31 冬だ! 雪だ! 年末だ!
いつもより短めです
「よぉし! 今日は思いっきり遊ぶぞ!」
なんだかんだあってやってきた遅めのクリスマスパーティー。
ここ最近はあまり休める機会がなく、こうして落ち着いて皆で遊ぶといったことはなんだかんだ初めてだ。
「なぁ、一ついいか?」
何も起こらず、平和にクリスマスパーティーするのは問題ない、ないのだが…
「何故、俺の部屋でやることになったのだ?」
「俺は別にどこでも構わなかったけどよぉ…」
イザベルはそう言いながら、鈴花の方に指を指す。
そう言われれば納得がいく。最近の鈴花は俺に固執するからな。
その原因は俺が師匠と呼んでもいいと言ったことだけどな…。
「それじゃあ、少し遅めのクリスマスパーティーということで乾杯ー!」
「乾杯!」
「乾杯」
「乾杯」
こうやって人と楽しく過ごせるのもなかなか面白いものだな。
横を見れば、かぐやがぼーっとしている。まだ先日の件を気にしているのか、いつものような元気はなかった。
「かぐや。先日の事なら気にしなくてもいいぞ。お前のせいというわけではない」
「…あ、ごめん! 別にそのことを気にしてたわけじゃなくて」
「何か悩みがあるのなら、聞くぞ」
俺の大切な友達で配下だからな、と言い切る前にかぐやが横に倒れた。
疲れが溜まっていたのか、ぐっすりと眠っていた。
全く世話の焼ける奴だ。と思いながら、ベットの上に寝かせといた。
数時間、皆で今までの事を振り返ったり、世間話をしながら楽しんだ。
そこまで長い付き合いというわけでもないはずなのに、この4か月間で起こったことが普通ではなかったせいで、積もる話が多かった。
かぐやはというと未だにぐっすり眠っている。それほどまで疲れたことがあったのだろうかと思いつつ、窓の景色を眺める。
この世界では初めての雪が降っていた。
前世での雪と言えば、それはもう吹雪に近く、大災害にも等しいものであった。それがこうして綺麗に見えることに少しばかり興奮している。
「師匠、雪合戦、しませんか?」
鈴花が物凄くきらきらとした目でこちらを見てきた。
なんというか、あの事件以来、性格までもが少しずつ変わっているような気がする。それがいい事なのか、悪い事なのかは分からないが。
「いいぞ。魔王の雪合戦というもを教えてやる」
出来ればかぐやも連れ出したいところではあるが、まだぐっすりと眠っているので、起こすのは気が引ける。
俺達3人は家の庭に出て、雪合戦をし始めた。
雪を丸めて、圧縮し、雪をつけ足して、更に圧縮。それを続けて圧縮が出来なくなれば、魔法で圧縮し、雪をつけ足して、更に魔法で圧縮。
これが神話の時代の雪合戦の雪玉だ。見た目は野球ボールくらいなのだが、その質量は鉄球並に重い。
流石にこの世界でそれを投げてしまうと殺してしまう可能性が高いので普通の雪玉を投げる。
そうして、体中に雪が付きまくったせいで服がびしょ濡れになってしまった。
びしょ濡れのままでは流石に家の中が汚れてしまうので魔法でしっかりと乾かしておく。
雪合戦をしてだいぶ時間が経ち、そろそろ日も暮れだしたことなので解散をすることにした。
が、かぐやはまだぐっすりと眠っているのでそのままベットで寝かせている。
いつになったら起きてくれるのだろうか、と思いつつ部屋の中を片づけた。
そろそろ起こさないと流石にまずい時間帯になったため、かぐやを起こす。
「かぐや、起きろ。いつまで寝ているつもりだ?」
瞼がぴくっと動いたが、それ以上のことは何も起こらなかった。仕方がないのでもう一度声を掛ける。
「かぐや、起きろ」
今度は意識が浮上したのか、瞼を上げた。まだ焦点の合っていないぼんやりとしたその真紅の瞳は完全には覚醒しきっておらず、眠たそうな顔をしている。
「……あれ? 皆は?」
「もう皆、帰っているぞ」
「私、どんぐらい寝てた?」
「六時間は寝たんじゃないか?」
流石にこんな時間まで寝るとは思わなかったのでこんな時間になるまで起こさなかったのだが、もう少し早く起こせばよかったと後悔した。
まあ、仕方がない。
「家まで送ってやろうか?」
「べ、別にいらないわよ。そこまで迷惑かけられないし」
別に迷惑だとは思っていないのだがな。夜道を一人で歩かせるのが心配なだけだ。
「そうか。……それで、何か悩みがあるのなら聞くぞ」
「別に悩みっていう訳じゃないんだけど…。最近、夢で前世の記憶を見ることが多くて。ちょっと感慨に浸ってただけ」
まあ、千年分の記憶ともなれば、それが夢に出てきてもおかしくはないだろう。
「あまり気負うなよ。困ったことがあれば、いつでも相談に乗ってやる」
魔王の俺だってなんでも解決出来るわけではない。今後もそんなことが多くなるだろう。
だから今の内に解決できるものは解決したほうがいい。
それは前世で何度も痛感したことだった。
「分かったわ。今日はありがとう。それじゃあ、また来年」
そう言って、かぐやは帰っていった。
先程までうるさかった部屋が今ではもう静かな部屋となっている。
もう一年の終わりなのか、と思いながら窓の外を眺める。暗い外にぽたぽたと落ちていく雪が、昔の事を思い出させる。




