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味を味わう物語  作者: 暴走紅茶


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33/42

仕込みの日

 学祭仕込みの日になった。少人数でステージ作成から控え室・卒業生部屋作り、その他雑用まで全部こなす必要があり、正直、ライブのある明日・明後日よりも、今日が一番疲れるだろうとさえ思える。

 ステージの場所は部室棟から800メートルほど離れた3号館の3階で行われる。ゼミで使う302号室がステージ303号室が寝部屋、階段の向こう300号室と301号室がそれぞれ卒業生控え室と在校生控え室となる。さて、まずはサークル棟から重たい機材を運搬してこなくてはいけない。これが、一番大事な作業であり、一番疲労をもたらす作業であるが、学祭は学内へ車の乗り入れが限定的に許可されるので、それら機材は車での運搬となる。

 とは言ってもなあ……。階段上るのきついよなあ。

「みんなおはよう」

 朝10時。巧の挨拶にみんなの視線が集まる。

「今日は学祭仕込みの日だ。明日からの二日間を大いに盛り上げる為、今日を頑張って乗り切ろう」

「お~~~~~!」

 みんなから歓声が上がる。

「それじゃあ、人割していくぞ。ちゃんと聞いとけよ。

 女子三人は卒業生部屋・控え室作りから。

 光樹・春樹は車係。

 雅也はサークル棟側の機材運び。

 昌成・雪利はこっちでの機材運び。

 コジローは俺とステージ組みで」

 自分の名前が呼ばれると、各自返事を返していく。

 僕は機材運び担当にはならなかったけど……。ステージ作り2人って……。しんど。

「自分の仕事が終わっても終わりじゃないぞ。ただでさえ人不足なんだ。仕事が無くなったら、仕事を探すように! あと、今日からハケまでの4日間、みんなスマフォの通知はONにしておくように。いつでも連絡が出来るよう気をつけてくれ」

「はーい」

 自分の仕事を確認すると、三々五々自分の持ち場に向かっていく。


「コジロー、お前ステージ組めるか?」

「いや、一人じゃ無理」

「そうじゃなくてだな。俺一応会長だし、現場監督も兼ねて2号館に残らないとなってステージ組に自分を入れたんだが……」

「まさか……」

 ごくりと唾を飲み込む

「過去二年とも部室担当だったから、やり方なんて皆目見当つかない」

「おいこら。そんなら昌成と代わって来いよ。あいつには去年教えてあるから」

「嫌だ。俺は会長だ。あ、でも、分解は出来るぞ」

 分解だけ出来ても意味ねぇんだよ。

「はあ。いつもこうなんだから」

 僕はやれやれと言った様子がしっかり伝わるように首を振った。

「まあ、僕が一緒にやるから。それに、業者さんも来てくれるし」

「業者が来るだと!? そんなの聞いてないぞ。もう、学祭費は残ってないし……人件費は……」

「あは~。テンパっているとこ悪いんだけど、来るの足場レンタル業者のサービスだから、お金はかからないよ」

「何!?」

そんな話をしていると、巧の電話が鳴る。そのまま電話に出ると、二言、三言話し、電話を切る。

「足場レンタル業者が下に着いたらしい」

「じゃあ、行くか」

 2号館1階へと向かう。そこには、一台トラックと業者さんが2人経っていた。

「おはようございます」

「ああ。おはよう」

「今日はよろしくお願いします」

 そう挨拶を済ませると、早速機材を運搬していく。足場の鉄骨自体は別に運べるのだが、肝心のステージとなる台は馬鹿重いし、馬鹿でかいので、運ぶのも一苦労だ。

 302号室で、僕と巧と業者さんの4人で作業を進めていく。正直人手がもっとほしいところだが、贅沢は言っていられない。僕らがそうやって作業を進めていく間にも目の前の廊下には様々な音楽機材や学校に泊まり込む用の布団なんかが運び込まれていく。11月だというのに、みんなどんどん上着やら着込んでいたあったかインナーなんかを脱いで、薄着になりながら、汗だくで作業を進めていく。

