森の奥のひみつ・2
デューの事を覚えているのであろう村人達は、皆優しい言葉をかけてくれたり、笑顔を向けてくれた。
中には、村で採れた野菜や果物をくれたりした者も。
「あったかいとこですね……なんだかほっこりと」
「そうだな、穏やかな気持ちになる」
と、リュナンとオグマがぬくもりを噛み締めていると、開けた場所が見えた。
シブーストは小さな村。広場といえばここで間違いないだろう。
「あの時の兄ちゃん!」
遊んでいた子供達の中の一人が、デューを見つけるなり声をあげた。
男の子が元気いっぱいに駆け寄ってくる。
確か名前はカネルとかいったか、とぼんやり考えていたら彼と同じ髪と瞳の色、そしてよく似た顔立ちの女の子が、何やらもふもふしたぬいぐるみを抱えながら歩み寄ってきた。
「おひさしぶりです、デューお兄ちゃん」
「えーと、カネルにシナモン、それと……」
……否、よく見ればそのぬいぐるみは動いている。
デュー達に気付くとうさぎに似たぬいぐるみは、目一杯顔を背けた。
「……シュクル?」
「おやおや、うさ公ってば隅に置けないなぁ」
「ううううるさいっ! 余は小娘が寂しがるから仕方なくだなっ……そう、お守りしてやってるだけだっ!!」
そんなシュクルににやにやと含みをもった視線を浴びせるリュナン、待望のもふもふとの再会と何やら甘酸っぱい話の気配に目を輝かせるフィノ。
と、そこに。
「なんじゃ、みんな揃ってわざわざこんなとこまで来たのか? 暇人じゃのー」
「ミレニア……」
のほほんとしたいつもの調子でミレニアもやって来た。
やはり三ヶ月ぐらいでは、目に見える変化はない。
「デュー、記憶は戻ったかの?……あー、まだっぽいのう」
「なんで見ただけでわかるんだ……そうだけど、今回はちょっとこの近くに用があってな」
「用? こんな辺鄙な所にかの?」
きょとんと小首を傾げるミレニアに、デュー達はこれまでの経緯を説明した。
「うーむ、マナスポット、のぅ……」
「この近くだと森の奥にあるという話なんだ」
オグマが付け加えると、デューが見上げる。
「森、ってあの時の、村外れの森か……?」
「聖霊の森……なるほど、あそこなら心当たりがあるのぅ……奥に見るからに怪しい場所がある。善は急げじゃ!」
ミレニアは話を聞くなりすぐさま森へ向かって歩き出す。
が、後ろからついて来る気配がないと立ち止まり振り返った。
「お?……何ぼーっとしとるんじゃ?」
「お前、普通について行く気か?」
「道案内は必要じゃろ。森は薄暗くて迷いやすいからのー」
当然のように一行に加わろうとするミレニアにデューは言っても無駄だろうと諦め気味だが、
「……ミレニアお姉ちゃん、あの森に行くの?」
彼女を姉のように慕う少女が、不安げにおずおずと視線を向けた。
ぎゅ、とぬいぐるみ……ではなくシュクルを抱き締める手に力がこもる。
「……すまんのシナモン、デュー達だけでは心配なんじゃよ」
諭すように語りかけながら、あくまで撫でる手は優しく、ミレニアは笑いかけた。
「大丈夫、お姉ちゃんは強いからのう。今は心強い仲間もおるんじゃし」
「……気をつけて、ね」
「ん、シナモンは優しい子じゃの♪」
撫でられて目を細めるシナモンの腕から、シュクルがもぞもぞと抜け出し、降り立った。
「シュクル?」
「……余も行く。この辺りに王都のような障気は感じないが、一応余もいた方が良かろう」
王都のマナスポットには、巨大な牙が地中から突き出して生え、それが障気を発生させていた。
もし、森の中にそんなものが生えていたら、真っ先に被害に遭うのはこの村の住人。
デュー達をあたたかく迎えてくれた彼等が苦しむのは辛い。
「シュクルも行っちゃうの?」
「…………」
「シュクル、ホントはすごいうさぎさんだもんね。わかった、気をつけてね」
「う、うさぎは余計だっ!」
少女に見送られ、仲間達に温かい眼差しを向けられながら、シュクルはデュー達一行に加わった。




