マナの泉を穢す者・3
魔物によって穢れたマナスポットをミレニアとシュクルが聖依術で浄化し、無事シブースト村へ帰ってきた一行は、寂しがるシナモン達や村人に挨拶を済ませると早々に村を出た。
現在はアセンブルに向けて、街道を歩いているところである。
「うーむ、名残惜しいのう」
「……じゃあなんでついて来た」
デューの言葉にミレニアは思いっきり顔をしかめ、首を左右に振った。
「おぬしはホントに意地が悪いのー……わしとシュクルの聖依術が穢れたマナを浄化したのを見たじゃろ?」
「そうだぞデュー、聞けば世界の異変を調べてマナスポット巡りを始めたらしいではないか。聖依術は使える者が限られておる。今回や王都のような事があれば必要になるのは目に見えているであろう?」
シュクルも珍しくミレニアに同意して言葉を補う。
今までのことでこの二人がいなければならない場面がいくつかあったのは確かだ。
…………理屈では、わかっている。
「いつ村に戻れるかわからなくて、危険も山ほど待っているかもしれないんだぞ。そんな……」
「軽はずみな気持ちでついて来たつもりはないぞ。あの魔物、ただならぬものを感じたからのう」
いつになく真剣な面持ちで、少女は少年と向き合う。
陽の光を受けて、彼女の髪飾りが煌めいた。
「…………今回だって、あそこで浄化の術を使わなければ、近くのシブースト村にどんな被害があったか…………カネルやシナモン、村人達が苦しむのは嫌じゃ。けど、これが他に世界のどこかで起こっているのだとしたら、誰かが苦しんでいるのだとしたら…………それを放って置く事は、わしの心が許さんのじゃ」
「ミレニア……」
ルビー色の瞳ははっきりと、強い意志の光を宿していて、
「……そこまで覚悟しているなら、オレは何も言わない」
ぽふ、と白花色の髪にデューの手が置かれる。
「お前はいつもお節介でノリが軽いからな。面白半分で首を突っ込んでないか、確認しておきたかった」
「……やっぱ意地が悪いのじゃ」
撫でられた頭を押さえ、不満そうに睨むミレニアに子供らしからぬ大人びた笑みを返すデュー。
「で、このままアセンブルに向かっていいのか、オグマ?」
「あ……良ければ、王都に一度戻りたいんだが……」
オグマの言葉に首を傾げたのは、リュナンだった。
「なんでまた王都に?」
「城の魔学研究所に古い知り合いがいて、彼に調べてもらいたい事がある。何なら一度別行動でも……」
オグマがそう話を持ちかけるとリュナンが反応し、
「旦那が離れるなら俺もお供しますよ。一人じゃ危険ですし」
そう言って両手でオグマの空っぽの袖を取った。
「き、気持ちは嬉しいが、あまりこちらに人数を割くのは……」
「そうじゃぞリュナン、勝手に決めるな」
二人の間にミレニアが割って入り、引き離す。
「オグマさん、その用事は時間がかかるものなんですか?」
「あ、いや、調べ物自体は時間がかかるだろうが、ひとまずこれを渡したらすぐ戻ろうと思う」
フィノに尋ねられ、取り出したのは大きさの割にずっしりとした見た目の袋。
デュー達の視線が、一斉に集まった。
「中身は……?」
「白昼の町中で広げるのは少々憚られる。もうすぐアセンブルだ、着いたら宿で一休みしながら話そう」
姿形が目視出来るほど近付いた町を指し示し、オグマはデュー達を振り返った。




