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フレイル、上手に焼けました!?


 ~前回のあらすじィ!(CV:若●●夫)

 慈愛の女神(笑)によって無慈悲にも最凶のフレイルに転生させられてしまった俺!田中田朗太郎(たなかだ ろうたろう)。元人間の独身男にして現生?はフレイル。

 あ。ちなみに俺を造った鍛冶師のオッサンは相当な事をやらかしたみたいでさ? これから処刑されるってよ? どうなっちゃうんだよ。


 ☆★☆


「やだああああああ!? 吾輩はまだ死にたくなあああぁいっ!?」


「ええい!うるさいうるさいっ!! 見苦しいにも程がるぞこの外道めがッ!」


 俺を造った神代鍛冶師だとかいうオッサンが太っとい鎖に巻かれて大きな石の柱に縛り付けられて高さ数メートルほどで磔になっている。足元には黒い宝石のようなものが山のように積み上げられている。そしてまだ名前も付けてもらってない可哀相なフレイルの俺はオッサンの後ろにある煌々としたドデカイ炉の中に放り込まれていた。馬鹿みたいに広い火刑場には数百人のローブを纏った者達でひしめきあっている。


「さっさとあのみょうちきりんな呪物を解呪し、聖なるインゴットへと回帰させる方法を吐かぬか!」


「ィやぁだねぇぇ~!! 呪物ぅ? この馬鹿者共めがっ!? アレは吾輩の最高傑作の神フレイルだ! その価値すら解らぬ貴様らに教えることなぞマツゲ一本分ほども無いわっ! それになぁ~吾輩の傑作には完全破壊不能の呪いがエンチャントされておるのだ! 吾輩の半生を懸けて施した呪いだわ!貴様らになどには末代までかけても到底解呪などできるはずがなかろうが!? ……というか吾輩も解呪方法など微塵も考えておらなかったから、天才である吾輩でも…アレはぁ、多分もう解呪とかできるレベルじゃあないんじゃあないかな~? フハハハァ!ざまを見よッ!!」


「「「ぐぬぬぬ…!」」」


 なるほどねぇ~。だからさっきから熱いどころかぬるま湯に浸かってるくらいの感じなのかぁ。欲を言えば後数度、イヤ数万度ほど熱くしてくれると丁度いい感じになりそうなんだがなあ~これじゃあ温水プールだぜ。


「メロネロ・ドロガアン!貴様の火刑は決まったことではあるが、最期に聞かせよっ! 何故同門の神代鍛冶師を手に掛けたのだ?! 中には貴様とは兄弟のような間柄であった者もいたであろう…!」


「はん!何も知らずにこの下級鍛冶師共めらが…。彼奴らは常に吾輩を陰で笑い、嘲り!罵り!そして我が才能を羨み畏れ、呪っておったのだ! フン!そればかりか我が師をかどわかし、吾輩から神鉄とオリハルコンを奪った! そして…あんな毒にも薬にもならぬ飾って眺めることしかできぬ剣と槍なぞにしおって!」


「それはどちらも神々に捧げる聖剣と聖槍だ!? 貴様は同門の神代鍛冶師を手に掛けたばかりか国の重要文化財に指定された聖物を破壊したのだぞ?!」


「何を偉そうに腑抜けたことを! 武器は使われてこそ全てだ!敵を殺してこそ全てっ!あらゆる万物を壊し!砕き!魂すら滅してこその武器なのだ! あんなものに使われる鋼が哀れとは思わぬのかッ?! 貴様らには武器を創造せし者の誇りは無いのか?! …吾輩は哀れな鋼達を、ただただ我が傑作として救済したのみだわ…!」


「…狂人めが! では再度問うっ! …神殿の聖処女様を穢したのは何故だ?」


 ローブの過半数、特に若そうな男達の怒りのオーラが凄まじいなあ。このオッサン、ホント何したわけ?


「………いやぁ、吾輩はね? 単に聖処女の指輪に使われているミスリルが欲しかっただけだわ」


「…何故、聖処女様を害したのかと聞いておるのだ!?」


「………だってさあ~まさかあの指輪。生娘のままでは外せないなんて知らなかったんだもん吾輩。だから、ね? わかるであろう? 吾輩だってチョットは気恥ずかしいのだぞぉ? あ。言っとくが合意の上でだからね。…でも以外だったなあ~? あの娘があんな好き者であったとは。最後なんて"だいしゅきホールド"なる体技まで披露してくれたのだぞ?」


「「「死ねぇ~!!?! この変態鍛冶師がぁ~!? このロリコン野郎~!!」」」


 一斉に石がオッサン目掛けて投擲される。中には鼻血を流しながら涙する男やその聖処女とやらの姿絵を握りしめて吠える男までいた。どうやら清純派アイドルのような存在だったんだろうなあ。オッサン、見た目によらず結構やるなあ~。


