旅の洗礼
商業都市ガネスはその名の通り流通業が栄えていて
首都グローリの次に大きな町でもあり、とてもにぎやかな町である。
また、巨大な情報屋組織が拠点にしている事もあり
夜が迫ってくると裏稼業の者が自然と多くなる一面もある。
「ふふふ・・・ガネスが近づいてきたな!皆共準備はいいか!」
「嬉しそうだね、エミル」
「少年、昨日とテンションが違いすぎないか?」
自分が準備した馬車に子供2人を乗せてガネスに向かう青年アレクが苦笑する
「おっと、なんだありゃ」
馬車ならあと30分ほどで町に着く場所で他の馬車が立ち往生している
他の馬車が道を防いでいるので仕方なく馬車を降りて状況を確認することにした3人
「なんてこと・・・」
「嬢ちゃん、旅するって事はこういう事件も付き物だぜ」
他の馬車の前方は10歳の子供には地獄絵図だった。
盗賊が商人たちを殺して金品を奪っていた。
「人が人を殺しているか・・・」
フローラはうずくまって今にも吐きそうだ
「嬢ちゃんは馬車に戻りな!少年は剣を持ってるぐらいだから少しは戦えるか?」
「あぁ・・・」
盗賊は10人程でまだこちらに気がついていない
「まずは足止めの魔法で奴らを抑える、その間に少年は生き残っている商人の援護を!」
「了解だ!」
アレクが拘束呪文を唱え始めると共にエミルが身構える。
「エリアプリズン!!」
敵対象として意識した複数人を身動きできなくする魔法を盗賊にかけた
同時にエミルが怪我はしているもののまだ意識がある商人3人を
自分たちの方に移動させることに成功した。
「プリズン・ブレイク!!」
一人の盗賊がそう言うと盗賊にかかった拘束魔法が解かれる。
「あまいわ!盗賊なめんじゃねーぞ!」
その瞬間、エミルが剣で切り込む!
奇襲により2人の盗賊を戦闘不能状態にした。
「腕は立つようだが、殺さずとは甘いな!」
無言のまま、ボスらしき盗賊に切り込むエミル
「ふ、こんなガキの攻撃片手で十分!」
片手で吹き飛ばされるエミル
「ここだ!フレイム!」
飛ばされたエミルと入れ替わりにアレクが放った火球がボスに命中する
「小賢しい!!いいタイミングで攻撃をする所を見ると、戦闘になれているな!」
「たまたま、ですぜ!フレイム!」
またも火球を放ちつつエミルを回収するアレク
「エミル!!」
様子を見に来たフローラが現状をみて叫ぶ
「おっと、そこにもガキがいたか!いけ!」
「やばい!そうきたか!嬢ちゃんタイミング悪いよ!フレイムバースト!」
号令と共に残りの盗賊がフローラを確保しようとするが
アレクが放った多数の火球で何人かが撃ち落とされる。
だが、2人の盗賊がフローラの確保に成功する。
「きゃ~!!!」
フローラの悲鳴で目を覚ますエミル
「どうするガキども!」
「どうするったってね、考える時間くれない癖に~」
「よくもフローラを・・・」
「落ち着け少年、お前魔法はどのくらい使える?」
「あまり使いたくはないが、光属性なら誰にも負ける気がしない」
「なんだ、その自信は!じゃあ最初からその魔法で嬢ちゃんを助けてやりなよ
出し惜しみは後悔に繋がるよ!」
その言葉に目が覚めたエミルは封印していた光魔法を開放した!
「シャイニングソード・レイン!」
大魔道士でも詠唱に時間がかかる大魔法を一瞬で放つエミル
しかもピンポイントで空から降り注ぐ剣が盗賊だけに刺さる。
「殺さない程度に手加減はしたぞ!」
「ぐぬぬ、ガキめ化物か!」
「本当にやるね~少年!」
「エミル!!ありがとう・・・本当にありがとう・・・怖かったよ」
力尽きたボスを今度こそ拘束し一段落したあと
商人達は残った馬車でガネスに先に向かい騎士団に報告をしに行き
3人は魔力を大量に使ったアレクとエミルのために一休みをする事にした。
エミルはいろいろ会ったせいかすぐに爆睡してしまった。
「なぁ嬢ちゃん、ファストタウンの奴らってみんなあんなに光魔法が使えるもんなのか?」
「う~ん、確かに勇者の町だから他の人よりは恩恵があるって大人たちは言ってた気がするよ」
「そうか、少年のみたいなのがごろごろいるわけか・・・」
「流石にそれはないよ~エミルが特別なんだよ!私とか普通の子はあそこまで攻撃特化じゃないよ」
「そうなのか?」
「うん、同じ光魔法でも攻撃系と補助系と回復系で違っていて普通はそれぞれの下級~中級魔法を使えるって感じかな?」
「光魔法も奥が深いね~」
「アレクさんは火系使いなの?」
「俺は生まれが闇系の恩恵を受けている町だったから、闇系が中心で火系と全体的な補助系が使える」
「闇の恩恵って事はジ・エンド出身なの?」
「おぉ~よく知ってるね~大人でもあまり知っている奴がいない、0番都市ジ・エンドの事を」
「この旅でエミルにとって最初の目的地なんだ~」
「そうかぁ~!なんであんな辺鄙な町に行きたがるかは置いといて、町に行く道にはさっきの盗賊より強い魔物が出たりするよ」
「私がエミルを守ります!」
「お熱いね~」
「何がですか!!!」
そんな話をしていると騒ぎを聞きつけた騎士団がガネスからやって来るのであった。