転生
僕は…………学校でいじめを受けていた。それもちょっとした陰口や嫌がらせ程度だったらまだよかった。ただ、現実はそんなに甘くはなかった。毎日放課後に数人の生徒から殴られたり蹴られたり。もう…こんな人生嫌だった。
「こんな生活が続くくらいなら……いっそ」
そう、僕は決心した。そして僕はビルの屋上から飛び降りた、飛び降りた…んだよな?
気がつくと、僕は見知らぬ場所に立っていた。
「ここは、一体どこなんだろう?もしかして天国だったりして。」
そんなことを口にしていると突然、視界が白く染まった。
そして次に目を開けたとき、目の前には誰かが立っていた。
「お、いたいた」
そう、その目の前にいた少女?が話しかけてきた
「あなたは誰ですか?」
そう僕が聞くと、その人は
「私?私はね、んー、君たちの世界でいうところの神様、かな」
「………え?」
驚きのあまり、僕は素っ頓狂な声を出してしまった。
「ま、そりゃ驚くよねー。だって、ついさっき飛び降りて死んだと思ったら知らない場所にいてそこに突然現れた私が自称神なんだもん。あ、でも神様はほんとね。君たちの世界だと私は神様として信仰されてるし。」
なんか神様っぽくない神様
「今、私に失礼なこと考えたでしょ。」
なにこの神様、考えてることわかるのか?
「ちなみに君が今考えてることは全くわからないよ。なんとなくこんなこと考えてそうだなーって感じで話してるだけだし。」
考えてることなんとなくで当ててるほうが怖くね。あとなんか話がすごい逸れていってる気がする。そう思ったからとりあえず聞いてみることにした。
「なんで神様が僕のところに?」
「なんでって…すごく可哀想だったから?かな」
「なんで疑問形なんですか」
「今の君をみてると可哀想に思えないっていうか、なんなら今はもう満足してるって感じがするし」
いや絶対にそんなことはない。あの場所から離れられただけで少し気が楽ではあるけど。
「まあいいや、それじゃ本題に入るね。」
神様の雰囲気が少し変わった気がする。
「君は、もう一度新しい人生を送りたいとは思わないかい?」
言っている意味がわからなかった。この神様は一体何を言ってるんだ?
「はは、まあ急にこんなこと言われてもそりゃそんな反応になるよね。私が言いたいのは、転生してみない?ってこと。」
転生…マンガとか小説でしか聞いたことないけどなんとなくはわかる。でも…
「どうしてですか?」
そう、なんで僕なんだろう。不思議に思ってそう聞いてみた。
「いや、だって君、元いた世界では成績は最底辺、そのせいでまわりからはいじめられ、先生や親とかの大人たちからは見捨てられ、相当酷い人生送ってたじゃん。それで限界が来て自殺って…流石に見てて同情しない人はいないでしょ。」
嫌なことを言ってくる。思い出したくもない。けど僕の過ごしてきた人生が酷くて可哀想だからってことだよな。
「さて、どう?転生してみる?もちろん元の世界にじゃないよ。また別の世界。」
「でも……僕は、勉強もどれだけやってもできない、他にも色んなことをやってみてもことごとく全部ダメ。はっきりいって全てのことに才能がないんですよ。そんな僕が転生したところで、また同じようなことになる気がします。」
そうだ、僕は全く才能がない。何事にも。
「才能がない、か。そんなことないと思うけどなー。私から見てだけど、君の才能は、君の元いた世界じゃ絶対にやることがないことの才能だからそう思っちゃっただけだと思うよ。だから、君の才能が活かせる世界にするよ。それならいい?流石にあのままは可哀想だし、もっと君は幸せになってもいいと思うし。」
僕は、その神様の言葉に少し、気持ちが揺らいだ。転生するのもありかもしれない。
「じゃあしてみようと思います。」
その答えに、神様は、にっこりと笑って
「わかった。じゃあ転生について説明するね。まず、君は生まれ変わった後はまだ君の意識はないよ。だんだんと君の意識が戻っていく感じ。完全に君の意識が戻るまでに5、6年くらいかな。じゃ、説明終わり」
すごい適当な説明な気がする。
「今から転生させるね。」
「えっ、ちょっ」
「あ、そうそう言い忘れてたけど、才能があるからってその才能だけに頼らないこと、自惚れないこと。いい?」
「……はい。」
そうして僕の意識は消えていった。