表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ぼすのなつやすみ

作者: ぼすなつ


私はとある商社に勤めるごく普通のOLである。

ごく普通の会社でごく普通の仕事をしている私、しかし私の上司、もといボスはとんでもなく変わった人だった。

歳は40前後だったであろうか、渋いおじさまといった見た目で仕事もそつなくこなすボスだ。

しかし、毎年の夏になると彼は正体を表す。

うちの会社では支給された休日と有給休暇を合わせて10〜20日ほど夏休みをもらう人が多い。そのボスもしばらくまとまった休みをとるのだが、彼の夏休みは毎年決まって破天荒な過ごし方をしている。


まず私が入社1年目の夏に彼はコスタリカへ鳥を見に行ったらしい。その話を人づてに聞いた時はわけがわからなかった。

どうやらケツァールという鳥を気に入ったらしく休み明けに社内で鳴き真似をしていることがあった。やたら甲高い声で迫真の鳴き真似をする上司をみて、就職先を間違えたか?と

不安になったのを思い出す。


私が入社2年目の夏にはロシアでスパイ技術を学んでいたそうだ。いったい誰から教わったのか、そもそもなんの必要があってスパイの技術を身につけるのか不思議でたまらなかった。だが休み明け以降、ボスが自分の都合が悪くなった時に自身の気配を消す技を使ってくるようになった。なるほど、これが夏休みの成果なのかと感心してしまったことを思い出す。


そして去年、私の入社3年目の夏に彼が向かったのはアラスカだった。聞いた話ではオーロラを見に行ったらしい。その年は少しながら羨ましい夏休みだと思った。結局、オーロラを見ることができたのだろうか?結果は社内の誰も知らないようだった。おそらく見れなかったのだろう。休み明けに出社してきたボスの様子が、こころなしか沈んでいたことを思い出す。


今、私は入社4年目の夏を迎えている訳だがちょうどボスは今年の夏休みを過ごしているところである。行き先は聞いていないが、おそらくまた奇想天外な夏休みを謳歌しているのだろう。考えたところで当たるはずもない上司の夏休みを少し想像して、すぐに無駄だと悟った私はデスクの仕事に取り掛かることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