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教えて!

作者: 幕霧穂

「ねえねえ、お父さん」

「どうした?息子よ」


 辺りがユキに囲まれた真っ白い空間で親子らしき2人が何やら話していました。


「ユキってどこから来るの?」


 息子からの唐突な質問に父親は困りました。


「ん?…うん。そうだな。ユキ…ユキか…。ユキはな、白くて…細かいだろ?」

「うん。」


 父親もユキが何処から来るのかなど知らず、考えたこともなかったからです。


「そう。白くて細かい…。つまりは、カスだな。」

「カス?何の?」


 しかし、知らないなどと言っては息子を失望させてしまうかもしれないと、父は考え考え言葉を捻り出しました。


「ええと…。ユキは溶けると水になるだろ?…氷と同じだ。つまりユキというのは氷を削ったカスだ!」

「…何で氷のカスが空から落ちて来るの?」


 何とかそれらしい言葉を紡ぎ出しましたが、息子から最もな疑問を投げかけられ父親はなけなしの頭を捻りました。


「…うん。空の上にはな…国があるんだ。氷で覆われた国だ。…その国では氷で家を作るんだ。ユキはその途中で出来た…カスだ。」

「…でも「おーい!かまくら作ろうぜ!」


 苦し紛れな話に息子がさらなる疑問を並べようとしたところに(父親にとって)タイミング良く息子の友達からの誘いが来ました。


「ほら、友達が呼んでるぞ。もっとユキが積もる前に遊んで来なさい。」

「…うん!ーー大っきいの作ろー!」


 渡りに舟とばかりに息子を促せば、息子の興味はすぐに消え、どんなかまくらを作ろうかという考えでいっぱいになりました。

 父はその様子を見てこっそり息を吐きました。




「ねえねえ、お父さん」

「どうした?息子よ」


 辺りがコパに囲まれた茶色い空間で親子らしき2人が何やら話していました。


「コパってどこから来るの?」


 息子からの唐突な質問に父親は困りました。


「ん?…うん。そうだな。コパ…コパか…。コパはな、茶色くて…細かいだろ?」

「うん。」


 父親もコパが何処から来るのかなど知らず、考えたこともなかったからです。


「そう。茶色くて細かい…。つまりは、カスだな。」

「カス?何の?」


 しかし、知らないなどと言っては息子を失望させてしまうかもしれないと、父は考え考え言葉を捻り出しました。


「ええと…。コパはふわふわしていて燃えるだろ?…小枝とかと同じだ。つまりコパというのは木を削ったカスだ!」

「…何で木のカスが空から落ちて来るの?」


 何とかそれらしい言葉を紡ぎ出しましたが、息子から最もな疑問を投げかけられ父親はなけなしの頭を捻りました。


「…うん。空の上にはな…国があるんだ。植物で覆われた国だ。…その国では木で家を作るんだ。コパはその途中で出来た…カスだ。」

「…でも、木で家なんて作ったら燃えちゃうよ。今は冬だから燃えないけど、夏になったら全部無くなっちゃう」


 苦し紛れな話に息子がさらなる疑問を並べました。親子が佇んでいる場所の季節は冬。ここいらでは夏になると発火現象が起こるため、家は基本的に石材で作られていました。


「うん…それはな……、おっとコパが積もってきたぞ。遊ぶ時間が減るんじゃないか?」

「本当だ!公園に行ってくるね。」


 地面を指差して話を逸らせば息子の興味はすぐに消え、父親に一言告げて公園へと走って行きました。

 父はその様子を見てこっそり息を吐きました。




「ねえねえ、お父さん」

「どうした?息子よ」


 辺りがイコに囲まれた灰色の空間で親子らしき2人が何やら話していました。


「イコってどこから来るの?」


 息子からの唐突な質問に父親は困りました。


「ん?…うん。そうだな。イコ…イコか…。イコはな、灰色で…細かいだろ?」

「うん。」


 父親もイコが何処から来るのかなど知らず、考えたこともなかったからです。


「そう。灰色で細かい…。つまりは、カスだな。」

「カス?何の?」


 しかし、知らないなどと言っては息子を失望させてしまうかもしれないと、父は考え考え言葉を捻り出しました。


「ええと…。イコは水に沈むだろ?…岩石魔法で出るのと同じだ。つまりイコというのは岩石を削ったカスだ!」

「…何で岩石のカスが空から落ちて来るの?」


 何とかそれらしい言葉を紡ぎ出しましたが、息子から最もな疑問を投げかけられ父親はなけなしの頭を捻りました。


「…うん。空の上にはな…国があるんだ。土や石で覆われた国だ。…その国では岩石で家を作るんだ。イコはその途中で出来た…カスだ。」

