表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/58

第四話 僕の姪っ子、姫たん その六~ラブ&ピース、だわよ~

エピソードタイトルにある「ラブ&ピース」は、

わたしが好んで使う言葉です。愛と平和、いい言葉だと思いませんか?

ラブ&ピース、ロックンロール、ハピネス!


では、どうぞ。

「姫たん、自分の名前、漢字で書けるようになっただわよ」


 得意げに姫たんが言った。

 すごーい、偉いね姫たん、お利口さんね。

 お祖母ちゃんに褒められた姫たんは目をキラキラさせて、持参したノートに書いてみせた。


「ほら、だわよ」

「本当。上手ね」

「お祖母ちゃんを驚かそうって、いっぱい練習したのよね、姫」

 とお姉ちゃん。

「うんだわよ。お祖母ちゃん、驚いただわよ?」

「うん。いっぱいいっぱい驚いた。病気なんてどっかに行っちゃったんじゃないかな」

「じゃあ、すぐに帰ってこられるのだわよ?」

「それはまだわからないわよ。お医者さんがちゃんと診察して、大丈夫って言うまでは、入院してないといけないからね」

 とお姉ちゃんが助け舟を出した。

「ねえ、姫たん。今度来るときには、お祖母ちゃんに、お手紙、書いてこようか」

 と僕が言った。

 姫たんは、そのアイディア、最高だわよって目をした。


「いいわね、それ。でもどうせなら、姫たんだけじゃなくて、麟にも、環奈にも、丈夫にも康夫にも、お父さんにも、和恵さんにも、書いてきてほしいわ」

「わかった。みんなで書いてくるよ」


 お父さんがそう言うと、お祖母ちゃんはうんと肯いた。

 そのあとは、またみんなでいつものようにお祖母ちゃんに、一週間にあったいいことや笑い話をして過ごした。

 お祖母ちゃんは慈しむように僕たちひとりひとりの顔を見て話を聞いていた。

 声をあげて笑った。

 血色のいい顔をしていた。


 面会時間には制限があった。

 もうそろそろになると看護師さんが来て、帰宅を促す。姫たんがお祖母ちゃんに抱っこをせがんだ。


「お祖母ちゃん、早く元気になって、また姫たんと遊んでだわよ」

「うん。わかった。お祖母ちゃん、早く元気になるね」


 ベッドに膝で立った姫たんをお祖母ちゃんがぎゅっと抱きしめた。


「姫たんのだわよが、お祖母ちゃん本当に大好き。姫たんがいっぱい笑ってくれたから、お祖母ちゃんもいっぱい笑った。姫たんの笑顔はお祖母ちゃんの笑顔の元ね。お祖母ちゃんの曾孫に生まれてきてくれてありがとう。みんなにも、ありがとうだわね。お祖母ちゃん早く元気になって、うちに帰るからね」

「お祖母ちゃん、いま、だわよって言いそうになっただわよ」

「え? あら、本当ね」

 みんなで大笑いした。


 それが最後の言葉になった。

 僕たちが最後に見たお祖母ちゃんは、大笑いをしていた。

 その日の深夜、お祖母ちゃんは眠ったまま、安らかに天に召されたのだ。


 お葬式の日に姫たんが言った言葉を、まだ僕は忘れなれない。


 お祖母ちゃんの友達が腰をかがめて姫たんに目線を合わせて、お祖母ちゃんが死んじゃったのに、泣かないで、姫ちゃん偉いね、と頭を撫でた。

 姫たんはこう答えた。


「姫たんが泣いたらお祖母ちゃんが悲しむだわよ。お祖母ちゃんが悲しい思いをするのは嫌だわよ。だから姫たん泣かないだわよ。お祖母ちゃんがいつも笑っていられるように、姫たんはずっと笑っているだわよ」


 大粒の涙を流しながら、鼻を啜りながら、ひっひっと息を吸い込みながら、満面の笑みでお祖母ちゃんの遺影を見つめていた。


 八歳になったいまも、姫たんは「だわよ」を言い続けている。

 きっといつかは言わなくなる日が来るだろう。

 それでも、姫たんが笑っている限り、お祖母ちゃんも笑っている。

 絶対に。


 姫たんは、みんなの「姫」たんなのだ。

小日向家の過去の話を書きました。

お祖母ちゃんもいての小日向家、なのです。

賛否はあるでしょうけど、わたしは書けて良かったと思っています。

姫たんの「だわよ」の秘密でしたが、どのような感想をお持ちになられましたか?

お聞かせいただけたら嬉しいです。


では、また。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