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異世界帰りの元勇者は現実世界でも天才でした。  作者: 坂元たつま


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王家の護符と転移の真実(エンブレム・オブ・ディメンション)

香坂サヤが去った後、マサトの研究室は重い沈黙に包まれた。彼女の残した言葉、特に「迷人まよいびとの事例を数百件知っている」という事実は、マサトが異世界での体験を単なる偶然の事故だと考えていた前提を根底から覆した。

(次元の歪みは、偶発的なものではなかった?…そして、俺以外にも、何百人もの人間があの異世界、あるいは別の世界に転移している?そして、ISTOはその全てを把握している?)

マサトの脳は、この新たな「不測の変数」を解析しようとフル回転したが、情報が少なすぎた。彼は、まず手元にある唯一の異世界の遺物、王家のネックレスに意識を集中させた。

  ネックレスの「光」の解析

マサトは、即座に研究テーマを一時中断し、ネックレスの解析に取り掛かった。

「次元接続」の術式が作動した際、このネックレスはマサトの身体に残り、彼の命を守るメッセージを送った。彼は、このネックレスこそが、ISTOの秘密、そして異世界転移の真実に繋がる鍵だと直感していた。

マサトは、T大学の持つ超高精度な量子解析装置をハッキングして使用し、ネックレスから発せられる微細なエネルギーの波長を分析した。

(この非金属鉱物…この世界の原子と結合していない。しかし、光のスペクトルが、異世界の「魔素」が安定状態にある時の波長に酷似している…!)

マサトは、ネックレスがただの守護魔法を仕込んだマジックアイテムではなく、**「異世界の魔素を極限まで圧縮・封印したもの」**であると結論付けた。

そして、ネックレスから発せられる光のメッセージを、さらに深く解析した。


『あなたの生命が危険に晒されたとき、あるいは覚悟を決めたとき、この世界の**『理』**に干渉し、あなたを守るであろう。さようなら、そして、またいつか』


このメッセージの後半に、マサトは注目した。

(「この世界の『理』に干渉」…これは、ただの防御魔法ではない。「次元知性」を持つ俺を、この世界の法則から守る。つまり、ISTOのような組織の監視や、科学的な解析から情報を隠蔽するための機能だ!)

そして、最後の『またいつか』。マサトは、これを単なる別れの挨拶だとは思えなかった。

彼は、ネックレスの表面に刻まれた王家の紋章に指を触れた。その紋章は、マリアが発動した禁忌の術「神域召喚」の術式の一部と、驚くほど酷似していた。

「まさか…このネックレスは、次元接続の術式が作動した際に、俺の『チート能力』を奪う代わりに、そのエネルギーを利用して、二つの世界の間にもう一つの『リンク』を構築したのではないか?」

マサトは、異世界から戻る際に、自らの能力を全て失う代償を払った。しかし、このネックレスは、その放出されたエネルギーを回収し、**「再転移の可能性」**を、極秘裏に仕込んでいたのだ。

(マリア…あなたは、俺が「二度と戻れない」というラッセルの言葉を信じず、俺に会うための希望を残してくれたのか…!)

  ISTOの監視と反撃

マサトが解析を終え、研究室から出たのは、朝の光が差し込む時間帯だった。その瞬間、彼の「次元知性」が、周囲の異常を察知した。

(大学の監視カメラの角度が、わずかに俺を追尾するよう調整されている。そして、構内を歩く人間のうち、三人が特定の歩行パターンと心拍数を示している。ISTOだ。もう監視が始まっている)

香坂サヤは、彼が協力しないとわかった瞬間、「監視」という名の拘束を開始していた。

しかし、マサトの「次元知性」は、監視を逆手に取る最適解を導き出した。

(監視されるのなら、彼らが納得する**『偽りの最適解』**を見せてやる。俺は、純粋な天才として、世界を変える研究に没頭する。それ以外の行動は、一切取らない)

マサトは、監視されている三人の人間がいる方向とは、常に逆の方向に歩き、彼らの監視の視界から外れる最適ルートを選んだ。彼の行動は、計算通り、ISTOの監視網を翻弄し始めた。

 エネルギー理論の提示

その日の午後、マサトはT大学の全教授陣と、外部から招待されたISTOの香坂サヤを含む科学者たちが集まる緊急会議に呼び出された。

議題は、マサトが提示した「送電ロスゼロの超効率エネルギー伝送システム」の研究計画の承認についてだった。

香坂サヤは、マサトを見つめ、挑戦的な笑みを浮かべた。

「榊原くん。あなたの理論は夢がある。しかし、あまりにも現実離れしている。現在の技術で実現できる確率は、$0.001%$以下でしょう。ISTOとしては、この計画への多額の予算投入には反対です」

マサトは、冷静に答えた。

「確率は、計算によって変えられます。香坂さん。私は、このシステムを実現するための**『基礎理論の応用』**を、すでに発見しています」

マサトは、壇上に立ち、ホワイトボードに向かった。彼は、異世界の「魔素」の特性を、現実世界の**「超電導現象」と「非線形光学」**の理論で置き換え、統合した。

彼は、数時間にもわたり、誰もが理解できる言葉で、それでいて誰も到達できなかった理論の核心を説明し続けた。それは、異世界の知恵と現実世界の科学が融合した、真の「次元科学」だった。

「…この理論に基づけば、エネルギーは、物質ではなく、空間の波動として伝達されます。送電ロスはゼロ。そして、このシステムは、次世代バッテリーと組み合わせることで、地球のエネルギー問題を一挙に解決できる、唯一の最適解です」

議論に参加していた世界的な科学者たちは、マサトの説を前に、反論の言葉を失った。

香坂サヤは、最後まで厳しい表情を崩さなかったが、会議の終盤、マサトに歩み寄り、静かに言った。

「…あなたには、確かに価値がある。ISTOは、この研究を承認するわ。ただし、あなたの研究過程は、我々が全て記録する。逃げられると思うな」

マサトは、冷たい視線で彼女に応じた。

「逃げるつもりはありません。世界を救うまでは。…香坂さん、俺は、あなたたちの裏をかくために、もう一つ別の研究を始めます。それは、この世界の『理』、次元の歪みに関する研究です」

マサトの、ISTOとの長く、複雑な知恵の戦いが、本格的に幕を開けた。そして、彼の最終目標は、世界を救い、そして、いつかマリアに会うための**「次元航行」**の実現だった。

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