「…でも、岩石で家なんて作っても夏になったら溶けちゃうよ。塩酸が降る時期になったら全部無くなっちゃう」


 苦し紛れな話に息子がさらなる疑問を並べました。親子が佇んでいる場所の季節は冬。ここいらでは夏になると塩酸が降るため、家は基本的に金で作られていました。


「うん…それはな……、おっとイコが積もってきたぞ。遊ぶ時間が減るんじゃないか?」

「本当だ!公園に行ってくるね。」


 地面を指差して話を逸らせば息子の興味はすぐに消え、父親に一言告げて公園へと走って行きました。

 父はその様子を見てこっそり息を吐きました。




「ねえねえ、お父さん」

「どうした?息子よ」


 辺りがユエに囲まれた黄色い空間で親子らしき2人が何やら話していました。


「ユエってどこから来るの?」


 息子からの唐突な質問に父親は困りました。


「ん?…うん。そうだな。ユエ…ユエか…。ユエはな、黄色くて…細かいだろ?」

「うん。」


 父親もユエが何処から来るのかなど知らず、考えたこともなかったからです。


「そう。黄色くて細かい…。つまりは、カスだな。」

「カス?何の?」


 しかし、知らないなどと言っては息子を失望させてしまうかもしれないと、父は考え考え言葉を捻り出しました。


「ええと…。ユエは金食い虫が良く食べるだろ?…黄金と同じだ。つまりユエというのは黄金を削ったカスだ!」

「…何で黄金のカスが空から落ちて来るの?」


 何とかそれらしい言葉を紡ぎ出しましたが、息子から最もな疑問を投げかけられ父親はなけなしの頭を捻りました。


「…うん。空の上にはな…国があるんだ。黄金で覆われた国だ。…その国では黄金で家を作るんだ。ユエはその途中で出来た…カスだ。」

「…でも、黄金で家なんて作ったら金食い虫が食べちゃうよ。今は冬だから冬眠してるけど、夏になったら穴だらけになっちゃう。」


 苦し紛れな話に息子がさらなる疑問を並べました。親子が佇んでいる場所の季節は冬。金食い虫が冬眠している季節です。夏になると気温が下がり、金食い虫が活発になります。金食い虫はどこにでもいるため家は基本的に氷で作られていました。


「うん…それはな……、おっとユエが積もってきたぞ。遊ぶ時間が減るんじゃないか?」

「本当だ!公園に行ってくるね。」


 地面を指差して話を逸らせば息子の興味はすぐに消え、父親に一言告げて公園へと走って行きました。

 父はその様子を見てこっそり息を吐きました。



--------------------


「神よ。お聞きしてもよろしいですか。」

「どうした?天使よ。」


 空中に大量のモニターが浮かんだ空間で、白い髭をたくわえた大柄な人影と羽の生えた小さい人影が話していました。

 モニターはそれぞれ、白い物に覆われた世界、茶色い世界、灰色の世界、黄色い世界の4種類ありました。


「どうして4つの世界の物を、他の世界に降らせているのですか?」

「うむ、それはだな…」


 最近生まれたばかりの天使は、冬になると行われる恒例業務に疑問を抱き、神様に尋ねました。


「この世界たちはバランスが悪いんじゃよ。それぞれの世界で水属性・土属性・金属製・木属性が不足しておる。じゃから、それぞれで余った削りカスをこっそり回収して降らせておるんじゃ。」


「なるほど。マナのバランスをとっているのですね。…ですが、何故そんな周りくどいことを?基礎から増やしてしまえば良いのではないですか。」


 神様の説明を聞いて、天使は一度納得した素振りを見せましたが、更に疑問を重ねました。

 マナの属性が偏っているならば、それを解消する事など神様ならば容易であるからです。


「うむ。やろうと思えば出来るじゃろうな。しかし、初めの頃のわしでは力が弱くての…要らないものを循環させるだけで精一杯じゃった。」


 神様は遠い昔を思い起こして目を細めました。


「今なら全ての世界を同じ環境にするのも簡単じゃろうが…」


 神様はモニターに目をやると、[ユキ][コパ][イコ][ユエ]で遊ぶ子供達を眺めてこう言いました。


「少し違う世界というのも…楽しいじゃろ?」



--------------------


「ただいま。いやー参ったよ。」


 4つの世界の父親達は、家に帰ると早速今日の事を妻に話しました。


「息子に、[ユキ][コパ][イコ][ユエ]はどこから来るのって聞かれてさ…。」

「なんて答えたんだい?」


 それぞれの家で同じようなことを父親達が説明すると、それに対して妻達は全く同じ答えを返しました。


「そんなもの…神様からの贈り物だよって言えば良いのさ」

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