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クソ真面目に中世ヨーロッパ風の異世界に転生した場合を考えてみよう!

作者: 度しがたいあき

「貴方は中世ヨーロッパに非常に酷似した世界に、スキル付きで転生する権利を得ました」

「やった!」

「さらにスキルは100個選べます」

「これもう超勝ち組じゃん! あんなクソみたいな元の世界に未練なんか無いわw」

「ただしスキルは非常に多く、チュートリアルを受けることをオススメします。過去チュートリアルを受けずに転生した人達の99%が、転生したその日のうちに死亡しました」

「マジかよ!? じゃあ受ける」

「それではチュートリアルを始めます。まずスキルは細かく分けられ、およそ10万近くあります。全て説明するのは非常に困難なので、ここでは必要不可欠スキルおよび推奨スキルの紹介をします」

「そんなにあるのか……。キャラメイク好きだけどさすがに面倒くさいな」

「まず中世ヨーロッパは非常に不潔な世界です。衛生という観念すら存在しません。そのためあらゆる場所で様々なウイルスや細菌が満ちあふれています。加えて日本人は世界で最も免疫力が低く、不衛生の脅威にさらされた時、極端に致死率が高くなります。東南アジアのある国で食中毒が起こった際、その被害者は全員日本人だったというケースもあります。そこでまず病気にならないよう、この予防系スキルパックを推奨します」

「じゃ、じゃあそれで」

「かしこまりました。それではスキル習得処理します。なおウイルス、細菌ごとに対応するスキルが違うので、予防系スキルパックでは39個のスキルを使用します」

「そんなにあるのかよ!? じゃ、じゃあやめる!」

「やめた場合の一週間以内の死亡率は92%、一ヶ月以内の死亡率は99%になりますが、それでも止めますか?」

「そういうのは普通魔法でどうにか出来るもんだろ!?」

「魔法系のスキルは、実際に魔法を習得してから有効になります。なお予防系スキルパックを採用せず、同等効果の魔法を習得するまでの致死率は100%です」

「だったら必要な物だけ!」

「転送される場所はランダムなので、確率的に全て必要です。また、致死率の低いものも含めた完璧な予防系スキルパックもありますが、そちらは100以上のスキルを必要とします」

「……じゃあいいよ、それで」

「了解しました。次のオススメは言語スキルパックです。このスキルを習得すれば様々な人々と会話が出来るようになります」

「じゃあそれも」

「了解しました。言語スキルパックは42個のスキルを使用します」

「多すぎだろ!?」

「中世ヨーロッパでは遠隔地に対する伝達手段が人口か手紙しかないため共通言語が作られづらく、非常に言語が細分化されています。また言葉が通じないで現地民と接触した場合、20%の確率でその場で殺されます」

「じゃ、じゃあそれも必要な物だけ!」

「転送される場所はランダムなので、確率的に全て必要です。また、数十人程度の集落でしか使われないない言語まで網羅する完璧な言語スキルパックもありますが、そちらは100以上のスキルを必要とします」

「……じゃあもうそれでいいよ。現時点で残り19個しかないじゃん」

「了解しました。次は日本人向け推奨スキルを説明します。まず、「何でもおいしく食べられる」スキルです」

「いらねえだろそんなの!?」

「中世ヨーロッパの料理は王侯貴族が食べている物でも、現代日本人には信じられないほど薄味でおいしくありません。一般市民に至っては残飯以下です。未だこの世界には、新大陸由来のジャガイモやトウモロコシすら広まっていません。飽食と言われる現代日本人が耐えられる食生活ではありません」

「何かラノベとか読んでるとめっちゃ美味そうなんだけどな」

「それは史実に即さない妄想に過ぎません」

「……分かったよ、じゃあそれ」

「了解しました。次は「どこで排泄をしても水洗トイレでしている気持ちになれるスキル」です」

「……そりゃ中世ヨーロッパに水洗トイレなんて無いよな。それは俺でも分かるし、正直和式便器でも無理だ。それもいる」

「了解しました。次のスキルは「一定以上の悪臭を感じなくなるスキル」です」

「悪臭って……」

「先ほども説明した通り、中世ヨーロッパには衛生の概念すらなく、街はゴミと排泄物で溢れています。それは平均的な日本人にとって耐えがたい悪臭です。悪臭が与える精神的なストレスは深刻で、街に入ることすら難しくなるでしょう」

「俺の部屋もゴミ屋敷みたいなもんだけどそれより臭いのか?」

「中世ヨーロッパの街の平均的な臭気は、貴方の部屋の臭気の約倍あります。具体的には毎日排泄物を嗅ぎながらの生活となります」

「それもうトイレで冒険してるようなもんじゃん……。じゃあそれも」

「了解しました。それでは次に「目を見てしっかり話せる――」」

「あのさあ! そういうスキル全部とったら結局いくつスキルが残るの!?」

「1つです」

「じゃあもう実質選べるの1つだけじゃん! どうせ推奨とか言っておきながら、全部必要なもんなんだろ。だったらもう最後の1つだけ俺が考えるからいいよ。やっぱり剣士系かな……それより魔法系か? スナイパーとかもかっこいいよな」

「最後の1つのスキルは、推奨スキルを全て採用された方限定でオススメスキルがあります」

「なにそれ? まあとりあえず聞くけどさ」

「了解しました。では「現代での記憶を異世界転生と同時に全て忘れられる」スキルの説明をさせていただきます」

「ちょ――何でそんなものが必要なんだよ!? んなもんあったら知識無双できねえじゃんかよ!」

「残念ながら推奨スキルを全て採用するような精神面がか弱い貴方が、過酷で殺伐とし、さらに何の娯楽もない中世ヨーロッパの世界で生きぬける可能性は非常に低いと言わざるをえません。貴方がいじめられていた学校とは比較にならないほどの暴力が溢れ、貴方が引きこもっていた自室の100分の1も安らぎが得られる場所はありません。このままではたとえ生き延びたとしても、致命的なホームシックに陥り高確率で自殺するでしょう」

「でもそんなことしたら、ここで死ぬのも同然じゃん……」

「はい。しかしここまで得たスキルはどれも中世ヨーロッパにおいて稀有な能力で、記憶さえ無ければ一般人とは比較にならない可能性で、偉人になれます。それは現実の世界でどんなに長生きしても、貴方には絶対に為し得ないチートです。最後のスキルを習得しますか」

「俺は――」


                  はい

                  いいえ


                                 END

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