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囚人棟の(裏)動物使い  作者: 蛇炉
1/10

囚人最後の日

※この物語は、すべてフィクションです

 実際の団体、人物、期間とは一切関係ありません

 これは、完全な作者の妄想です!!


誤字・脱字・変換ミスなど多々あるかもしれませんが、ご了承ください。

カツンッ、カツンッ、カツンッ、カツンッ

カツンッ、カツンッ、カツンッ――――――ガシャンッ



硬質な音が、自分のいる室内に響き渡る。

音は、さほど大きいものではないのだが、静寂に支配されているこの室内ではびっくりするほど大きな音のように感じる。



カツンッ、カツンッ、カツンッ、カツンッ

カツンッ、カツンッ、カツンッ―――――ガシャンッ



先ほどと同じ音が、まったく同じリズムで繰り返される。


<カツンッ>という音が七回

その後しばらく時間をおいてから、<ガシャンッ>という少し大きな音が一回


絶え間なく繰り返されるその音が、俺の元へ届いてくる。

俺は、いつものようにその音に耳を傾ける。


(・・・今日の見廻りは”サカ”か)


俺は、心の中で見回りが誰かを確信すると、小さく鼻を鳴らした。


"サカ"

それは俺がつけたあだ名のようなものだ


本名は”サイガス・セイトカルブ”

