転生したらフレイルとか。うん、ないな!
フレイルという武器は、連接棍もしくは、連接棍棒と訳される、柄の先に鎖などで打撃部を接合した打撃武器の一種。元々は、農具で穀物の脱穀に使われていた穀竿が原型となっている。バイ・ウィキペディア。
『…さて、田中田朗太郎さん。貴方は異世界にフレイルとして転生していただきます』
「…は?」
『…さて、田中田朗太郎さん。貴方は異世界にフレイルとして転生していただきます』
「…イヤイヤイヤイヤ!聞こえなかった訳じゃあないんですけど! え!? なんで? なんでフレイルなの!せめて聖剣とかあるじゃあないですか!」
『大事なので2回言いました。じゃあ聖剣なら転生してくれます?』
「イヤ百歩譲って人間またはモンスター、どころか!生き物にすら生まれ変われないならっ!ならだよ!?それならまだ恰好の良い剣の方がいいけど…」
『残念ながフレイル以外の選択肢しかありません』
「なーんーでーだーよー!?」
『…はあ。田中田朗太郎さん。貴方は死亡直後に書いていただいた転生希望書に"特に希望はありません"と、それはそれは稀有で徳の高い事を書いてますよね? ココにその用紙がありますから間違いありませんよね? 貴方は経緯はどうあれ望まぬ死…他意の事故、または殺されてしまったので転生の希望ができる魂でありながら、です』
「い、いやあソレはさあ~。その時は自暴自棄だったというか…なんというか」
俺は生前、といっても実感数分前だが。同期入社の幼馴染みの女の子に酔った勢いとはいえ一世一代の告白をしたのだ。付き合って下さい!と。しかし、結果は惨敗。オマケに自身の名前をディスられるオーバーキル。俺は生きる気力がなくなって、その足で夜の歩道橋から飛び降りようとした。…が、やっぱり怖いので手すりにしゃがみ込んでいたのだけど、通りすがりの酔っ払いにドンケツされて落ちて死んだのだ。我ながら最悪の最期であったのよ…!
『じゃあフレイル以外の2択にしましょうか。私は慈悲の女神ですからね、特別ですよ? むしろ希望者なんていないので貴方に転生していただく以外ないのですよ』
「2択?! ま、まあフレイル以外なら…って希望者がいない…?」
『はい。G(異世界産)かシロアリ(異世界産)です』
「ええっ?! 何その2択?! そんなの誰も選ばねーだろが!」
『だからフレイル以外の選択肢はないと言ったではないですか』
「…どっちも害虫。てかシロアリはGの親戚かその系譜に連なるクリーチャーじゃあねえか」
『あ。因みにGかシロアリを選ばれた場合は一生、いや一魂中Gまたはシロアリですよ』
「やぁ~だぁ~!? てか一魂?! はじめて聞いたはそんな言葉っ!」
『シロアリならワンチャン女王シロアリにもなれますよ?』
「嫌じゃあっ!? 誰が好き好んでタマゴ死ぬほど産みたがるんだよ!? 産卵フェチか!?」
『じゃあ?』
俺は唇を食い破るほど歯を食いしばる。
「…フレイル……でいいです…グスッ、うう…なんでよりによってフレイル…なんだよ? ヒック…」
『感謝します』
目の前の女神は改心のアルカイックスマイルを浮かべる。
…慈悲の女神? うっそだろ、お前。