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こすぷれ。ぼーい  作者: 宮本双葉
第1章
1/3

コスプレって男でもできるんですか?


「えー、あざみ先輩コスプレやってるんですか!?」


 狭いサークルの部室に響いた咲の声を聞いて、僕はスマホでゲームの周回をしていた指先を一瞬だけ止めた。


 大学サークル棟漫画研究部の部室にいたのは、僕と、同期で彼女の咲、そして、一つ学年上のあざみ先輩の三人だけだった。

 

 部室の真ん中に二つ並べられた安物の机の片側に僕が座り、向かい側には先輩と咲が並んで座っていた。

 何やら面白そうな話に、僕は思わず身を乗り出しかけたが、女の子二人の会話に割って入るような勇気がどうにも湧いてこなくて、結果盗み見するように、視線だけをこっそりと二人に送った。


 咲は少し興奮気味で、先輩の方に身を乗り出してぐいぐいと迫っている。

 一方あざみ先輩は彼女の迫力に押されて身体がのけぞっていた。


「……あー、うん。一年前くらいからやり始めてて」

「写真ないんですか!?あざみ先輩のコスプレ写真みたーい!」


 咲は先輩の肩に擦り寄ってねだっていたが、先輩はどうやら抵抗があるのか、「いや」とか「でも」とか呟いて渋っていた。


 僕は二人の駆け引きを眺めながら、こんな身近にコスプレする人がいたことにびっくりした。

 まるで地元で有名人に出くわしたかのような気分だった。同人即売会やゲームのイベントで、勿論コスプレイヤーという存在を目撃したことはあるが、なんだか自分とは別世界にいるような感覚で彼女たちのことを見ていたのだ。


 それよりも、だ。僕は先輩が、あのあざみ先輩が、コスプレをしているという事実に、僕はどうしようもなく興味をそそられた。


 何せ、「アニ研創設以来の美女」と謳われたほどの美貌の持ち主だ。

 何故漫画研究サークルなどという日陰者のオタクたちの巣窟に住み着いたのかと皆が訝しむほどだった。

 フラれたショックで退部した男共は数知れず。さっぱりとした性格とは裏腹に、意外と後輩の面倒見が良いなどというギャップまで併せ持ち、男のみならず女子たちをも虜にするアニ研の頂点である。

 

「分かった、分かった!見せるから勝手に人のバッグを漁るな!」


 ついにあざみ先輩は観念した様子で、咲の手から自分のバッグを奪い取ると、その奥から自分のスマホを取り出して画面を点けて写真を探し始めた。


 そのとき、ふい先輩の視線が一瞬浮いた。

 向かいでこっそりと視線を送っていた僕と一瞬だけ視線が合った気がする。

 

 僕はほぼ反射的に、すぐさま視線を逸らして俯いてしまった。

 一つ上の女の先輩のコスプレ写真に興味があるなんて、とてもじゃないけど恥ずかし過ぎる。

 ましてや彼女である咲も一緒なのだ。興味があることを悟られすらしたくない。


 僕は、そのまま先輩の視線が過ぎ去ってくれることを、顔を熱らせて俯きながらじっと祈った。机の下で光るスマホの中に映るゲームは、目を離している隙にゲームオーバーになっていた。


 しかし、そんな僕に無常にも声をかける者がいた。よりにもよって、あざみ先輩ではない方が。


「ねーねー、しゅんぴ。あざみ先輩コスプレしてるんだって」


 しゅんぴ、という咲だけが使う僕の呼び名に、全身から冷や汗が吹き出した。

 

 なんで、今、咲が僕に声をかけるんだ。

 彼氏に他の女のコスプレに興味持って欲しいか?

 これなんて返すのが正解?