 13時。一度作業を切り上げて、昼休憩となる。巧はどうやら前もってパンを買ってきているようだったので、僕は大学内にあるコンビニに向かう事にした。

 まあ、いつもみたいにカロリーメイトでも食べるかな。そう思って歩いていると、ばったりゆっこにであった。

「あれ? 1人? 他のみんなは?」

「悦子さんも、ミチルさんも、前もって買ってきてるみたいで。コジローさんこそ、巧さんは?」

「あいつもパン買ってきてた」

「あ、じゃあ、一緒に食べますか?」

「そうしよか」

 僕はカロリーメイトと水を買うと、イートインスペースに腰掛ける。

 ゆっこもミートドリアを買うと、電子レンジの方に向う。ドリアの温めが終わると、席の方にむかってくる。

 席に着くなり、ゆっこは僕の手元を注視すると、

「コジローさん、いつもカロリーメイトですね」 

そう言ってきた。

「そうでもないけど」

「そうですか? じゃあ、いつも部室のゴミ箱に投げ捨てられてる大量のカロリーメイトはなんです?」

「し、知らない……。たまにはウィダーとか、一本満足バーも食べるし」

「ほら、栄養食品ばっかり。それじゃ、体壊しますよ。私のミートドリアを一口あげましょう」

 うう。困った。無下に断りたくないけど、食べたくない……けど、男には無理をしなくちゃいけないときもある。

「あ、ありがとう」

 そうして、僕はゆっこが渡してくるスプーンでミートドリアを一掬いすると、口に運んだ。

 味がしない。米はべちゃべちゃしたのりを口の中に塗りたくられているみたいだし、チーズもミートソースもご飯と混ざって、ネチャネチャする。でも、こんなの、僕には慣れっこだった。

 僕はいつも通り表情を、感想をでっち上げる。

 でも、ゆっこに対して、そんな事をするのは、なんだか、彼女の作ってくれるご飯にも同様の事をしているような、そんな後ろめたい気持ちが湧いてくる。だから、食べたくなかった。でも、仕方が無いんだ。そう、仕方が無いんだ。

「旨いな、これ。いつも食べてるの?」

「そもそもコンビニにあまり来ないですけど、このミートドリアは美味しいので、ここを利用する時には結構買いますよ。お気に召したのなら、もう一口くらい食べても良いですよ」

 それは、要らんなあ。

「いや、もう十分。今度自分で買って食べるよ」

 そんな事は未来永劫なさそうだけどな。

「そうですか」

 というか、まだコンビニ飯でよかったのかもしれない。

 今ゆっこの手料理なんて口にしたら、確かに嘘をつかず、心から美味しいと言えただろう。でも、そんなことをしたら心臓が張り裂けるかもしれない。

 変にこの子を意識してしまっているせいか、平生を装っているが、これ、ゆっこに聞こえているんじゃないかと思えるほど、心臓が騒がしい。喋っていないとキツいな……。

「そ、そうだ。女子チームの仕事はどう?」

 言葉をひねり出す。

「順調ですよ。買い出し終わったので、今から清掃とか飾り付けとか諸々ですね」

「いいね。こっちは巧がな~」

「巧さんがどうしたんですか?」

「あいつ、ステージ作りズブの素人だった」

「あら、大変。大丈夫なんですか?」

「まあ、なんとか? 業者さんも来てくれているし。でも、作業必要人数の最小値って感じ」

「こっち終わったら助太刀に行きますね」

「助かるよ」

 そんなこんなで話し込んでいると、不意にぼくとゆっこの携帯がほぼ同時に鳴る。

「ゲ」

 2人の声が揃う。

 僕らの携帯にはそれぞれ巧とえっちゃんから「おいこら、どこに居るんだ」とのお叱りメッセージが送られてきていた。


今回を書いているときに、ステージ用の台がどんな名前か調べたんですよね。

僕が大学生の頃、その台を「ようかんだい」と言ってて、漢字でどうやって書くんだろうくらいの気持ちで調べたんです。

でも、全然ヒットしない。

詳しく調べていくと、どうやら「ようかんだい」の名前は愛知県くらいでしか言わないようでして。

ここ暫くで一番驚きました。

そんな裏話です。

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