名探偵と助手・三部作 第一部 天才名探偵、瞬時に事件を解決
「さて、助手くん。私は天才名探偵だ。そして私と君は女子同士。ここは一つ、百合をしながら事件解決しようじゃないか」
「冒頭から意味が分かりませんね。何ですか、『百合をしながら』って。エッチなのは嫌ですよ、下手をすると私達の遣り取りが電波で流れるかも知れませんし」
「そこは君、解釈は自由だよ。女子二人が会話をすれば、そこに百合は発生するものなのさ。字数制限で千字しか無いから、さくっと事件解決していくよ。という訳で私が犯人です」
「早っ! 何の事件かも分かってないのに、早っ!」
「単純な事だよ、助手くん。そもそも登場人物は、私と君の二人しか居ない。となるとパターンとしては、私が犯人か、君が犯人か、私達二人が犯人か。この三つくらいしか無い。『実は事件なんか無くて、ただの勘違いでした』というパターンも考えられるが、これは個人的に面白くないからパスだ」
「最初から、事件なんか起きてませんけどね……それで名探偵先生は、何の事件の犯人なんですか」
「それは今から考える。事件は現実世界で起こってない、私の脳内会議室で起きてるんだ」
「あー、そうですか。それで脳内会議室で結論は出たんでしょうか、先生」
「うむ、君の家の冷蔵庫にあったプリンを食べたのは私だ。これくらいの規模の事件にしておけば、平和的で良いだろうね」
「私の家、プリンなんか買ってませんよ……買ったとしても、すぐに食べちゃいますし」
「なら私が、君の家の冷蔵庫にプリンを入れて、そして君が気づかない内に食べたのさ。誰にも気づかれなかった私の完全犯罪だ。ひょっとしたら被害者さえ居ないかも知れない」
「それ現実世界で起きてませんよね……先生の脳内会議室で事件が起きただけで」
「全く、君って奴は。こういうのは素直に『流石です、先生!』と言っておけば良いのさ。よし分かった、ここは一つ、君と一緒にプリンを買いに行こうじゃないか」
「お金はどうするんですか。割り勘で支払います?」
「君の家の冷蔵庫のプリンを食べた、という設定なんだから、ここは私が君に買ってあげるのが筋だろう。さぁ行くよ」
「設定って言っちゃってるじゃないですか。嫌ですよ、一方的に奢ってもらうなんて。私も払いますから、一緒にお店でプリンを食べましょう」
「君は可愛げが無いんだか、可愛らしいんだか分からない子だね。まあいい、これにて事件は解決だ。続きは第二部でね」
「百合って、こういうので良いんですかね先生?」