第17戦 vsクラッシュ
話は先々進めたい派のひとですんで、
話の進行がかなり早いです。
仲間とかヒロインがでてきたら
ゆっくりになるかもしれませんね。
モーニングスターとは、
持ち手の先に金属の棘がある鉄球を
取り付けたもので中世で実際に使われていた
武器だ。ゲームや漫画では
持ち手と鉄球の間に鎖が取り付けられるのが
一般だ。今回の場合、後者で
現実に使った人などいないかもしれないが
その扱いは非常に難しいだろう。
「そうか、異世界だもんな。
ファンタジーだもんな。こんな武器、
そういえばあったな。それにしても
モーニングスターって名前だったんだな。」
もちろん、日本生まれの結仁のにとっては
未知の武器。架空にしか存在しない武器だ。
ぶんぶんアニメみたいに振り回してれば
どうにかなるというわけではないのが
この現実。これなら
なれないうちは武器など使わず
拳の方が強いとさえ思える武器だ。
「でも、使うしかないよな。
・・・この部屋広いな。ちょっとくらい、
大丈夫だよね?」
持ち手を構えて鉄球を地面におく。
まきびしのように三角形に自立できるよう、
ゆっくりと。そして鉄球から少し離れて
鎖がある程度張っているポジションで
立ち止まる。
「いくぞぉ~、振るぞ~」
このモーニングスターの登場で
かわしては攻撃の作業(自己暗示)が
パァになったために己の力でどうにかして
試験に合格しなければならない。
そこまで大きな試験ではないので
今日一日で終わるし、上位入賞者には
賞金まで与えられる。
これにかたねば今日のご飯がないと
思え。そう思いながら試しに一振りする。
ヌンチャクのように自分に鉄球が
かえって来ないようにしっかりと調節を
心がけて腰を落とし、手を勢いよく一振り。
一振りした一秒後ほどに
鉄球が前を通りすぎる。
そして終着点で地面へ落下する。
ズシン!と重い音がなった後に脱力感が
体を襲う。地面は土なので別に
落ちても問題はない。壁に当たって
壁がこわれたわけでもない。
ただ、抉られるようにほんの少しへこんだ
地面を見て、その威力に驚いていた。
それから暫くは振り続けた。
真っ正面での地面への叩きつけやら
なんやらを少しながら練習した。
ちなみに闘技場での怪我はなにやら
会場にはどれ程の損傷を負っても
たとえ死んでも内側なら治すことのできる
結界が宮廷魔法師によって
張られているという。
メカニズムはどうやら時に干渉
しているようだ。結界が解けたときに
その中の時がもとに戻るのだそうだ。
だから安心して(?)モーニングスターによる
撲殺ができるということだ。
「第17戦参加者、ユイトさまですね。
入場口へ移動してください。まもなく
試合が開始します。」
「あ、はいわかりました。」
入場口から外を少しのぞくと
観客がみえた。観客は結構少なく、
しかも女と子供が大概で男は
数人しかいない。父や夫の活躍をみにきた。
というところだろうか。
ちなみに、試合はトーナメント制で
一対一が行われる。ここは王都らしいので
参加人数は多いのかと
おもいきや思いの外少ない。
「それでは、まもなく第17戦が
始まります。東口、クラッシュ選手。
西口、ユイト選手。クラッシュ選手の武器は
ハルバード。ユイト選手の武器は
モーニングスターです。
それでは開始します。試合、」
ごくりと唾を飲み込む。
からだの緊張はほどけないが、
なぜか、高揚感がある。これからの
戦闘に対する期待だろうか。
それともいまだ見ぬ異世界特典なのだろうか。
「始め!」
試合のゴングが鳴り響くと同時に
相手のクラッシュとかいう選手は
こちらに駆け寄ってくる。
それにたいしてこちらはまず
モーニングスターを地面に落として
ゆっくりと歩み寄る。
さっきの控え室で色々と練習していた。
まず、攻撃のかわしかた、又は受け方。
かわすはかわすだけなのだが、受けるは
鎖を二重に持ち、前に張り出す。
そしてモーニングスターもうひとつの
使い方として鎖の使い方。
ものすごい重量の鉄球をはじめに
落としておき、鎖をもって
相手に絡めて鎖で引き殺す。
だがまずは、撲殺を狙う。
狙いは顔といきたいが、まずは
脛だ。足を狙って動きを閉ざす。
騙すために顔を見ておく。
子供でも思い付くいたって単純な
方法だ。
「食らえ!」
相手がハルバードを振り下ろしてくる。
それをかわしてその勢いで体を捻り、
地面すれすれに鉄球を振りかざす。
直後、ゴッ!という鈍い音がなった。
直後、鮮血が地面に飛び散る。
脳のようなものがでて、さらには
目玉が足下まで転がってきた。
「うっへぇ」
グロゲーをいくつもしてきたので
まだグロには耐性がある。それでも
目の前に広がる光景は、
あまりにも悲惨だった。
「勝者、ユイト!」
直後に男のからだがなにも
なかったかのように自然と再生し、
勝負が始まる前の体制に入った。
男は敗けを告げられると
残念そうに背を向けて帰っていった。
観客からは悲鳴にも聞こえる歓声と
歓声にも聞こえる悲鳴が響き渡っていた。
第17試合前後には致命傷と
呼べるものはあったものの、
ユイトの食らわせた重い一撃のように
即死レベルは無かったという。