方は本や動画を見れば分かる。
でも、構えがわかったからといって、実際にバットを振ってみなきゃ、どのくらいのスピードでスイングできるかはわからない。
さらに、どんなに素振りがうまくなっても、投げられたボールが打てるかと言えばそうではない。
やっぱり、実際にボールを打たなければ、実力はつかないものだ。
あの屈強な消防士たちは、日々の鍛練に余念がない。
実務や事務を終えたら、訓練訓練、また訓練だという。
なぜ?
それは、猛火立ち上る火災現場に「普通に」出場するためだって聞いたことがある。
どんな人間だって、火を見れば怖い。
ましてや、ゴウゴウと音を立てて燃え盛る中に突入する消防士たちの心境は、推し量りようもない。
でも、消防士たちに求められるのは、火災の鎮火と人命救助。
怖さを克服し、使命を果たすために、日々の訓練を積み重ねているんだって聞いてからは、これって、俺らの仕事も同じじゃね?と思うようになった。
俺たちが警備員としてその力を一番求められるのは、日常ではない「異常」な時だ。
ライトなものだと、迷子や商品や手荷物の持ち去り、ヘビーなものなら、地震や火災。
こういった異常な時にいかに普通に対応して、被害損害を抑えることができるのかが、警備員が求められるものだと思う。
だから、漫然と日々を送らず、訓練をする必要があるんだよな。
普段のぬるさとのギャップがありすぎると、若い奴らに言われたけど、そいつは心構えひとつ。
起こりようもない「万が一」のために自分たちがいるんだって。
俺はそう思ってる。
さて、お気に入りの日本酒も飲み切ったし、今日はこれで。