長くて面倒だし、呼びづらいから俺は"サカ"と呼んでいる。

このサカだが、実はこいつ人間ではない

まあ、簡潔にいってしまうと化け物だ。


その化け物が3人(正確に言うと3匹か?)いて、毎日交代で見回りをする。

見た目は人の形をしているが、体内にとんでもない化け物を飼っている。


サカはそれが特に強く、外見も人からだいぶ離れている。




『囚人番号8番――――、扉の前へ来い』




気がつくと、扉の小窓からギラギラした目がこちらを見ていた。


どうやら、いつの間にか俺の番が回ってきたようだ。


俺はのそりと体を持ち上げ立ち上がると、だらだらと扉のほうへ近づいた。

すると、小窓から見えていた目が引っ込み、扉が重苦しい音を立てて開かれた。

扉の前には、長い鼻と口に、ゴワゴワした赤黒い毛皮をはやした狼がいた。

そう、"サカ"だ。

サカは俺の姿をみると、ゆっくりと体を持ち上げ、後ろ足だけで立ち上がった。

そして、グイッと顔を近づけ、鼻をひくつかせた。



『―――――少々睡眠不足だな、お前はもう睡眠をとれ、体調不慮や苦情があれば速やかに報告しろ』



サカはそれだけ言うと、俺の肩を乱暴に押し、無理矢理部屋の中に引っ込ませた。

俺は、バランスを崩してしりもちをついた。

文句の一つでも言おうと、出口に立っているサカを見た。

しかし、サカはもうこちらを見ておらず、煩わしそうに扉の取っ手に手を掛けていた。

そして、重苦しい音を響かせながら扉が閉められ、大きな音を立てて扉が閉まった。

すると、またカツンッ、カツンッと一定のリズムで音が聞こえ始め、それが徐々に遠ざかっていった。



「・・・よいしょっと」



俺はゆっくり立ち上がり、扉の小窓から外を見てみた。

小窓は、扉の丁度中間ほどの高さについており、縦が大体10cm、横が18cmの横長の窓だ。

この窓に、太い格子が縦に4本、横に1本入っており、手が出せないようになっていた。

しかし、隙間は十分空いているので外の観察程度なら問題なく出来る。



「お?、今度は正面の部屋か」



俺はそう言って、真正面に位置する部屋の前にサカの後ろ姿が目に入った。

そして、サカは扉の前で部屋の中にいる奴に声を掛けた。



『囚人番号9番――――――、扉の前に来い』



部屋の中から返事はない

しかし、サカはすぐに扉を開けると俺の時と同じように、出てきた囚人に顔を近づけてニオイを嗅いだ。

すると、一瞬だけ動きを止めたサカは、素早く囚人から顔を離した。



『――――――貴様!!!、違法薬物を所持しているな!!!』



サカはそう叫ぶと、素早く身を伏せると、四足歩行になった。

そして、よく通る声で長い遠吠えをした。

一方囚人は、訳が分からず目を白黒させて「いきなりどうした? なんなんだよ一体?」とキョロキョロと首を動かして慌てていた。

サカは一度遠吠えをやめ、低くうなり声を上げると、ジリジリと囚人との距離を縮めはじめた。


(ああ・・・終わったなあいつ)


俺は囚人が辿るであろう結末を瞬間的に悟り、窓から離れた。

すると、正面からグシャリと言う音が聞こえ、すぐ後に断末魔の悲鳴が響き渡った。



「・・・また粛清か、これで今週何回目だよ」



俺はそうぼやきつつ、部屋の隅に乱雑に敷いてある布きれに体を横たえた。

そして、軽く体を伸ばすと、左右に寝返りを打って大きくあくびをした。



「・・・寝るか」



俺は、未だに響いている断末魔を聞きながら、ゆっくりとまぶたを閉じ、眠りに落ちた。



















**********



















此処は、とある無人島。

正確な名前はついていないが、大体の奴はこの島を“囚人島”と呼ぶ

この囚人島には人は住んでおらず、居るのは鳥や魚、それに食虫植物くらいしか生息していない。

しかし、あくまで人が住んでいないだけで、人自体は居る。

それが、俺たちのような囚人だ。



囚人はこの島に送られると、真っ先にある施設に監禁される。

まあ、刑務所みたいなもんだ。


だが、そこらの刑務所より断然いいもんだ。

少なくとも、俺は昔よりいい


どこがいいかって?

まず、一人一部屋、シャワーとトイレつきの部屋を与えられる。

もちろん、料金メーターや制限があるわけでもねぇ。

使い放題だ。

それに、毎日三食飯を食える。

これは、普通の刑務所と変わりないかもしれないが、ここの食事はとにかく美味い。

肉だってちゃんと食える。

飯も日替わりだから飽きることが無い。



正直、俺が外で暮らしていたときより、ずっといい暮らしだぜ。

本当に、いいところだぜ。



まあ、欠点が無いとはいえないがな。

面倒だから、ざっとあげる



・ベットがない

・食事と風呂の時間がきっちり決められている

・強制労働を強いられる

・外出が出来ない

・(女限定)監守の相手をたまにさせられる




こんくらいかな?

まあ、最後だけ目を瞑れば、大した問題じゃない。



だが、すべての囚人がここに送られてくるわけではない。


“重罪”ってやつを犯した奴しか送られてこない。

例えば、国の首相にテロ仕掛けたり、100じゃ聞かないくらい大量の一般人を殺したりなんかだな。

だが、たま~に例外がある。

それは、特定の人物から指名されたやつだ。

もしそいつに指名されたら、万引き・窃盗なんかの俺らなんかより全然軽い罪でもここに送られる。

ちなみに、俺は重罪を犯したほうだ。



普通なら、問答無用で死刑、もしくは終身刑だったんだが・・・。

ここに送られた奴は、一定期間の“生”を保障されるんだ。

あの時、“即死刑”になるはずだった俺も、こうして生きていられる。

窮屈だが、ありがたい。



だが、所詮は俺の主観だ、指名されて送られた後者にとっては、すげー残酷なところかもしれないな。

本来なら懲役5年や罰金程度の罪なのに、ここに送られて時点で“死刑確定”だからな。



だから、そんな奴らはここから必死に逃げ出そうとするんだ。

だが、それは絶対にかなわないことだ。


ここには、絶対的な存在、“監守”ってのが3人居る。

名前は・・・



確か“サイガス・セイトカルブ”

