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Tales of masquerade  作者: 万十朗
第二部
134/455

海上の出会い・3

 一行が駆けつけたのは、以前この島に流れ着いた時に最初にいた砂浜。


 報告通り、遠くに空を飛ぶ魔物に群がられている船が見えるが、泳いで行けるような距離ではないのは明らか。


「ここはわしらの出番じゃの、シュクル」

「あの時と同じように、か……あれなら水上も渡れようぞ」


 水の精霊を聖依術でシュクルの身に宿せば、あの船くらいまでは行けるようになりそうだ。

 そして同時に体も大きくなるため、全員は無理でも一人二人くらいならその背に乗せて運べる。


「術をかけたら余の背に乗れ、ミレニア。あとはもう一人、護衛が欲しいが……」

「オレが行く」


 護衛には術者の詠唱を守れる上に小柄なデューかカッセあたりが適任だろう。

 すぐさまデューが進み出て、水色の大きな獣に姿を変えたシュクルの背に飛び乗った。

 その後ろに座ったミレニアが、デューにしっかりとしがみつく。


「れっつごーなのじゃ!」

「二人とも、シュクル君も、気を付けてくださいねー!」


 フィノの声を背中に受け、聖依獣は軽やかに水上を駆け抜けていった。


――――


「お兄ぃ、このままじゃやられちゃうよ!」


 小麦色の肌にそばかす、サイドに揺れる大きくまとめあげた髪がトレードマークの、作業服の少女が声をあげる。


「わかってる、だがこうも空中から攻められたら……!」


 精悍な海の男を絵にかいたような青年は船の舵を手に苦悶の表情を浮かべていた。


 四方を空から囲まれ、いたぶるように攻撃されて船員も疲れ始めている。

 こんな状況がいつまでも続けば、いずれは……


「あーもう、誰か助けてよー!」

「呼ばれて飛び出てどっぱぁーんなのじゃー!」


 少女の叫びに呼応するかのようなタイミングで、水飛沫と共にどこからともなく現れたのはまるで奇跡。


 水のマナを全身に帯びた獣と、それに跨がった少年少女。

 マンジュ島から駆けつけた、デューとミレニアであった。


「な、なに、なんなの?」

「正義のヒーロー参上ってとこだ。ミレニア、時間を稼ぐから派手に頼むぜ」


 シュクルの上から降りると大剣を手に、魔物達に新たな標的に認められたデューは飛びかかるそれらをミレニアに近付けないよういなしていく。


「こーのかっこつけが……連続できついじゃろうがいけるか、シュクル?」

「余計な心配ぞ」


 簡単に確認だけするとミレニアは意識を集中させ、瞼を閉じる。


「旅人の依りべ、その身に宿せ風聖霊!」


 ミレニアの言霊を受け、シュクルを中心に旋風が巻き起こり、今度はすらりとした体躯に二対の翼を生やした淡い緑色の獣に変身した。

 キラキラと輝きながら霧散していくのは、先程まで宿していた水の精霊達だろうか。


「なんだこれは……展開についていけない」

「あ、あたしもだよ、お兄ぃ……」


 船員達も皆突然のことに目が点になっているが、それに構わずシュクルは天に向かってひと吠えする。


「羽虫如きが、束になっても敵うと思うな!」


 瞬間、凄まじい竜巻が空中に発生し、無数いた魔物達を飲み込んで巻き上げていく。


「すっげー……っていうか、シュクル微妙にキャラ変わってないか?」

「心なしか気が大きくなっとるようじゃのう……宿した精霊の性質とかあるんじゃろうか」


 などと見上げている間に、一掃してしまう。

 船に残った少数は、形勢逆転を悟ると散り散りになって逃げていった。


「ふぅ……さすがに少し疲れたぞ」


 魔物が片付いた途端、あれだけ大暴れした獣がみるみる小さなウサギになってしまったことにさらに驚く少女。


「えぇ!? ちっちゃ! っていうかウサギがしゃべってるし!」

「なんだと小娘!」


 こんなやりとりも、もはや何度目になるだろうか。

 いい加減無駄な気がするんだが、と呆れながら、デューは操舵手らしき男に近付く。


「勝手に来て騒いでおいて何だが……とりあえず、あそこの島まで運んでくれないか? 戻る手段がなくてな」

「あ、ああ、わかった……」


 そうして船はゆっくりと、マンジュ島に向けて進みだした。

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