第2話 勇者会談の日(の少し前)
朝、6時起床。ただ、部屋に時計が置いていないため、あくまで感覚だが。
よくあるスクランブルエッグ定食的な物を食べながら、メイドさんに予定を聞いてみる。
ちなみに、、ここまで3日、まだ部屋から出たことはない。だから病人のようにベットの上で食べている。引きこもりが学生じゃなくなったのでヒキニートになってしまった。ああ、恥ずかしい。
「今日はどんな予定?」
「はい。勇者様。午後からほかの勇者様たちとの会談がありますので、10時10分からドレスの採寸などをさせて頂きます。なので、もう少しで出れるように準備をしておいてください。会談は4時ごろに終了するという予定になっています。そのあとの予定はございません。」
「ほかの勇者と会うのって今日だったの?どうしよう、すっかり忘れてた!!」
昨日聞いたばかりなのに、もう忘れていた。いい加減自分のアホさ加減に呆れているメイドさん、可愛い…
いや、そうじゃなくて、内心は焦りに焦っている。まだ心の準備が出来てないのに。私は困った。そして、気になっていたことを恐る恐る聞いてみた。恐る恐る聞いた。
「What time is it now?」
「勇者様?今なんておっしゃられました?」
「今、何時ですか?」
「ああ、ハイ。今9時56分なので、もうすぐ出立の準備をなさってください。」
ああ、やっぱりそうですかぁ。さっき、もうすぐ出てくださいと言われたあたりで薄々感づいてはいた。やっぱり今は6時ではなく、10時ぐらいだった。ここは太陽の上がっている時間が随分と短いようだ。まだ心の準備がぁ...嫌だ...行きたくない...
そして、時は過ぎ、勇者会談会場に向かうこととなった。12時ぐらい。
暑い...真夏の燦燦たる太陽というほどではないものの、このまぶしい太陽と長期間の歩行は引きこもりには厳しいところである。あとどれぐらいあるのだろうか?メイドさんに聞いてみた。
「遠い...あと何センチあるの?」
「勇者様の館は庭園がとても広いので、疲れてしまいましたか?すみません、馬車で中に入れたらよかったのですけど...距離はおそらく、残り18674センチメートルぐらいあると思います。」
ええ...この問いに1センチ単位で応えてる。何それ怖い。なに?完璧超人なの?何でもできるよこのメイドさん。美人だし。妬ましい...あと可愛い。名前だけは長すぎて覚えられなかったけども...
もう、お分かりだと思うが、勇者の庭園が広すぎるのだ。いや、そこまで広くはないのかもしれないが、私が疲れ果てるのには充分な広さだった。侵入者を防ぐ意味もあるのだと思うけど、いささか遠すぎない?もう4キロぐらい歩いたと思うのだけど...だが、そこに救いの手が...やってくるはずもなかった。
そしてそこからさらに30分ほど歩き、私は大きなお城の前にやってきた。
魔王討伐に行くため、2ヶ月ほどしか滞在しないといわれる勇者の館にお金をかけすぎだと思うのだけど。まあいいのでしょう。早く椅子に座りたい。入り口のドアは開け放たれていて、中は不思議と涼しかった。
「「「ようこそいらっしゃいました。五番目の勇者様。」」」
見渡す限り...500人はいるだろうか。ものすごい数の使用人が並び、一斉に挨拶する。
庭師だけでも行く途中で20人ぐらいはみかけたから、きっと使用人全体はものすごい数だと想像していたがまさかここまでとは...
真ん中にひいてあった絨毯(もちろん豪華だ)を恐る恐る、そして一歩一歩と踏み出しながらその会場に向かった。
三階まで上がってそののまままっすぐ進んだところに会場はあった。
ギィ...ギギギギギギギギギギギギギィ!!ドアはとても重かった。まあ、勇者様が召喚されたときにしか使わないらしいし、それは数百年ごとらしいので、仕方ないことだと思った。
そして、入った先は別世界かと思うほど、私の部屋よりもさらに豪華なものであった。
ちなみに、時計は自分の部屋の真後ろの壁にかかっているそうです。勇者様は出立なさるまで気付かなかったとか。