 もし顔を上げたら彼女に殺されるトラップとかなんじゃないだろうか。


 色々と深いようで浅く考えを巡らした結果、そのままの姿勢で「へえ」と、初耳かつ興味のないような体裁で相槌を打つことになった。


「しゅんぴもこっち来て一緒に見ようよ」


 良いんですか!?とその言葉に思わず反射的に顔が跳ね上がってしまい、こちらを見つめる咲とあざみ先輩どちらともうっかり目が合ってしまった。

 咲は純粋に楽しそうな表情で僕に手招きしているようで、少なくとも彼女が彼氏の忠誠心を試す罠とかではないようには見える。


「ちょっと咲ちゃん、あんまり他の人に……」


 一方で先輩は、片手で写真を探しながら、もう片方の手で僕に手招きする咲の手を下ろさせようとしていた。

 彼女の方が明らかに僕に見せるのを嫌そうにしていたので、視線が合った途端に、お互い気まずい表情になってしまう。

 しばらく先輩と僕のあいだでそんな気まずい空気が流れたが、やがて先輩が険しく眉をひそめながらも、一応という体で僕に声をかけた。


「……気になる?」


 私のコスプレが気になりますか?

 真正面からそう問われて、再び恥ずかしさがぐんぐんと上ってきた。

 そりゃ見たい。見たいに決まっているのだが、自分のコスプレが気になるかと真正面から尋ねられたときに、相手にキモいと思われず、無事にコスプレを拝見できる正しい回答なんて全く習ったこともない。


 何だか頭がぐるぐるとしてきて、こうなると、悪い癖が出る。


「いや、そんな、先輩のコスプレ見たいとか、そんな気持ち悪いこと言わないっすよ。全然、いや、大丈夫なんで、全然!」


 捲し立てる口が尖っているのが自分でも分かる。最悪に格好悪い誤魔化し方だなあと思いつつも、こうなると自分の意思では止められなかった。


 ああ、さらば。先輩のコスプレ写真。見たかったなあ。


 心の中でほろりと涙を流していると、唐突に左腕がぐいっと持ち上がる感覚があった。

 いつのまにか僕の方に来ていた咲が、僕の左脇を両腕で抱えて、立ち上がらせようとしていたのだ。


「しゅんぴはそうやって誤魔化すからー。ほら、見ようよ!」


 僕の性格を先回りしてフォローしてくれる咲の姿に、僕は女神の類を見た。

 ありがとう、咲。良い、彼女です。


 あざみ先輩は長く溜め息を吐いたが、最後にはもうどうにでもなれというようにすっきりとした表情になって、僕に向かっておいでと顎をしゃくった。


 お言葉に甘えて、僕は自分のパイプ椅子を持って、机を回り込んで先輩の隣に座った。

 咲も元の席に戻り、あざみ先輩を両脇から二人で固めてしまう。


 先輩は僕たちの急かす視線を受けながら、しばらくスマホの中を探し回っていたが、やがてお披露目に叶う一枚を見つけたようで、ギャラリーの中から一枚の写真を引っ張り出して、僕たちに見えるようにスマホを机の上に置いた。


「これとかかな。ノベコレのティターニアなんだけど」


 小さな画面に映された写真を見た途端、僕が抱いていた勝手な予想、先輩が猫耳とかつけて、可愛く映った写真なんかが拝めるのかと、そんな下心がこもった期待感で写真を待っていた訳だが、そんなものは一瞬で何もかも吹き飛ばさされた。

 

 僕はそれを見て、脳天を突き抜けるほどの衝撃を受けたのだ。


 『ノベルコレクション』通称ノベコレとは、スマートフォン向けのゲームとして人気が高い。

 僕も咲も当然遊んでいる。世界中の神話、民話、小説などに登場する人物をキャラクターとして採用しているのだが、妖精の女王ティターニアは気高くも儚い、麗しの未亡人のような魅力が売りで、人気が高いキャラクターだ。


