一限目
俺こと田中 太一は、本日めでたく高校入学の日を迎えた。
高校は東京都、でわなく隣の千葉県にあるそこそこ有名?になりそうな高校である。
何故有名になりそうなのかと言えば、高校の名前がとてつもなく中2なのだ。
その名も聖 帝学園高等学校(セント カイザーがくえんこうとうがっこう)、通称、聖学である。
何故、英語のセントとドイツ語のカイザーをチョイスしたのか不明であるが、なかなかに興味を引かれてしまい、入学してしまった俺は最早手遅れなのでは?と、布団の中で悶えていたのは記憶に新しい。
ともあれ、この高校に惹かれた理由もちゃんとある。
だから俺に中2とか言うのはまだ待って頂きたい。
学校案内のパンフレットに、自由な部活動の設立という項目を見つけてしまったのだ。
そしてその自由さ加減が常軌を逸していた。
サッカーや野球と言った普通の部活動が見当たらず、カバティ、セパタクロー、インディアカ、ペタンク、トリッキング、ローンボウルズ、クロッケー、キンボール、アルティメット・テーザー・ボール、ラート、エクストリームアイロン掛けetc.、等といったマイナースポーツ(一分スポーツなのかすら怪しい)であるものばかりが数十部活動として活動しているらしい。
・・・・・。
今更ながらに思った。
こんなのに興味を引かれてる俺っていったい…orz
ともあれ、本日は俺の高校入学第1日目と言う事もありテンションがうなぎ登りしていたのだ。
さっきまでは…
「たいちゃんオタスケ~!」
この助けを求める声と共に、俺のテンションは早々に最底辺まで下がり、更にはテンションメーターをマイナス方向へ誘う。
(またか…)
俺はテンションが下がり過ぎた。
今の感情の起伏を例えるならば、砂漠。
日中の灼熱の地から夜間の極寒の地へ移り変わる砂漠の温度差なみに感情が切り替わる。
入学初日で浮かれた気分は早々に地に付し、代わりに沸き上がる怒りは天限突破した上、そのせいで思考は逆に冷えきりクリアになっていく。
そこで初めて声がした方向へ体ごと振り返る。
そうして視界に写った光景に溜め息を禁じ得ない。
「はぁ~…」
こうやって幸せが逃げてくのか…
俺は肩を落とした。
声の主であるアホ。
と、金魚のふん。
つまり助けを呼ぶ声の主と、それを追い掛ける柄の悪そうな兄ちゃん達が近付いてきた。
「たいちゃん助けて~!」
そう言って俺にしがみつくアホ。
そして柄の悪そうな兄ちゃん達が追い付き噛みつく。
「やっと止まりやがったかカスが!」
「なんだそいつ?テメェの知り合いか?」
「まとめてぶっ飛ばしてやんよ~」
俺は顔の前で手をひらひらさせて即答した。
「人違いです。」
「ええ?!人違いなの?!すいません!双子の兄の田中 太一と勘違いしました!そして助けて下さい!」
うん。
こいつ底なしの馬鹿だ。
実の兄の事を勘違いで間違えたと宣うとか。
俺のブレザー今ネームプレート付いてるんだが?
新入生は一週間ネームプレート付けて登校らしいし。
「田中 太一…やっぱり知り合いじゃねーか!つーか弟見殺しとかクズだな。」
「だな。こいつもやっちまうべ。」
「テメェらこっち来いや!」
「巻き添えですね~わかります。ハァ…龍二死ね。」
「あっ!やっぱりたいちゃんじゃん!助かったー!」
こうして俺は弟と共に人気の無い路地に連れて行かれた。
そして数分後…
「それでな、アイツはこう言ったんだ。こんな人知りませんってよ…。」
「鮫島…。辛かったな~。」
「あんなビッチの事なんて早く忘れようぜ。」
「うちの塵野郎が迷惑かけて、マジでスンマセン。」
俺は柄の悪そうな兄ちゃん、もとい鮫島さんの話しにホロリと涙を流しながら謝罪していた。
鮫島さんの話しの内容はこうだ。
高1の頃、一目惚れした女性がいた。
鮫島さんはその人告白。
結果はあっさりフラれた。
しかし鮫島さんは諦めなかった。
フラれた日から猛アタックを繰り返したのだ。
そして半年後、その熱意が彼女に伝わり晴れて交際が始まった。
しかし、交際が始まり3日。
初めてのデートで事件が発生した。
龍二の登場である。
ここで龍二について少し説明しよう。
まず、奴の容姿から。
イケメン。
誠に不愉快であるが、イケメンなのである。
天然茶髪でサラサラな髪
二重瞼の大きな瞳。
高い鼻と整った唇。
それらのパーツが見事な黄金比を叩き出していて、