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恋する凡人

 僕にはずっと不思議なことがある。

 仕込みは何とも時間がかかるし、ヘトヘトにもなる。しかし、ハケってなぜにこんな早く終わるのだろうか。バラすだけの単純作業だからか?

 12時に集合した僕らは早速とハケに取りかかった。そして、作業すること4時間。16時には全てのハケを完了していた。

 だが、ここで解散ではない。この後には昨日のプチなんかじゃない、本当の打ち上げが待っている。毎年、この打ち上げの為だけに学祭を生き抜いていると言っても過言じゃないほど楽しみなイベントだったが、今年はその後がある……。そう思うと羽目もたがも外せない。

 そして、気がかりなことがもう一つある。何があったかは知らんが、ゆっこの機嫌が悪い。どうしよ……今日だよ? 件の日は今日だよ? Xデーだよ? どうしよ……。

 原因が全く浮かばないし……。困った。コレをどうにかしなくてはな……。


 一旦帰ったり、休憩したり、お昼寝したりして、午後18時。大学近くの居酒屋『純情』に日活研究会の面々が集う。

「では、みんな、お疲れ様! 乾杯」

「かんぱ~~~い!」

 ガキーンとジョッキのぶつかり合う音が気持ちよく響く。

 決起会で感じた風情のなさも、打ち上げでは何のその。ちゃんとジョッキの中にはキンキンに冷えたビールが入って、見た目も音も最高だった。味は分からないんだけどね。

 部室みたいにハチャメチャに……とはいかないまでも、みんなの笑い声が絶えない、楽しい打ち上げだった。

「いや~やっぱ居酒屋で飲むと、つまみに困らないからいいよな」

「全くだ」

 光樹と春樹がいつもみたいに会話を繰り広げている。

「金に困ってなけりゃもっと良いんだけど」

「本当にな……」

 巧が突っ込む。そして3人で落ち込んでしまう。

「いや、落ち込むようなこと言うなよ!」

 ついツッコんでしまった。

「でもさ、今年も楽しかったよな学祭」

「スルーかよ! てか、確かに楽しかったけど、どういう会話のつなげ方してるの? 文脈無視かよ」

「コジローうるさい、今ちょっと良いこと言おうとしたじゃん。空気で察してくれよ」

 と春樹。

「いやいや分からん」

「雅也。そいつ黙らせといて」

「合点だ」

「おい、こら、辞めろ」

 雅也が調子に乗って羽交い締めにしてくる。そして、そのまま小声で話しかけてきた。

「昨日、どうだったんですか?」

「昨日?」

「ゆっこちゃんの件です」

「え? 昨日は何も無かったけど」

「えっ!? 可笑しいですね……。昨日プチ打ち上げの前に何人かで軽くご飯行こうとしたら、この後用事があってって言うから、てっきりコジローさんだと思ってたのに」

「……」

「コジローさん?」

「そういうことか!」

「うわっ! 急に大声出さないで下さい」

 驚いた様子で、雅也の拘束が急に解かれる。

 こいつの言うことが本当だとして。ゆっこは「学祭が終わったら」って言うのを二日目が終わったらだと勘違いしていたとしたら? そうすると、昨日チラチラ見てきたのも、急に帰ったのも、今朝から機嫌が悪かった事も、全部繋がる。

 でも、これ、相当不味くないか……? だって、僕のせいで機嫌が悪かったんだろ? 幸先悪すぎだろ~~。

「……さん、コジローさん!」

「え?」

「え? じゃないです。もう集金の時間ですよ」

 考え込んで居る内に打ち上げが終わっていた。

 てことは、もう少しで件の時間じゃんか! いや、そもそもその時間に持ち込めるか怪しくはなってきたけど……。

 あ~~~~。どうしよ。


 と考え込んでいると知らぬ間に学校へ着いていた。と、その時。

「あ、やべ。ケーブルの箱、教室に忘れてきてる」

 雪利がボソッと口走った。

「何!? じゃあ、コジローついってってやれ」

 巧がそう指示を出す。出しやがった。

 咄嗟にゆっこを目で探す。一瞬目が合うも、直ぐに逸らされ、彼女は家に向かう女子チームの一員となっていた。

 はやく追いかけたい。でも、ここで断るのも変だ。クッ、しょうがない……。

「コジロー?」

「え? ああ、うん。わかった」

 そう返事をすると、雪利と一緒にステージだった3号館3階を目指す。

 箱を探し出し、部室に向かっていると、ポツポツ雨が降り出した。

 泣きそうだった。ツイていないというか、詰めが甘かったというか。

 部室に着いたとき、案の定そこにゆっこの姿はなかった。

 ああクソッ。

「じゃ、僕はもう帰るから。うん、疲れたし、疲れたしな!」

誰に聞かれた訳でもないけど、大きな声でそう宣言し、一気に駆け出す。

「お、おうそうか」

 部室に居た光樹の微妙そうな返事を聞き終わることなく、駆けだした。

 雨足が強くなってきている。

 家に向かって駆ける。

 だが、家に一番近い門の前には学祭の資材が積まれており、通れなくなっていた。

 しかし、引き返すのは無駄足だ。ならばッ! 定まっている道だけが道じゃない。怒らせてしまったゆっこの為にも、彼女に伝えたい言葉の為にも、何だってやってやる。

 資材の山を登った。時たま崩れる資材に足を取られながらも、何とか登って降りるられた。後は走るのみ! 

 僕はゆっこが好きなのかずっと分からなかった。彼女に恋しているのか、彼女の作るご飯に恋しているのか。

 瑞希は胃袋を掴まれたんだと言ってくれた。それで、ちょっとはこの気持ちに自信が持てたけど。

 それでも、なんだか自分の中にある矛盾みたいな、折り合いのつかない気持ちみたいなものが渦巻いてて。

 それでも、今、君の為に走っている。君の元に駆けつけたい僕が居る。

 コレが全ての答えじゃないのか?

 僕は君を――――

こんな青春送りたかったかったなんて後悔みたいなないものねだりは言わないので、どうか、どうか神様、仏様、週1で襲ってくる激しい鼻炎(左鼻だけ)を止めて下さい……。医者の薬が効かないんです。小説書いてても、漫画読んでても何してても垂れてきます。仕事が手に着きません。

何だろう。僕の前世は滝だったのか?

皆様はどうですか? 花粉症、酷いですか? 植物の生殖活動に巻き込まれて辛いの、本当に解せませんよね。

来週までには良くなっていることを信じて。

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