37 対月華七聖人③
造の戦いぶりに感銘を受けながらも、俺は目の前の白い服の男に集中する。
白い服の男は、腹部を押さえながら立ち上がる。血が彼の手から滴り落ちるが、その目はまだ輝いていた。
「お前、なかなかにやるな」
彼はそれを言うと、再び杖を握り直し、呪文を唱え始める。
「月華の秘術――『《ルナ・エテルヌム》』」
その瞬間、周囲の空間がゆっくりと歪み始める。
「何をする気だ?」
「ただの魔法ではない。お前の魔力を……内側から、浸透させる」
俺はその言葉が意味するところを察し、急いで魔法陣を展開する。
だが、遅かった。
白い服の男の魔法が、俺の体内に侵入し始めたのだ。
その感覚はまるで、体中に無数の針が突き刺さっているようだ。
「ぐっ……」
俺は痛みに耐えながらも、瞬時に反応して防御魔法を展開するが、浸透する魔力は止まらない。
内側から力を引き出されるような感覚に、さらに痛みが増していく。
「お前の魔力の中にある隙間を探し、そこに入り込んでやる。これは一度突破されれば、君は……」
白い服の男は楽しげに言ったが、俺はその言葉が完全に終わる前に反応した。
「――『禁忌』」
俺の体から、黒いオーラが炸裂した。
それは白い服の男の魔力を押し戻し、逆にその力を吸い取っていく。
「なんだ、これは……!」
白い服の男は目を見開き、杖を必死に振りながらその圧力に抗おうとするが、既に遅かった。
俺の黒い魔力が、彼の体内に入り込み、彼自身の魔力を吸収していく。
「そんな……!」
その言葉とともに、白い服の男は膝をつき、杖を地面に突き刺した。
「くそ……! こんなこと、ありえん……」
だが、それが俺の魔力を制御するための最適な方法だった。
白い服の男は力尽きる前に、最後にもう一度、俺に向かって呪文を叫ぼうとする。
だが――
「終わりだ」
俺の黒雷が、再び彼の体を貫いた。
彼の体が一瞬にして焼き尽くされ、その力が消え去る。
白い服の男は、もはや反応を見せることなく倒れた。
その戦闘の終息を感じながら、俺は次に目を向けた。
造の方では、黒い鎧を着た男と漆黒のマントの男が、一歩引いているように見える。
どうやら、俺の戦闘が終わったのを見て、少しばかり驚いた様子だ。
「これで、全員が終わりか?」
俺は足を一歩前に踏み出し、二人に向かって冷たく問いかけた。
二人は一瞬互いに目を合わせ、何かを確認するように黙り込む。その後、黒い鎧を着た男が低い声で答える。
「そう簡単に終わると思うなよ、魔王」
その言葉と同時に、漆黒のマントの男が足元から黒いエネルギーを呼び起こす。
「『闇月』」
空が一瞬で暗くなり、月のような暗黒のエネルギーが二人の周囲に広がる。それはまるで夜空のように広がり、光を吸い込んでいく。
「光が――」
俺は即座に反応し、周囲に魔法陣を展開するが、その力は想像以上だった。
「どうした、魔王? お前の力も、もはや通用しないのか?」
漆黒のマントの男が挑発的に言う。
黒い鎧の男も微動だにせず、無言でその場に立ち尽くしている。
「だが、この空間にお前の魔力を引き込むことができれば、俺たちの勝ちだ」
漆黒の男がさらに魔力を高める。闇のエネルギーが周囲の空間を完全に覆い、すべての光を奪っていく。その瞬間、俺の体が重く感じ、まるで引き寄せられるように空間に引き込まれる。
「魔力を吸い込む……」
「お前ら、そんな力で俺を縛れると思うな!」
俺は歯を食いしばり、全身に魔力を集中させる。
瞬間、俺の体から漆黒の魔力が爆発的に放出された。それはまるで太陽が爆発するようなエネルギーで、空間そのものを押し戻し、闇の力に対抗する。
「――『魔王』」
その一言とともに、周囲の空間が一変する。
漆黒の闇月が崩れ、光が再び空間を満たす。
「う、嘘だ……!」
漆黒のマントの男が後ろに飛び退き、その顔に驚愕の色が浮かぶ。
「お前の力、こんなにも……」
黒い鎧の男も今やその動きを止め、無言で立ち尽くしている。
「もう終わりだ、二人とも」
俺は冷たく言い放つと、魔力をさらに高め、二人に向かって圧倒的な力を放つ。
闇の中で唯一輝くその光は、二人の防御を一瞬で突破し、無力化した。
その瞬間、黒い鎧の男は力なく膝をつき、漆黒のマントの男も倒れ込む。
彼らは全く反撃することなく、力尽きて地面に倒れた。
戦闘が終わった。
周囲に残ったのは静寂だけだった。




