東の神子姫・3
門番の騎士によると、今この砦の向こうで起こっている事はこうだ。
西で橋が壊される少し前、騎士団の隊長が砦を訪れて門の閉鎖を命じた。
それから間も無く、王都の周辺は障気に包まれた。
障気は人体に害を及ぼし、魔物を狂暴化させる。
王都には強力な結界があるため今のところ被害は少ないが、逆に住民は王都から出る事も出来なくなってしまった。
「王都は外界から隔離されてしまった、という訳か」
「なんだか恐ろしい話ですね……結界だって絶対という保証もどこにもないのに王都に住む人々は外に出られないなんて」
「そもそもその状況で何故……」
険しい表情で会話を交わすオグマとフィノの間にイシェルナが割って入る。
「あーもう難しい話はやめやめ! 実際に行ってみましょうよ?」
ざっくりした意見に二人は目を点にした。
「あら? 少なくともフィノちゃんはそのつもりだったワケでしょ?」
「は、はい。ですが貴方がたは……」
「こんな可愛らしいお嬢ちゃんを黙って一人で行かせるとか、まず有り得ないでしょ。門番さんも通してくれないだろうし」
後ろではシュクルが「またこのパターンか」と呆れていた。
デュー達ももともと王都へは行くつもりなので同行者が増えるのは構わないが、問題は、
「障気というのは吸ったらマズいんじゃないのか?」
「そこじゃよ。身体を蝕む毒みたいなモノじゃから、このまま意気込んで突撃してもばたんきゅーじゃ」
じゃあどうすれば、という目でミレニアを見ると、彼女はさらに言葉を続ける。
「……フォンダンシティで蛍煌石を見たじゃろ? アレを使うんじゃ」
「あの石を?」
「特殊な製法で加工して身に着ければ持ち主の周りぐらいなら障気を防げる。いわば結界の簡易版だ」
王都の結界と違って魔物までは防いでくれないが、とミレニアの説明を継いでオグマが補足する。
「むぅ、わしのセリフ」
「す……すまない」
「じゃあ一度フォンダンシティに戻るのか?」
デューが尋ねるとミレニアが「うむ」と頷いた。
「あ……あの、」
おずおずとフィノが口を開く。
デュー達の視線が集まり、思わず一歩下がりそうになるが、
「わたしも……ついて行って良いんですか?」
「あのなぁ……目の前で危険に飛び込もうとしてるヤツを放って置いたら後味悪いだろ。目的地は同じだし、ついでだ」
溜息混じりに答えるデューにフィノはぱぁっと表情を明るくして、
「あ……ありがとうございますっ!」
もう一度、深く頭を下げた。
「ふふ、決まりね♪」
「華やかになったのぅ……これからよろしくなのじゃ☆」
「はい!」
あたたかく迎える女性陣の中に入っていくフィノを見つめながら、
「……あの二人に毒されなければ良いんだが」
「余もそう思った……女子で唯一まともそうだからな」
デューとシュクルは互いに見合わせて肩を落としていた。




