14 死神人形
あけましておめでとうございます!!
新年、最初の更新です!
暗く狭い道を通り抜けるとそこには広々をした空間が広がっており、色んな機械が置いてあった。古いプレス機や古い溶接機など金属の加工関連の機械がずらりと置いてあった。
金属を使って何か作っていたのだろう。
「さて、機械がたくさんあるが、全て細かく探すのは流石に無理だ。先程の暗号に何かヒントがあるかもしれん」
「……機械はまだ動く?」
「見た感じだと動きそうにないのだがな」
彼女はずらりと並んだ機械をじっと見つめる。
しばらくすると何か思いついたのかこちらを見てきた。
「……動くものもあるかも」
なるほど。確かにその可能性はあるな。だが、それでも全部調べるには時間が足りない。
「それも一理あるが……何か別の方法があるはずだ」
「……分からない」
鈴花は首を傾げ、ギブアップした。これ以上、答えはないのかもしれんな。
「別の方法ではなく、もっと深く考えろ」
俺はゆっくりと歩きだし、機械の前を通っていく。動いている機械を探す方法に一つ目途は立っている。後は、それを試すだけだ。
「……どこに行くの?」
「もう少しすれば分かる」
俺は更に歩き続けた。もう四十個ほどの機械は通り過ぎただろうか、俺はそこで止まった。
俺が急に止まったせいか、鈴花が俺の背中にぶつかった。
「大丈夫か?」
「ん。……なんで止まった?」
俺がなぜ止まったのかを不思議そうに見つめる。
「今から分かるさ」
俺は近くにあった機械に近づいた。そして、機械の周りを一周し、電源らしきものを探した。電源を推せば、その機械についていたライトが付き、稼働し始めた。
「……どうして分かった?」
鈴花は不思議そうにこちらを向いてきた。
「足音だ」
「足音?」
「ここだけ、足音が聞こえるのからな」
彼女は確かめるように歩き回る。この機械の近くでは足音が鳴るが、離れれば足音が無くなっていった。
「……ほんとだ」
鈴花はこちらを向いて言った。
至ってシンプルなことだ。ここにある機械は古いものばかりでどれも稼働出来るようには見えない。そしてこの広々とした空間までに通った通路では足音がしなかった。
つまりはこの広々とした空間が過去であり、時間が止まっているのならば、稼働する機械の周辺だけが時間が正常に流れているということだ。そうでなければ、機械は稼働しない。
「では、人形を探すぞ。多分、影になっているところにある」
俺達は影になっているところを探した。するとそこには手のひらサイズの人形があった。俺はそれを手に取った。
「……どうする?」
確かにこの後どうすればいいのか分からんな。
「……戻る?」
「いや、人形が一つとは限らぬ」
人形が一つならば、もうこの時点で俺達を襲ってきてもおかしくはない。恐らくいくつかあるのだろう。しかし、人形の数だけヒントがないとはおかしい話だが……
「くくく、ははははは。そういうことか」
「……何か分かった?」
鈴花を首を傾げながら、言った。
「人形の数は三つだ。あの物語の神がもうすでに何度も人形の数を示唆していた」
あの神がわざわざ三人でこの試練に挑戦しろと言ったのはこの為のヒントだったという訳か。俺とかぐやとイザベルで三人。だが、鈴花と一緒に試練に臨んでも何も言われなかった。
もとから、この試練を受けるのは何人でも良く、ただヒントを与えただけというわけだ。
「あと二つ、手分けして探すぞ」
俺と鈴花は二手に別れ、人形を探しに行った。
俺はそのまま真っすぐ進み、ゆっくりと歩いていく。五十、六十、七十個と機械の前を通り過ぎていく。百個目あたりの機械で足音が聞こえるようになった。
俺はそのあたりを探し、人形を見つけた。その人形も先程と同様に手のひらサイズの人形だった。
残るは鈴花の方だけだな。
俺は入口のところまで戻ると、そこで鈴花が待っていた。
「待たせたな」
彼女は首を横に振った。
「……今、来たばかり」
「そうか。では、戻るとするか」
