13 くっ、辱めは受けない!
ルノン発見。
嬉々として土人形を蹴飛ばしている。
ゴーレムだ。
土や石が魔力を得て魔物に昇華したもの。
坑道やダンジョンに自然発生する。
小さいものなら鉱夫でもツルハシ1本で倒せる雑魚。
しかし、何度崩してもすぐに再生して立ち上がるという根性のある魔物だった。
ルノンはゴーレムを圧倒していた。
だが、ゴーレムも百折不撓の精神で立ち上がった。
結果、泥仕合になっている。
俺は石弾を飛ばしてゴーレムを撃ち抜いた。
「ゴーレムは核塊を壊さないと倒せないぞ」
「知ってやがるです」
ルノンはチンピラみたいな顔で俺に詰め寄ってきた。
細い指でズンズン胸を突いてくる。
痛いわけだが?
「コアこわしたら、もう倒せねえじゃねえですか。フィルって糞馬鹿です?」
「あー、無限リポップを楽しんでいたのか」
邪魔して悪かった。
俺はドヤ顔で人の楽しみを奪うようなクズです。
すんませんしたー。
ルノンはヒエルフォーナ殿下に矛先を変えた。
おら、殴って来いよ?
ぶっ飛ばしてやらぁ。
そんな感じで睨んでいる。
殿下はというと、珍しい動物ね、という顔で、腕組みの上からルノンを見下ろしている。
見渡してみたが、シュヴァリッタの姿はない。
崩落で生き埋めになったか、それとも、坑道をさまよい歩いているか。
いずれにせよ、優先すべきは殿下の御身だ。
「出口はもうこの先だな」
空気に雨の湿った匂いがある。
すでに雨が上がっているらしいことまで、なんとなくわかった。
「殿下、外が近いようです」
と言ったところで、袖を引っ張られた。
殿下がどこかモジモジした様子で俺の服を引いている。
「お花摘みですね。わかります」
「全然わかってないわよ。引っぱたかれたいのかしら」
違ったか。
じゃあ、なんでございましょう?
「あの、あなたにお願いがあるのよ」
「どんと承りましょう!」
「シュヴィを……シュヴァリッタを捜してくれないかしら。あの子、硬いからきっと生きていると思うわ」
「生きていることの根拠は硬さですか」
俺は笑いそうになるのをぐっと堪えた。
「お願いなどと他人行儀な。命じていただければ、火の中水の中でございます」
「命じられないわよ。あなたをクビにしたのは私だもの」
「では、再雇用いただくことをご検討ください。大急ぎで捜して参りますので」
俺はキリッと敬礼した。
で、ルノンの小さな双肩をガッと掴む。
「ルノン、いいか? お姫様を守るんだぞ?」
「わかりやがったです! 殴ってもいいです?」
「だめですー」
「じゃあ、蹴るデス!」
「それもだめデス!」
「じゃあ……フィル、あとでいい子いい子しやがれや。デス」
「今してやるよ」
髪をわしゃわしゃすると、ルノンは少し抵抗した後で、気持ちよさそうに目を細めた。
ああ可愛い……。
俺のHPが満タンになった。
「がるるるるる!」
「この子と二人きりになるのね……」
今にも噛みつきそうなルノンを見て、殿下は不安げだ。
「ルノンはいい子ですよ」
「まあそうね。あなたよりは表裏がなさそうでいいわ。頭も悪そうだし」
「悪そうですよねー」
「がるるるるるるる!」
シュヴァリッタは崩落現場から200メートルほど離れたところにいた。
ゴブリンの群れにたかられ、組み伏せられて大ピンチ。
「くっ、辱めは受けない! ひと思いに殺せェ! ちょ、どこを触っている! そこの貴様ァ、ぶち殺してくれる! あひんっ!? ……い、今のは違ッ! お、おのれぇ! この私に変な声を出させおって!」
「お楽しみのようで」
俺はゴブリンに散水した。
電撃魔法で一網打尽にする。
シュヴァリッタも巻き込まれたが、硬いらしいから大丈夫だろう、たぶん。
「お、おのれ。一体何が……」
シュヴァリッタが俺を見つけてギョッとする。
起き上がろうと藻掻き、剣に手を伸ばそうとするも、体は糸を切られたマリオネットのようにぎこちない動きをしている。
「か、体がシビビ、痺れて……」
「体が痺れて動けない女騎士、だと」
そんなご都合女騎士が実在するとは。
異世界すごいな。
俺はシュヴァリッタの腕を掴んだ。
「くっ、辱めは――」
「いや、もういいから。くどいって、さすがに」
背負ってやる。
よかったな。
俺が分別ある大人で。
「殿下のお言いつけで助けに来ましたよっと」
出口に向かって歩く。
背中のシュヴァリッタを揺すり上げると、ごん、という音がした。
「鎧のせいで重いし、全然感触楽しめないな。殿下のおっしゃる通りだ。硬い……」
「貴ッ様ァ! 私の感触を楽しむだと!」
「耳元でうるせーよ」




