第3話 ショウタイ
〜<俺>視点〜
夜も更けてきた午後七時代。
俺は車の中にいた。
「次の予定は○○テレビでの『芸能人、料理の腕前は?』で審査員としてゲストでPM7:30から収録あるから、よろしく」
車を運転しながら俺の横で次のスケジュールを言ったのは、俺のマネージャーである川崎美知子《かわさきみちこ》さんだ。
俺がデビューして以来ずっと一緒の彼女は結構まじめで姉御肌な独身の二十七歳だ。
彼女いわく、
「女の魅力は二十代後半から」
らしく、趣味は『美容の研究』だそうだ。
俺は「美知子さん」と読んでいる。
そういう、俺の名前は高橋裕也、十六歳。
そして、今話題のアイドル<YUU>でもある。
最近は学校でも「似てる」と噂されているらしい、親友の泉悠介《いずみゆうすけ》に聞いた事だが。
「やっぱり、メガネだけじゃいつかバレルかな〜」
俺がそんな事を車の窓から見える景色を見ながら(といっても見えるのは車と高いビルだけだけどね、今走ってるとこ高速道路だし・・・・・・)悩んでいると、
「何、悩み事?」
と美知子さんが聞いてきた。
「う、うん、まーねぇ」
「そう、何かあるなら相談しなさいね」
俺は美知子さんに聞かれて思い出した事があった。
「そういえば、今日、悠介に勝手に藤田さんに手紙出されたんだった」と。
実は今日の昼休み、クラスの男子達による恋の話、つまり女子で言う“恋バナ”に無理やり誘われてしまた。そこで、自分の好きな人を皆それぞれ言っているのだが、はじめ俺は何も言うつもりはなかった。しかし、その話の中に藤田さんが出てきて、
「俺この前、あいつに何もしてないのに睨まれた」
とか、
「俺もただ、あいつに、先生に伝えといてと言われた事を言おうと呼び止めたらいやな顔された」
など藤田さんの悪口を言い始めて最後に
「あいつはない、ない」
と言われたので、俺はちょっとカチンときて、だれにも聞かれないように
「藤田さんは実はちょっと男が苦手なだけなのに」
と言ったら、見事に隣にいた悠介にそれを聞かれており(あいつの耳は地獄耳だっ)、昼休みも終わり、五限目が終わった後に
「お前、藤田のこと好きだろう」
と言われ、ギクってした俺を見て
「そう思って、俺がお前の代わりに手紙渡しておいたぞ」
と言われた。
その時の俺の顔は凄かっただろう。
それを聞いたとき、正直俺は、初めて親友を怨んだ。
「よくも余計なことをっ!」と。
それが後でその親友に感謝する事になろうとは・・・・・・