鈴花は小さく頷く。
俺達は死神がいるところまで戻っていった。
「……どうする?」
ここから人形をどうするか……答えは一つだ。
「ここは月の明かりがよく入るのでな、ここに人形を置けば、死神人形になるだろう。準備はいいか?」
鈴花は頷き、一歩後ろに下がる。
俺は月の光が一番当たる場所に三つの人形を置く。
「正解だねぇ」
死神が告げる。
「流石は魔王だねぇ。私はこれで失礼するねぇ」
死神の体は塵となり、消えていった。
置かれた三つの人形は真っ白に光だした、と思いきや、真っ黒に光だす。
黒い光はやがて収まり、姿を現す。
操り人形のような姿で関節部分には糸が垂れていて、黒いオーラが纏わりついている。見るだけでも恐怖を覚えそうな顔をしており、手には身長と同じくらいの鎌を持っている。
「怖くないか?」
俺は鈴花に問うと、首を横に振った。
「大丈夫」
どうやら、この程度のものには恐怖は感じないそうだ。もしかするとただ強がっているだけの可能性もあるがな。
「……コ、ロ、ス……」
死神人形は首をカタカタと回し、ぎこちない感じで喋った。
どうやら呪いの類のようだな。魔力もそこそこはあるようだ。
「『火炎』」
死神人形に向けて放った炎は全て、魔法を発動する前に消えた。
「死神の権能を持ち合わせているな」
「ム、ダ」
「無駄かどうか、試してみるがいい」
俺は何十個と魔法陣を死神人形の周りに構築させた。だが、次の瞬間には魔法陣が全て消えていた。どうやら、発動前の魔法を消すことが出来るようだな。『反魔法』と似ている。
死神人形が動こうとした次の瞬間、その体の周りには『赤鎖』が纏わりついていた。
「どうやら、視界に納めた魔法陣しか消せぬようだな」
そう言った次の瞬間、鎖がばらばらに散らばった。
「……コ、ロ、ス……」
鎌で鎖を切ったか。
「その鎌は魔法を消す神具か。中々面白い物を持ち合わせているではないか」
俺は二、三歩前へと歩く。
死神人形は鎌を振る。鎌を振った先の俺は体が真っ二つになっていた。
「……マオウ、ノ、ジダ、イ、ハ、オワリ、ダ」
「そうか。随分と面白いことを言うな」
俺は背後から死神人形に声を掛ける。
それに驚いたのか、信じられないのか、ゆっくりとこちらを向いた。
「……ナ、ゼ……シノ、カマ、ハ、ゼッタイ……」
確かに死神人形の持っている死の鎌は俺を一瞬で滅ぼすほどの力を持っている。だが、それは当たらなければ、ただのおもちゃと何の変りもない。
「お前が斬ったのは俺の残像だ」
俺はそう言い、死神人形の胸を貫く。
「『魂滅』」
俺は死神人形に埋め込まれていた魂を破壊した。
死神人形は苦しそうな声をあげ、塵となって消えていった。
俺は鈴花の所に戻っていった。
「怖がらないのだな」
「……不思議と覚えがある」
なるほど。もしかすると俺と同じ世界、同じ時代にいた者かもしれぬな。
「もしかするとどこかで会ったことがあるのかもしれぬ」
「合格だ」
天井の方から物語の神の声が響き渡る。
「帰るとするか」
「……ん」
鈴花は頷く。
俺達は来た道を戻り、工場を出た。
工場を出れば、そこにはかぐやとイザベルがいた。
俺の姿が見えたのか、かぐやは走ってこちらに来た。
「もう、遅いわよ」
「すまぬ。それと、もう解決してしまった」
「はあぁ! 私達なんの為にここに来たわけ」
かぐやはこちらを睨む。
まあ、『思念伝達』で帰ってもいい、と伝えても良かったのだが念の為待たせておいた。
「さすがだな」
かぐやの後ろの方からイザベルがやってきた。
「……それで、その子が鈴花って子?」
かぐやは鈴花の方に視線を向けながら言った。
「……初めまして……」
鈴花は丁寧にお辞儀をした。
学年は一つしか変わらないのだから、そこまでかしこまる必要もないだろうに。
「私の名前はかぐや。この世界では神崎凛だわ」
「俺の名はイザベル・デュラン。この世界では赤澤海だ。よろしくな」
かぐやとイザベルは自己紹介をした。
「もう夜も遅いことだ、家に帰るとするか」