 崩れかけた城の城壁を背景に、その壁面の欠けた面を椅子にして一人の女王が腰掛けている。それはまさに『ノベルコレクション』ティターニアそのものだった。


 衣装は頭の王冠からマント、衣装、ハイヒールの先まで手抜き感が感じられない。

 コスプレの衣装というと、学園祭の出し物で羽織るマントや、色合いがギトギトした安っぽい民族衣装くらいしかイメージで浮かばない僕は、衣装から放たれる重厚感に圧倒されてしまう。


 写真全体の雰囲気も、錆びついた古城の退廃的な雰囲気を感じ取ることができる。

 まるで中世の絵画を見ているかのようだった。これが実際に撮られた写真であるとはとても信じられない。


 咲も、思わず身を乗り出して食い入るように写真を覗いて、両手で空いた口を押さえていた。


「ええっ、なにこれ。凄すぎないですか!?」

「これは自信作なんだー。スタジオで撮って……って、咲ちゃんちょっと!?」


 咲はおもむろに手を伸ばして先輩のスマホに触ると、指でピンチして先輩の顔を思いきり拡大し始めたので、先輩は慌てて咲を止めようとした。


「本人の目の前で顔拡大とかやめてよ!恥ずかしい!」

「ここまで来て恥ずかしいとかないですよ先輩!」


 咲は先輩の静止にも頑強に抵抗する。

 争う二人を他所に、僕は拡大されたままのティターニアの顔つきをまじまじと見ることができた。


 憂いを帯びて空を見つめる横顔は、本当にあざみ先輩なのかと疑うほど見違えていた。

 鋭く引き締まった顎のラインをなぞっていくと、暗く鈍く光る唇が乗っている。靡くブロンドの髪はウィッグだろうか。きめ細やかな肌は白いのに、内側には血の通った温かさを感じた。

 唯一先輩を感じられる小ぶりな鼻の上には、海外の化粧品の広告に出てくるような力強い目の中に、緑色に輝く瞳が凛と浮かんでいた。


「目の色ってカラコン入れてるんですか?緑色とかあるんだー」

「だから拡大しないでって……。ああ、もう。好きにしてもう」 


 先輩はすっかりいじけて後ろを向いてしまった。

 そうなれば咲はもう止まらない。先輩の顔を隅から隅まで拡大して舐めるように鑑賞し始めた。


 何度も言うが、あざみ先輩は可愛い。だが、顔つきはあくまで日本人顔である。

 写真の中にいるあざみ先輩の顔は、もうヨーロッパの国のモデルのようだった。


 ゲームの中の本物がまさにいるかのよう、というのが一言で表した感想だ。

 ハロウィンの日に渋谷を彷徨いているようななりきりの「コスプレ」とはなんて、鼻息で地平線まで吹き飛ばせるほどに別次元のものだった。


 ふと見られているなと感じて横を見ると、いつのまにか先輩の視線がじとっとこちらを睨め付けていた。

 先輩はじろっとした瞳と不満そうな表情ごと、ぶっきらぼうに口を開いた。


「見たんだから、感想」


 感想!?僕は狼狽えてしまう。本人を目の前にしてコスプレの感想を述べるなんて、実際に直面してみると気恥ずかしくて死にそうだ。

 僕はなんとか許してもらえないかと、温情を請う囚人のような哀れな目で訴えた。


「言わないとダメですか……?」

「駄目」


 無常である。なんの付け入る隙もない、極めて簡素な返答である。

 まだ口に出していないのに、僕は既に耳まで熱くなってきた。それでも僕は何とか、床に散らばっていた覚悟と勇気をガタガタながらも積み上げて、写真から受けた衝撃を言葉にして口にした。


「正直……予想以上だったというか、まるで本物見てるみたいだなって……。ゲームから飛び出してきたらこんな感じかなって、思いました」


 そこまで言って、自分の声が震えるほどにまで緊張していたことに気づいた僕だったが、感想を受け取ったあざみ先輩は口の端をにやりと吊り上げて、不満そうな顔つきから満足気な顔つきに変わっていた。


