雅也の告白
酔って僕にもたれ掛かってきた雅也が、ろれつも頭も回っていない状態で言葉を紡ぐ。
「僕、好きな子が出来たんですけど、どうしようもなくて、アプローチも何もできないんれすよ~」
「ほ~う」
みんなの顔にはハッキリと『新しいおもちゃだ~』と書いてあった。
いつも無関心な真成でさえ、同級生の色恋には興味があるのか、珍しく面白そうにしていた。
「先ずはお相手のお名前聞かなきゃ分からんな~」
光樹がそうやって尋問を始めた。
「え~言うんすか~。別にいいですけど~。マジすか~」
「おう。言っちゃえ言っちゃえ」
「じゃあ、言います!」
全員の視線が彼の方へと向く。
「僕は星崎夕子ちゃんが好きです!」
一瞬世界から音が消えた。そして、僕の心臓がキュッとなった。と思ったら急に音が戻って、僕の心臓は早鐘を打っていた。
みんなは心底面白そうに茶化したり、励ましたりしていたが、僕の耳はちゃんと聞いてはいなかった。
「ゆっこと言えば、コジロー、お前なんか仲良かったよな」
「ぼ、僕? いや、そんなだよ? 別に」
ぎこちなく笑顔を取り繕ってそう言う。
こんなにも、早く夜が終わって欲しいなんて思うことは初めてだった。
結局この日は朝日が昇ると共にお開き……というか、朝食の時間になった。
みんなフラフラしていて、それに吐き気があるのか、バイキング形式の朝ご飯を全くよそうことなく席に着く。
劇的に眠そうな巧の音頭で頂きますをし、朝食を食べ始める。
眠いだけで吐き気のない僕はそれなりに朝食を楽しんでいた。そんな僕の横を口を押さえた雅也と真成が駆け抜けていった。ちょびっとの朝飯を済ませた春樹と光樹と雪が「寝る……」とだけ言い残して部屋に帰り、男子は僕と巧だけになった。
「みんな腑抜けてやがるな」
「まあ、僕らは鍛え方が違うからね」
「ポテンシャルだろ」
「そうかも」
そんな軽口を叩いているうちに、朝食を食べ終わり、僕は巧に先行くわと告げると、席を立つ。
そして食堂を後にすると、たまたまゆっことタイミングが合った。
「あ、コジローさん。改めておはようございます」
「あ、おはよう。よく眠れた?」
「はい! 元気ですよ」
「それは良かった。俺は寝る……」
大きなあくびをしながらとぼとぼ階段を昇る。
「あ、あの」
隣を一緒に登ってきていたゆっこが恐る恐る声を出した。
「よかったら、後で散歩に行きませんか?」
「……」
僕の頭はもうほとんど働いてはいなかったが、昨晩の件と眠いことから、即決することはマズいと思って、脳に働け~と念じていると
「まあ、後で時間があればね」
そんな言葉が口から漏れていた。
「じゃあ。お休み~」
フラフラと自室へ帰ると、ベッドに倒れ込む。昨日の飲み会のせいで、少しベッドが汚れていたが、そんな事はお構いなしに寝る。
起きたら全て好転してないかな……。そんな事を思って。
雅也みたいな先輩ッ子系後輩ってめちゃくちゃ可愛いですよね。