幼馴染 2
これは、ぱきペキ商店街に住んでいる、高校一年生、沙和里 太洋の他愛のない日常を、適当に書き留めたものである。
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日が落ち、くれた道を家に向かって帰っていると、声がかかった。答える太洋。振り返ると一つ上の兄、沙和里 大海の幼馴染の姿。
「ん?あ……『はっちゃん』こんばんわ」
「お帰りぃ、ね♡たいかい、帰ってるかな?」
「今日は部活も無いし、早くにたどり着いてると思うけど……、はっちゃんの学校は確か今日が、創立記念日だったっけ」
「うん、そうなの、朝からお店手伝えって、大変よぉ、でねでね!イチゴのタルト焼いちゃったの、たいかい、コレ好きよね」
届ける途中なのぉ♡と、キャピキャピと話す、兄の幼馴染と他愛のない話をしながら歩く。
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「ただいまー、パン屋のはっちゃん来たよ」
「お帰りぃ、靴下洗濯機、体操服洗濯機、お弁当箱出しといて、ブレザー汚したら大変だからさっさと着替える!あらはっちゃんいらっしゃい、晩ごはん食べてく?」
太洋の母親、紅子が出迎えた。へいへいと出すもの出して、洗濯機に入れ、上の階へ上がる太洋。やがてグレーのスエットの上下に着替えて、パタパタと降りてきた。
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沙和里家は花屋をしている。店の側面に外階段があり、それを上がれば2階の住居部分の玄関に入れる、三階立ての建物。リビングダイニングは、ハワイアンテイスト満載のインテリア。紅子がここで『ハワイアンキルト』の教室をしている為。
檸檬の大きな鉢植え、熱帯植物もいくつか、壁には母親の作品が飾られている、そしてソファーに座り、箱を開けている兄は、トレードマークのタンクトップ姿。
「おお!やった!お前のお手製特性タルトじゃんかー!ありがとな!」
「たいかい!後にしなさい!ご飯だから、はっちゃん、たいよう、お兄ちゃんも!来て手伝う」
小さい頃から出入りしているはっちゃんは、紅子にとって子供の一人にしか過ぎない。はーい、と三人はダイニングテーブルへと向かう。
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「ヤッタロウのガッコ、今日が創立記念日だっけ?」
カレーをモグモグしながら話す兄を眺めながら、弟も食べている。
「おう!朝から店手伝えって、大変だった!店屋の息子は辛いよな」
「そうそう、俺らもそうだよなー、な!たいよう!」
うん、と頷く太洋。兄の隣に座る『八矢ベーカリーの息子、八矢多郎』をそれとなく眺める弟。二人は仲良さげに、ぺちゃくちゃ喋って、食べ進めている。
――ヤッタロウって呼んで良いのは、たいかいだけなの♡はっちゃんって呼んでね。
――、はっちゃん、オネエなんだけど……、オネエなんだろうな、ガッコ男子校だし。そして兄貴の事が好きで……しかし兄貴は知らない……。『喋り方』兄貴の前では頑張ってるのか、俺の前だけそうなのか……。
カレーのお代りをするべく、立ち上がる太洋、兄大海が俺も、と皿を差し出すと、
「お!俺が入れてくるよ!大海は座ってて」
八矢多郎が、兄の皿を手にすると、いそいそと運ぶ。わりーな、とあっけらカランと言う兄。いいよ、と満面の笑みでご飯をよそう幼馴染は、恋する乙女の笑顔。
太洋は……まっ、俺には関係ないから……と、カレーのルゥを、自分でよそった白いご飯の上に、たっぷりとかけた。
ちゃんちゃん。