「ありがと。コスプレする人にとって『本物』って褒め言葉は結構大きいの」


 にまっとした先輩の切れ長の瞳は何だか色っぽくて、彼女の前だというのにドキドキしてしまった。


「えーあざみ先輩、私も褒めてますよー」


 咲は猫撫で声で先輩の背中に抱きついたが、先輩は「暑い離れて」とドライに咲を引き離していた。


 咲は誰とでも仲良くなれるタイプの明るいオタクだ。

 気軽にボディタッチをするので、あざみ先輩ほどではないが、隠れファンが多かった。

 

 いや、ファンというより、そのボディタッチを「実は俺のこと好きなんじゃないか……?」という勘違いが沢山生まれたため、彼氏面をする男が多かったという方が正しい。

 結果ホイホイと告白し、次々とフラれて悲惨なことになっていた。


 いや、かくいう僕もその一端で、数多くのボディタッチに幻惑されて告白したタチなのだが、何故か、本当に何故か、成功してしまったのだ。


 なんで僕の告白だけ了承してくれたのか尋ねてみたところ、「アニ研の中では一番顔の素材が良かった」と案外ドライな返答をされて、喜んで良いのか少々迷う。


「あざみ先輩はどうしてコスプレ始めたんですか!?」


 引き離された咲はそれでもけろっとしていて、そんな質問をしていた。先輩は首を傾げて、しばらく記憶を探っていた。


「確か……元々興味はあって、ツイッターでつぶやいたらフォロワーさんから誘われて、やってみたら楽しくって、という感じだったかな」

「これだけクオリティ高いと、コスプレ写真集とかコミケで出せるんじゃないですか!?」

「あはは、ないない。コスプレの同人誌って全然売れないのよー」


 咲はやたらと熱心にあざみ先輩を質問攻めにしていた。

 最初は始めたきっかけや楽しいポイントなどの質問だったが、徐々に「衣装は買っているのか」「メイクはどうしているのか」などと込み入った話になっていき、次第に僕は話題についていけなくなっていった。


 居場所がなくなりそうで、するすると身体を小さくして、二人の会話をやり過ごそうとしていた矢先のことだった。

 咲はふと真面目な顔つきになって、ぽつりとこんなことを言った。


「私もやってみようかな、コスプレ」

「あら」

「え!?」


 先輩も驚いていたが、僕はもっと驚いていた。

 まだ僕は、自分が生きている世界とコスプレイヤーの生きている世界が別だと思っていたので、そんな中で急に咲がそんなことを言うと、なんだか子どもが突拍子もない夢を語り出したかのようなおかしさが走った。

 

 例えるなら、一緒に動物園に来ていて、急に咲が「私も動物園に入る」って言い出したかのような、そういう衝撃だった。正気かとか、何言ってるんだとか、そういうレベル。


 開いた口が塞がらない僕を他所に、咲は腕くみをして如何にも興味津々といったように頷きを繰り返していた。


「やー、先輩の話聞いてたらなんだか楽しそうなんですもん。ちょっと興味湧いてきたっていうか」

「あー……、そうね」


 先輩が煮え切らない受け答えのあとに視線を向けたのは、咲ではなく僕の方だった。


「もちろん、やる分には協力するけれど、結構男性からヤラしい目線受けたり、二人で撮影行くこともあるしで、彼氏の前で勝手に引き入れるのはちょっと、ねぇ」 


 先輩は僕たちが付き合っていることは知っているので、気を利かせてくれたらしい。僕も先輩のその言葉を聞いて激しく頷いた。


 先輩の話を聞かずとも、コスプレに対するイメージといえばこうだ。

 何十人もの穢らわしい男たちから、どこで売っているのかもわからない特大のカメラレンズをぐるりと向けられ、余すとこなく写真に収められてしゃぶり尽くされる。

 

