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第一話 僕のお父さん、とお母さん その五~楽しかったデート~

実はこの前書きを書いている時点では、

まだ「はじめに」も投稿してはいないのです。

だからどんな反響があるのかもわからないのです。

反響がまったくなかったら悲しいです。

以前に感想を書いていただけたことがあるのですが、

ものすごく嬉しかったです。


なんか、せびってるみたいですね。そんなつもりではないのですが……。


では、どうぞ。

「わたしたちじゃどうにもできないわね」

 とお母さん。

 その顔は諦めの色でも、落胆の色でもない、無表情だ。

「当人同士の腹の虫が治まるまで待つしか、ね」

 お姉ちゃんも白旗を上げる。


 ここはお父さんちだ。

 僕たちはお父さんちのリビングで話をしていた。

 そのお父さんはというと、今日も遅くなる、飯は外で済ます、とお母さんに連絡を入れていた。

 晩ご飯を食べて、康お兄ちゃんが仕事に行って、お祖父ちゃんがベッドで寝息を立ててから、僕たちは集まったのだ。


 姫たんはいま、テレビに夢中だ。

 何度も何度もお姉ちゃんが注意をしてきたから、ちゃんと二メートル以上の距離を取っている。

 子どもの集中力は本当にすごいもので、僕たちは、もちろん大声でなんて話してはいないが、僕たちの会話なんて、まったく耳に入ってはいない様子だ。

 そして雪が面倒を看る係として姫たんの隣でテレビを見ているので、なにも心配はない。


「姫たんは作戦が中止になったこと、なにか言ってた?」

 と僕が訊く。

「姫たん空気読んだわよって鼻高くしてた」

 お姉ちゃんが答える。


 姫たんがショックを受けてはいないのなら、ひと先ずは安心だ。

 お父さんと康お兄ちゃんの喧嘩も、もはや見守るしかない。

 打つ手がないのだから、どうしようもないのだ。

 でも……。

 

 と、僕たち三人は同時にテレビのほうを見た。

 姫たんが大声で笑ったのだ。

 数秒後に、それぞれ顔を戻してコーヒーを飲んだりした。

 母さんを見ると言い淀んでいる様子だったので、僕は待ちの姿勢を取った。


「言い方悪いかもしれないけど」

 とお姉ちゃんが切り出した。

「さっぱりしない? もともとお父さんと康お兄ちゃんの問題なんだし。わたしたちが泡喰ったって、小芝居打ったって、なにしたって無意味なのよ。でしょ? 姫も言うほど怖がってないし。ならもうお父さんと康お兄ちゃんの間で決着つけてって話でしょ?」

「それは正しいと思う。思うけど、でも、これ以上ひどくなる前に止めるとかなんとかしないといけなくない?」


 僕はお姉ちゃんのようには割り切れなかった。


「いけない。でも止めない」

 またお姉ちゃんが答えた。

「なんで?」

「止められないのよ。お父さんがキレたら」


 お姉ちゃんの発言には説得力があった。

 お母さんも同意した。

 僕はお父さんがキレたところは見たことはないが、実際に幽霊を見たことがない人でも怪談話を怖がるように、ごくりと喉を鳴らした。

 お母さんは結局、胸のもやもやを言葉にしないまま帰っていった。

 これからいったいどうなってしまうのだろうか?




 日本の人口が一億二千六百万人ちょうどだったとして、二百人にひとりが年に一回、なにかしらの犯罪をしていると仮定すると、五分に約六回のペースで犯罪が起こっているという計算になる。

 東京には約一千三千万人が住んでいるらしいので、単純に計算すると五十分に約六回、つまり約八分に一回、犯罪が起こっているということになるのだけど、当然、その都道府県によって犯罪発生率は違う。

 東京の犯罪発生率のランキングは上位だったと僕は聞いたことがある。

 それに常習犯の存在も忘れてはいけない。

 それらを加味すると、東京では二分か三分に一回は犯罪が起こっていることになるのだ。

 そして僕は東京に住んでいる。

 実際、家の近所で殺人事件が起きて、テレビの報道車が押し寄せてきてことがあるくらいだ。

 だから、いつなんどき犯罪に巻き込まれるかなんて、誰にもわからないのだ。

 



 お父さんと康お兄ちゃんの喧嘩が五日目に突入した日に、僕と雪はデートをした。

 時と場合を考えろ、とお思いの方がいらっしゃるかもしれないが、これは喧嘩の前から決まっていたことなのだ。

 朝から遊園地に行って、僕らは手をつないでいろいろなアトラクションを楽しんだ。

 しがらみの全部を忘れて。

 それでも、十時になる前には家に帰りついた。

 僕は大学生になってから報告・連絡・相談さえすれば、門限を十一時にしてもらえるようになったのだが、あんまり無用な心配はかけたくはないから、遊園地から直帰したのだ。

 僕も楽しかったし、雪も楽しんでくれたのだろう、また来ようね、と満面の笑みを見せる雪は、かわいかった。

 だから僕は、え? って聞こえているのに訊き返したのだ。

 それを二度、三度と繰り返すと雪は、聞こえてるくせにって笑いながらぷりぷり怒り出して、それがまたかわいくて、信号待ちで僕は雪に口づけた。


 車庫に車を停めて庭に入ると、お姉ちゃんに呼び止められた。そばには姫たんもいた。

「おお、お姉ちゃんと姫たんか。びっくりした」

「麟、さっき聞いたんだけど、この辺で窃盗事件、あったんだって。犯人はまだ捕まってないけど、ナイフ、持ってるんだって。気をつけてね」


 それだけ言うと、お姉ちゃんは姫たんを連れてお父さんちに向かった。

 僕と雪はお父さんとお母さんにただいまを言いに(お祖父ちゃんは寝ていて康お兄ちゃんは仕事で不在なのだ)、お祖父ちゃんちの玄関を開けた。


「麟太、知ってる? この辺で窃盗事件、あったのよ」

 お帰りの返事とともにやってきたお母さんが言った。

「知ってる。いまお姉ちゃんに聞いたとこ。ナイフ持った犯人が、まだ捕まってないんでしょ」

「うん」

 とお母さんは拍子抜けという顔をした。

 僕たちはお母さんと、茶の間にいるお父さんにおやすみを言って、お祖父ちゃんちの玄関を閉めた。

 庭を歩きながら雪が言った。


「怖いね」

「もしナイフを持ったやつが襲いかかってきたら、僕は雪を置いて逃げるぞ」

「さいてえ。助けるって言いなさい。言わないとこうだ」

 と雪はポコポコと僕の頭を叩いてきた。

 か、か、かわいい。


 ほかの人たちにとっては恥ずかしいこのやり取りも、僕と雪にとっては日常なのでまったく恥ずかしくなんてないのだ。

 楽しかったデートは、こんなふうに幕を下ろした。

作者がこんなことを言ったらいけないのかもしれませんが、

麟太郎と雪ちゃんってバカップルですね。

でもわたしはそこがかわいいと思うのです。


一方で喧嘩して、一方でデートして。

そのほうがリアリティーあるかなと思ったのです。

どうでしたか?  


では、また。

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