「ハァハァ…! それに加えて貴様は国の守護者を誘惑し、国の宝物庫から聖なる精霊石を盗み出した挙句にあの下らぬ棍棒なぞ如きに使いよって!? それに重責たる守護者一族はみな斬首となったのだぞ!?」


「ばぁ~かっ! 棍棒だとお? 貴様ら如きヘボ鍛冶師は所詮メイスかモーニングスターしか知らぬのだろう! いいか?! あの傑作は吾輩の設計せしめし最高傑作フレイルだわ!? 吾輩が死んだからってパクるなよ?」


「誰があんなものを模倣なぞするかっ?!」


「それになあ。守護者を吾輩の私財で買収したのは確かだが。守護者らは喜んで手を貸してくれたのだぞ? あの悪辣な王族共に一泡吹かせてやれるとな! …どんだけ恨まれてんだわ?王族の無能共は」


「「「ぐぎぎぎ…!」」」


 オッサンの言葉に歯噛みする連中の中からひとり前に出てくると、スルリとそのローブを脱ぎ捨てる。なんと!それは全裸の銀髪褐色美少女だった!マジ眼福。体中に赤青黄のボディーペイントを施している。


「…み、巫女様」


「もはや言葉遊びはこれまでです。この悪しき咎人を浄火します」


 そう言うと彼女は骨から削り出したようなナイフで自身の腕を切り裂き、オッサンが磔にされた柱の根本に積まれた黒い石の山にまるで舞い踊るように振りかけたのだ。


「我らが聖なる炎の姉妹、裁きの炎ゲヘナよ! 我が血と千の黒曜炭を贄に咎人の浄火を願い給う!」


「ぎゃああああ!!?! やめろぉぉぉ!? せめて普通に焼き殺せえぇ~?!」


 オッサンが悲鳴を上げたかと思うと、柱は一瞬で紅蓮の炎に包まれる。そして炎の中からズルリと女が這い出て来てオッサンを愛おしそうに抱擁する。女だ!しかも黒い炎の女だった。


「アジャウアアアアアアア?!?! ギヤアアア!? 光の女神よお助けえええぇえ!!」


 煉獄に抱かれたオッサンが涙を蒸発させながら慈悲を請う。まあ、悪人の最期とはいえ…あんなのでも一応俺の創造主だ。情の欠片も湧かないが、一応に哀れに見える。 成仏?しろよ…


 だが、そんなオッサンを見て女が悪戯っコのように嗤う。


「なんだえ? わざわざ炎の海から参った妾を袖にして…光の大姉上をご所望かえ? 姉上なぞ其方を躊躇なく滅するのみぞ? しかし、良き味のする悪魂だのぅ…安堵するが良い…妾は決して其方を手放さぬと約束しようぞ? ずっと蜜の飴玉のように妾の舌の上で転がしてやろうのぅ…」


 妖艶な笑みを浮かべて火だるまになったオッサンの頬を舐める。するとオッサンの顔半分が炎の中に消え失せ、オッサンは更に絶叫を上げる。


「ゲヘナ様。此度の降臨、誠にありがたき幸せ。…畏れ多いのですが、まだ願いたい義がございます」


「うむ? 愛しきドワーフの巫女よ、妾はとても機嫌が良い…申してみよ」


「…は! その咎人が創り上げし呪物。それを常世から消し去ることはできますでしょうか…?」


 ゲヘナと呼ばれる炎女がオッサンを灼熱のバストでギュウギュウしながらも、炉の中の俺をジロリと見る。が、すぐそっぽを向いてオッサンの残った頭をナデナデする。もうオッサンの半身以上が炎の中に消えているがな。


「…嫌じゃな。あんなものでは妾すら腹を下すであろう。……まあ、光の大姉上であれば可能であろうがのぅ。フフフ…其方も大層なものを造ったものよ。 のう?」


「…では、光の炎。アウラカン様であれば可能なのですか…!」


 巫女とやらが一瞬期待したような目線を炎女に送る。


「…そうだのう。寛大な妾が炎界にて大姉上にお願い申し上げても良いぞ? …ただし、偉大なる大姉上に動いて頂こうというのだ。願い出るお主に連なる者…いや、ドワーフ全ての魂血を捧げるというのならば…一考しようぞ? どうだ? …フフッ」


 巫女さんは深く頭を下げて震えている。


「大変失礼致しました。どうかお許しを…!」


「フン! つまらんのぅ~? まあ良いわ。この者は妾が確かに我が煉獄の庭に連れ帰ろうぞ…ではさらばぞ、今代の巫女よ。…フフフフッ!」


 そう言って笑い声をあげながら炎女は黒い炎を噴き出しながら炎の中へと還っていく。炎が消えると消し炭となった柱が音も無く崩れた。



 オッサンは影も残さずにこの世から…上手に焼けました!

 


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