 そんな危険なサバンナに彼女を放り出すことに、彼氏としてなおさら「はいどうぞ」と頷くことはできなかった。


 ここは先輩に乗っかることで、せっかくではあるが咲にコスプレは諦めてもらおうと口を開きかけたそのとき、パンと手を叩いた咲から思いもよらぬ先手を受けたのだった。


「なら、しゅんぴも一緒にコスプレすればいいんじゃない?」


「は!?」

「ええ!?」


 今度は二人とも大層驚いて、揃って素っ頓狂な声を上げた。


「しゅんぴが一緒にコスプレして、私の傍にいれば彼氏としても安心でしょ?それに、共通の趣味を持つのも長続きの秘訣って良く言うじゃーん?」

「いや、共通の趣味なら二人ともオタクってだけで十分じゃ……」


 いつの間にか先輩の後ろを回り込んで僕の背中に抱きついた咲に、言葉の途中で口を塞がれてしまう。

 モガモガと言葉にならない訴えを発する僕の耳元に彼女はそっと口を近づけて、滅多にない名前呼びと、とびきり甘えたウィスパーボイスで耳打ちしてきた。


「ねーえーいいでしょ、駿。私、駿にコスプレして欲しいキャラいるんだあ」


 口を塞いで反論を封じる暴力と、耳元で甘く訴える声。

 アメとムチを上手くお使いになるものだと被害者ながら感心してしまったが、それでも僕は必死で咲の拘束に抵抗した。


「そ、そもそも、男がコスプレなんかできるか?見たことないぞ、男のコスプレイヤーなんて」


 口を塞いだ手をなんとか振り払って、言い訳がましく反論してみるのだが、今度はそれをあざみ先輩があっさり否定した。


「いや、男でもできるでしょコスプレ。コスプレイヤーの男友達いっぱいいるわよ」

「そうなんですか!?」


 僕は愕然とした。

 テレビでよく見かける「コスプレイヤー」なんて、美人の女性しか出てこないので、可愛い女子限定の、グラビアとかそういう類と同じものだと思っていたのだ。

 ていうか先輩、反論しないで止めてくださいよ。


 あざみ先輩は、もう咲がどうにも止まらなそうな雰囲気を感じ取っているようで、綺麗に整ったショートの髪の毛をガシガシと掻くと、降参を示してため息を吐いた。


「まあ、咲ちゃんが良いって言うなら私が無理に止めることもできないし、この分だと私が教えなくてもネットとかで情報漁って始めちゃいそうね」


 先輩は実際どうなのと存外真面目な視線を僕に向けると、じっさいどうなのと尋ねてきた。


「駿くんは一ミリも興味ない?コスプレ」


 改めてそう尋ねられると、僕も言葉に詰まってしまう。

 

 そりゃ、一ミリもないと言えば嘘になる。正直コスプレについて分からなすぎて、自分が何に興味を持ってるのかもよくわからない。

 だがそれでも、たまに見かけるコスプレイヤーの彼女たちは、同じオタクだとは思えないほどにキラキラと輝いて、まるで僕をそのまま焦がしてしまうくらいに眩しい存在だった。


 キラキラと光るものにふらふらと飛んでいきたくなるのは、何も虫だけではないのだ。


 そこまで逡巡しつつも、あと少しのところで踏ん切りが付かないで、おろおろと佇んでいる僕の背中を最後に後押ししたのは、背中に抱きついた咲の再びの耳打ちだった。


「見なくていいの?私のコスプレ」


 どうしようもなく、一理ある言葉だった。


「……まあ、ちょっと試すだけなら」


 その言葉を待っていたとばかりに、咲は「やったあ!」と人前にも関わらず僕のことを後ろからそのまま強く抱きしめた。

 腕が首に入って締まりかけたので、僕は急いでギブアップを示してタップした。


 あざみ先輩もなんだか嬉しそうで、パチンと指を鳴らして言った。


「じゃあ決まりね。じゃあ詳しい打ち合わせしましょうか」


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