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味を味わう物語  作者: 暴走紅茶


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14/42

合宿始まり

合宿当日。みんな大きなキャリーバッグと楽器と各々機材を手にして、校門前に停まるバスへ乗り込んでいく。

 合宿所はかなり遠く、富士五湖の近くにあるホテルを丸々借りて合宿するのだが、そこまでの長い道のりはこの合宿名物、乗り心地最悪のマイクロバスで向かう。

「うげえ。またこのバスか~」

「はいはい文句言わないの~。乗って乗って」

 文句を言う光樹に部長の巧がケツを叩く。実際、バスのランクを上げようにも部員の人数に見合ったサイズのバスはこれしかないし、これ以上高い合宿費なんて到底払えないので、我慢するしか無い。

 全員が乗り込むと、バスが発車する。バスの中は騒ぎたい奴や寝たい奴等、十人十色の過ごし方が繰り広げられる。


「光樹、えっちゃんと座らなくてよかったのかよ」

 春樹がプリッツを咥えながらそんな軽口を叩く。

「うるさいな~。四六時中一緒に居るわけじゃないんだよ」

「とか言いながら携帯で連絡取ってんだろ~」

 巧も攻勢にまわる。

「お前らな……。今俺の手にはビールとピーナツが握られてるのが見えないのか」

「そのビールもーらい」

「じゃあ、俺ピーナツ~」

 そう言って僕と春樹で手から奪い取る。

「あ、おい、こら!」

「これでアリバイは無くなったよ~」

「俺の酒が~つまみが~」

「こんな良い物持ち込んでる方が悪い。どうせ向こうに着いたら無限に飲めるのに」

 巧がそう言うと真実味がある。

 というのも、事前に集めた合宿費から買った大量の酒を先にホテルに送ってあるため、ホテルに着いたら無限に飲めると言っても過言で無い程の酒が用意されているのだ。 

「アリバイは無くなった。とか言ったところで、俺の手には携帯なんて握られてないけどな」

「じゃあ、テレパシーすか?」

前の席に居た雅也が横やりを入れてくる。

「そんなわけ無いだろ」

「さーせんさーせん」

 雅也の隣に座る蜷垣真成にながきまさなりがため息交じりに首を振ったのが、見えなくても想像できた。

 そういえばゆっこはどうしてるかな。みんなに悟られないようにこっそりと前の方を見渡すと、数列先に居るのが見えた。どうやら女子組はさっさと昼寝を決め込んでいるようで、静かな雰囲気が伝わってくる。

「まあ、そもそもそのテレパシーの相手、寝てるみたいだけどな~」

 光樹が勝ち誇ったように言った。まるで、自分の視線の先を感づかれたかのような気がして一瞬ドキッとしたが、別にそういう訳ではないようだ。

 みんながこれ以上弄れない……という様子でぐぬぬと拳を握りしめていた。

「じゃあ、どうしようかな。春樹とコジローは次のサービスエリアで何か買って貰うとするかな~。お前ら、気が付かんウチに全部平らげてやがったしな」

「あっ!」

 僕と春樹の声が重なった。無意識に飲み干してた……。


 そんなこんなでバスはどんどんと先へ進んでいく。

 寝たり醒めたり、サービスエリアで昼飯を食べたりしているうちに、目的地は目前に迫ってきた。


 そして、ここでまた僕の心を激しく揺さぶる事があろうとは、まだ今の僕は知り得ない。


合宿って楽しいですよね。

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