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第五話 僕、麟太郎 その七~白、宮、雨~

ここ数話は二千字くらいで終わるようにしているのですが、

どうでしょうか? ちょうどいいですか? それとも短すぎですか?

作者としては、読者のみなさまに喜んでいただきたいわけですよ、やっぱり。

まあ、こっちの気持ちひとつで「やっぱ三千字以上にしよう」となったら

してしまいますので、それは謝ります。すみません。

みなさまの声をお聞かせください。


今日は、一気に二話投稿しようと思います。

初の試みです。


では、どうぞ。

 三人とも、平安時代の貴族のような出で立ちをしていた。

 自分のことを「麻呂」と呼ぶ辺りも、平安時代の貴族っぽい。

 もちろん、僕の平安時代の貴族についての知識は皆無に近いのだけど、なんとなく、それっぽい気がするのだ。


 彼らが常に、白麻呂、宮麻呂、雨麻呂の順番で喋っていることに、僕はあとになって気付いた。

 トリオ漫才師としての決まり事なのだろう。


 まず白麻呂が言う。

「そなたはなんのために大学に通うでおじゃる?」

 そして宮麻呂が言う。

「滑り止め的なのは大学に失礼ではおじゃらぬか?」

 最後に雨麻呂が言う。

「滑り止めにはこの塗り薬。いまなら一個二万円」

「高いでおじゃる!」

 と白麻呂と宮麻呂が雨麻呂の頬を叩く。

 どう? と僕の顔を見る。

 

 見事に滑っている。


 塗り薬、塗ったら?

 と思った。

 けれど僕は愛想笑いをした。

 だってなにがきっかけで怒り出すかなんて、わからないのだから。


 彼らはきっと、ここが腕の見せどころと、いくつもネタを作ってきたのだろう。

 でも僕にはそのネタを聞き続けて、その上、愛想笑いをし続ける自信がなかった。

 そこで僕のほうから話しかけた。


「宮麻呂さんがこちらの世界にいるっておっしゃってましたけど、こちらの世界ってどういう意味ですか?」

「そなたの住んでいる世界とは、また別の世界でおじゃるよ」

 と白麻呂。

「そなたの世界と並行してある別の世界でおじゃる」

 と宮麻呂。

「…………」

 雨麻呂はなにも言わなかった。

「ボケるでおじゃる」

 同じようにつっこむ。

「なにも思い浮かばなかったでおじゃるよ」

 雨麻呂が申し訳なさそうに笑った。


「……クロチャンってご存じですか?」


「おお、そなた、クロチャンを知ってるのでおじゃるか」

「だからでおじゃるか。麻呂らを見ても驚かぬのは。おかしいと思ったでおじゃる」

「先にクロチャンを見ているのなら、麻呂らは至って無害な様相でおじゃるからの」


 やっぱり、白、宮、雨の順番で喋ったのだが、初めてボケさせないことに成功した。

 僕は続けた。


「みなさんは貴族みたいな服装ですね

」これもボケられないだろう。

 僕は思った。


「そのとおりでおじゃる」

 と白麻呂。

「麻呂らみな貴族でおじゃる」

 と宮麻呂。

「見たまんまやないかーい」

 と雨麻呂。

「それは髷男爵でおじゃる!」

 とつっこむ。

「貴族つながりでおじゃる」

 会心の笑みの雨麻呂だった。

 ネタのようだった。

 しまった。


 今度は向こうから質問が来た。

 白、宮、雨の順で。

「なぜ脚本家になりたいのでおじゃるか?」

「脚本家で食えるのは、わずかでおじゃるぞ」

「けっして楽な道ではないでおじゃるよ?」

「……それはわかってます。わかってるつもりです。いつからかクリエイティブな仕事が好きになって、僕が映研に入ったのも映画を作りたかったからです。そのなかで一番向いていたのが脚本家だったんです。僕がやりたいのはこれだって、強く思ったんです。簡単になれるだなんておもっていません。クロチャンにもはっきりつまらないって言われましたし……。康お兄ちゃんのように仕事しながら二十年間も続けられるかどうかもわかりません。でも僕は夢を追いたいんです。とことんまでの努力もしないで夢を諦めるような、そんな人間にはなりたくはないんです。僕は脚本を書くのが好きなんです」


 三人の目の色が急に真剣になって、真正面から僕を見るので、僕はごくりと唾を飲んでから、誠意を込めて答えた。


「そなたの決意、しかと聞いたでおじゃる」

 と白麻呂。

「そなたのような熱き心を持つものは、好きでおじゃるぞ」

 と宮麻呂。

「プピリシコ、メヌポップン、ホノゲイラ」

 と雨麻呂。

「何語でおじゃるか!」

 とつっこんだ。

 両頬を平手打ちだ。

 不覚にも吹いてしまった。

「やっと笑ったでおじゃる」

「いやいや、難産でおじゃったな」

「自信を無くすところでおじゃった」


 白、宮、雨の順番で一息ついた。

 そうして三人は

「そなたの脚本への情熱があれば、いつかよいものがきっとできるでおじゃるよ」

 と笑った。


 僕はなにか返事をしなければと思ったのだけど、よい言葉が見つからずに三人を見つめて、光に包まれていく彼らに、

「ありがとう」

 そう絞り出した。

 その声が届いたのかどうかは、わからなかった。




「麟。麟。麟太郎」

康お兄ちゃんが言うところの「怪獣」が、二組目の登場を終えました。

三組目も、当然のごとく控えています。

それはばればれの展開なので、それをつまらないと言われたら困るのですが、

出します。出さないわけにはいかないのですから。

次回も期待していただけたら嬉しいです。


では、また。



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