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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日のご飯

作者: 桜木翡翠

 私はあらゆるものの過去、歴史を大切にしようと心掛けている。過去があるから現在がある。そして今があるから未来がある。すべては繋がってると思うからだ。

 それは食事においてもそうだ。自分自身の体の中に入るものに関してはより深く知っておきたい。

「お嬢様。本日のお食事が準備できました」

 爺やに呼ばれて私は食卓につく。さて、今日はどんなご馳走が待っているのかしら。

「今日の料理は子羊のソテーでございます。子羊はフランスから直接輸入しております。個体としては13番目の子供であり、子供のうちから発育がよいため食肉用として加工されました。どうぞお召し上がりください」

「ええ、いただくわ」

 爺やの作る料理は絶品で、いつだって美味しい。だけど、何か物足りない。

「そうだわ、爺や。最近食事の時の歴史が少ないんじゃなくて?」

「申し訳ございません、お嬢様。しかし、歴史は限りのあるものであるが故、同じ話ばかりになってしまいます。つい先日、同じ話ばかりで飽きたと申されていたばかりですし」

 うぅ……。確かにそんなことを言って爺やを困らせたばかりな気がする。反省しなくちゃ。

 一体どんな食事だったらもっともっとたくさんの歴史を楽しむことができるのかしら。

「そうだわ!」




「お嬢様、食事の時間でございます」

 爺やの声掛けで私は食卓についた。部屋にはクラシックが流れており、穏やかな気分に包まれる。

 今日の食事は何かしら。一段とワクワクするわ。

「本日のお食事は全ての部位をご堪能いただけるように焼肉とさせていただきました」

 机の上にはたくさんのお肉が部位ごとに名前と一緒に並べられている。

「本日の個体は“山岸まどか”。年齢20歳。会社員の両親の元に生まれ、ごく平凡に育つ。夢だった美大を受験するが受験に失敗し、その後フリーター生活。肉付き良好であり、脂身も多いため、余すことなく十分に楽しんでいただけることだと思います」

 爺やが1枚1枚丁寧に焼いてくれるお肉はどれも絶品だ。そして、歴史も毎回違った話を聞くことができる。

「食材を変えてよかったわ。とっても幸せよ爺や!」

「爺やはお嬢様が喜んでくださることが何よりも幸せでございますよ」

 こんな穏やかな食事がいつまでも続けばいいと私は願う。 

        

                                   終わり

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