第五話 僕、麟太郎 その十二~はんなりユーミさん~
また二話連続投稿をしようと思います。
二話目はこれを投稿してから、五分としないうちにするつもりです。
よろしくお願いします。
宇宙人否定派のひとが見たら、舌打ちものでしょうね。
それとも腹を抱えて笑われてしまうでしょうか。
でもわたしはいると思います、宇宙人。
みなさんはどうですか?
では、どうぞ。
「いや……かい」
「……はい。すみません」
「いやいや、謝ることはないよ。わたしの言い方が悪かったんだ。きみの脚本に対するわたしの意見を言わせてほしいと、そう言わなければいけなかったんだ。なにもきみの脚本に、わたしが手を加えようという、そういう意味ではなかったんだ」
「そうですか。それならぜひ、聞かせてください」
紳士になったりはんなりしたりしながら、ユーミさんは僕の脚本に意見をくれた。
それは正確に問題点を捉えていて、しかも丁寧で、書き止められないのを残念に思いながら、記憶する努力をした。
「とまあ、こんなとこだ」
「いやあ、こんなとこじゃないですよ。目から鱗ですよ」
「そこまでかい? 照れるね」
「あの……」
と言ったものの、訊いていいものかと思案したけど、ここまで言ったら訊いてしまおうと、勇気を出して訊いた。
「ユーミさんはクロチャン、ご存じですか?」
「もちろん。麻呂ーズとたっちゃんも知っているよ」
「クロチャンが来たときは、夢かと思ったんですけど、クロチャンの毛が証拠のように残されていたんです。でも麻呂―ズとたっちゃんは、夢だったんです。確実に。それはどうしてだか、わかりますか?」
「さて、どう説明したものか……。おそらくだが、クロチャンの毛は、きみが『こちらの世界』から現実の世界へと持ち込んでしまったのだと推測されるね。きみ、クロチャンと会ったとき、暴れはしなかったかい?」
「噛みつかれそうになって、必死に抵抗しました」
「でしょう。そのときだ」
「じゃあ、康お兄ちゃんが……、知ってますか?」
「もちろん」
「康お兄ちゃんが小説家目指していたときには、出てきたのはミラクルマンに出てきたような怪獣だったらしいんですけど、どうして僕のところに出てきたのは怪獣じゃなくて、ユーミさんとかクロチャンとかだったんでしょうか?」
「それは簡単なことさ。わたしたちにもトレンドがあってね。康お兄ちゃんのときにはミラクルマンが流行っていた。きみのときは、わたしやきみの夢に出てきたひとたちが流行りだった。それだけさ」
「そういうことだったんですか。じゃあ遭遇方法の違いは? 僕は『こちらの世界』でみなさんに遭ってるんですけど、康お兄ちゃんは現実の世界で遭ってたみたいなんですよ」
「現実の世界で。それはもしかして十年以上も昔の話ではないかね?」
「はい。たしか十四年以上は前の話だったと思います。正確には十四年から三十四年も前だと聞きました」
「でしょう。時代遅れ、と言うのが一番わかりやすいだろうね。つまり、我々も日々進歩しているのだよ。いまはもう『こちらの世界』で話すのが主流なんだよ。そのころとは違ってね。ほかのひとには見えない我々と話すところを見られるのは、なにかと危険でしょう?」
「そうですね。胸のつかえがとれました」
「そういってもらえると嬉しいよ。来たかいがある。そうだ」
ユーミさんは湯舟を出て、僕の腕を掴んだ。
リトルグレイのあの華奢な体からは想像もできない腕力だった。
「あんさんもUFOに乗って、宇宙旅行はどうどすか?」
「宇宙旅行?」
「三年ちょっとの旅どすえ」
「いやですよ。ちょっと、離してください」
振り払おうにもその力には敵わず、そのうちに浴室の窓に光が差してきて、これはUFOだ、やばい、連れてかれる。
「わたしの娘と結婚してくれるね」
なんでそうなるの?
僕には雪がいるんだ。
いやだ、助けて。
大声で叫ぼうにも、かすれた声をやっと絞り出せる程度で、ついに浴室が光いっぱいに包まれた。
もう駄目だ。
僕はぎゅっと目をつぶった。
「麟、麟、麟」
目を開けると、お姉ちゃんと姫たんがいた。
身を起こし辺りを見回して、脱衣所で倒れていたと理解した。
「麟太くん、うんうん唸ってたわよ」
「まさかまた出たなんて言うんじゃないでしょうね? やめてよ」
お姉ちゃんが言うには、僕が風呂に行って間もなく、どすんと大きな音がしたそうだ。
姫たんが様子を窺いに来て声をかけても返事がない。
それで脱衣所のドアを開けると、このとおりと言うわけだ。
服を脱ぐ前だったので、それはよかった。
「お姉ちゃんが聞いても大丈夫な範囲だと思うけど、出た」
「無理。やめて、聞きたくない」お姉ちゃんはリビングに逃げて行った。
「姫たんは平気だわよ」
「リトルグレイがいたんだよ。麟太くんより先に、お風呂入ってた」
「リトルグレイがお風呂! お風呂! お風呂!」
「続きはまた今度。麟太くんお風呂入ったら、すぐ脚本書きたいんだよ」
「わかっただわよ。でもレディの前で裸になったら駄目だわよ」
そう言って姫たんは脱衣所のドアを閉めた。
僕はすぐにでも脚本を書きたくて、頭を洗いながら、体を洗いながら、ユーミさんのアドバイスを何度も思い返した。
部屋に行ってノート・パソコンを開く前に、僕はなんとなく、窓から空を見上げた。
お月様が見えたのだけど、UFOは見えなかった。
某ミュージシャンが、MVに類人猿を使って騒ぎになりましたね。
果たして、クロチャンは引っかかるでしょうか?
あんな大物ではない、わたしのような小物ならお目こぼしいただけるでしょうか?
そうでなかったら怖いです。
では、また。




