後日談
……っていうわけでさあ」
「それは良かったね。で、その子には本当のこと言ったの?」
僕は今地元の友達で、友達の中では唯一事情を知っている成田瑞希と電話で話していた。瑞希というなではあるが、彼は男である。
「いや、まだ」
「よくして貰ってるだけじゃ無くて、ご飯まで食べさせて貰う仲なのに黙ってていいの」
「そうは言ってもなあ」
なんて言っていいのやら。
「でも、味覚が一部とは言え、戻ったのは良かったよ。安心した」
「まあな。自分でもビックリしたよ。まさかまた味を味わう事が出来るなんてな」
「で、その彼女とは何処まで行ったんだ?」
「ブッ。か、彼女じゃねえよ」
「違うのか?」
「違うだろ」
「でも、一緒に手料理食べてデートして、もうその辺のカップルよりもカップルらしいじゃないか」
顔が赤くなる。心臓がドクンと脈打つ。やっぱりこの手の話は苦手だ。
「で、どう思ってるの? 付き合ってないなら何? 好きなの」
「今までは違った……と思う。でも、今は……よく分からない」
「よく分からないって……。自分の事だろ」
「まあ、良いじゃん。なるようになるよ」
「そんな無責任な。何でも良いけど、お世話になった人に不義理なことだけはするなよ」
「わかってるよ」
「そうだ。お前、夏休みはこっち帰ってこないのか」
「うん。ごめん」
「叔母さん心配してるぞ」
「分かってる」
「……」
「……」
「……わかった。じゃあ、そろそろ切るわ。またな」
「おう。また」
僕はまた、腹を括らなくてはならなくなるのかも知れない。