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Tales of masquerade  作者: 万十朗
第二部
179/455

聖域の決戦・3

「デュランダル、オグマ! 王は魔物に取り憑かれているのを差し引いても優れた武人だ、気を抜くな!」


 スタードが叫びながら剣を抜き、デュー達に加わる。

 それにあからさまに嫌そうな顔をしたのはデューだった。


「げ、やっぱバレてた……っていうか教官、危ないから下がっててくれよ!」

「年寄り扱いするな、オグマの治癒術と休養のお陰ですっかり元気だよ」


 かつて騎士団長だった男は元部下に、不敵な笑みで返す。

 グラッセはというと、我関せずといった様子で戦場から退いていた。


「私とやりあう気か……いいだろう、かかって来い!」

「そんじゃあ遠慮なく……うわっ!」


 すかさず飛びかかるリュナンを、王の纏う黒い靄が包む。


「うっ、なんなんだこれ、きもちわる……」


 慌てて離れたものの、みるみる顔色が悪くなりふらつき出す彼に、オグマがまずい、と詠唱を始める。


「穢れ祓いし清浄の光、ここへ!」


 解毒の術が効いたのか、すうっと楽になったリュナンの構えた斧槍の先が上がる。


「旦那、ありがとうございます」

「モラセス王に憑いているのは障気と密接に関わる魔物だ、或いは自身からも障気を発するのかもしれん。迂闊に深入りをするな」

「それなら術でっ……」


 フィノが光のマナを集め始めると、モラセスが一気に迫り、鋭い爪を振るう。


「させるか」

「きゃあっ!」


 反射的に杖で防御したものの人間離れした腕力に華奢な少女の体が持ちこたえられず、そのまま吹き飛ばされて体勢を崩した。


「フィノ、さがれ! 前衛は多少貰うの覚悟で行くしかないな……いくぞ体力バカ」

「合点承知ですよ、先輩……後ろで安心して詠唱出来るように、ですね?」


 イシェルナにフィノを預け、デューとリュナンが互いに見合わせた背後では、オグマとスタードが呪文を唱えている。


「させぬと言っている」


 鈍い音がして、モラセスの腕を受け止めた大剣と斧槍が悲鳴をあげる。

 二人がかりでこれかよ、とデューが小声で吐き捨てた。


「脆弱な……人間の力などではな!」

「「うわあっ!」」


 前衛二人もまとめて薙ぎ倒し、丸裸同然の後衛に王の目が向けられる。


 が……


「二人とも、すまない。待たせたな」

「いくぞオグマ!」


 時間稼ぎは成功したようで、騎士達の周りに涼風が巻き起こる。


「荒れ狂い雷纏う風の将よ!」

「その怒り螺旋に乗せて、今!」

「「解き放て!」」


 王の足元から凄まじい風が、嵐となって天に昇る。


「ぬうっ……!」


 雷と竜巻、切り裂く風の刃。

 通常より効果が高まる複合術で、上級術と同等かそれ以上となった威力のものをまともに受けてしまえばさすがの王も無事とはいかず、自己修復のために動きを止める。


「今だ、ミレニア!」

「……準備は、出来とるのじゃ」


 ミレニアもまた、聖依術の準備を終えていた。

 シュクルが「よいのか?」と目配せをするが、返事はない。


「安らぎの依りべ、その身に宿せ地聖霊! 」


 小さな聖依獣の身を器として地の精霊が集まり、うさぎのような小柄からは想像もつかないような厳つい巨体が現れる。

「聖依術士……久々に見るのう」とムースがひっそり呟いた。


 ルビーの瞳に映るのは、目の前の敵ではなく、過去の記憶。

 山小屋で共に過ごした祖母、ルセットの言葉であった。


「モラセス、おじいさま……おばあさまからの伝言じゃ」

「ぬ……?」


 岩そのものを肌とした巨躯が、王を目標と見定め、おもむろに拳を振り上げる。

挿絵(By みてみん)

「おじいさまの、ばぁーーーーか!」


 聖依獣の隠れ里に、重く地響きのような音が轟いた。

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