通称;サカ

(通称ってのは、俺が勝手につけたあだ名だ)


それに“ドルマク・ガレティムス”

通称;ドレス

(俺の一番のお気に入りwww)


最後が“バイル・マリカス”

通称;バイル

(何も思いつかんかった・・・)


確かこいつが三人のリーダーだ。



この三人が、この施設を牛耳ってる奴らだ。

三人は、年も考え方もまったく別で、しょっちゅう喧嘩しているが、ある共通点がある。

それは、体内に化け物を飼っているという事だ。



確か

サカが狼の化け物

ドレスが鳥の化け物

バイルが骸骨(死神とかいってたっけ?)の化け物


だったかな。



化け物は本人たちの体に影響を及ぼし、様々な能力を爆発的にあげることが出来るのだ。

腕力、聴力、脚力、視力・・・

飼っている化け物に関するものなら何でも数百倍以上にだ。

その力を挙げる行為を、奴らは“魔人共鳴”と呼んでいる。

魔人共鳴をしている間、奴らの姿は化け物の姿に近くなる。

サカガ一番いい例だ。

アイツは、ほとんど化け物の姿をしているから、ずっと狼人間のままだ。

だが、当初の俺はそれがただの噂だと信じて疑わなかった。

俺らの反抗意識をそぐためのただのこけおどし・・・そうだと思っていた。

だが、ある事件が俺たちの感覚を真っ向から否定した。



事件のきっかけは、器物破損でここに送られた武道家が起こしたものだった。

そいつは、「理不尽だ」とか「今すぐ出せ」だの叫んで暴れまわっていたんだ。

当時、サカはまだ全身を化け物の姿に変えることはあまり無かったんだ。

おかしなところと言えば、赤黒いふさふさの尻尾が生えているくらいだ。

つまりは、ほぼ人間の姿のサカだったんだ。

そんなサカが暴れる武道家に厳重注意をして止めようとしたんだ。

しかし、そいつは一向に大人しくなる様子はなく、あろうことかサカに掴みかかって顔面に何度も拳を叩きつけ始めたんだ。

拳がサカに打ち込まれるたびに、メキメキと嫌な音とともに大量の血が飛び散った。

それを見て、武道家と似た境遇の奴らが武道家をやんややんやと応援し始めたんだ。

もしかしたら、勝てるかもしれない

もしかしたら、逃げられるかもしれない

そんな期待を含ませて、叫び声をあげていた。


だが、それはサカから出ているものではなかったんだ。

それは、拳を叩きつけている武道家から出ていたものだったんだ。

武道家本人は、歯を食いしばって目から涙を流していた。

相当な痛みと恐怖があったはずだろうに、そいつは殴るのをやめなかった。

いや、やめられなかった。


周りからの期待、自分のやってしまった行為への処罰、サカの顔色


そのすべてを予想し、感じ取っていたからこそ後には引けず、がむしゃらに拳を打ち込んでいたのだ。

俺がそれに気が付くのに、さほど時間はかからなかった。

それからは、叫び声をあげながら必死にサカを殴る武道家を、ただ見守ることしか出来なかった。

そのうち、武道家は拳を打ち込む格好のまま、ピクリとも動かなくなった。

それを見たサカは、武道家の手を振り払った。

サカの顔には、傷一つ付いておらず、何事も無かったかのように去っていった。







―――――よかったな、奴が・・何もしないうちに死ねて・・・








去り際にサカが残したその呟きは、確かに俺の耳に届いていた。

それを呟いていた奴の顔は、ニンマリと笑みを浮べていた。

俺の記憶にはそのときの映像が今でも鮮明に思い出せる。



それは、俺の恐怖をあおり、震え上がらせるには十分だった。

サカは、“奴が”といった。

まるで、他人事のようなその言葉。

俺は呼び止めようと手を伸ばしかけたが、そのときサカの顔に異変が起こっているのに気が付いた。

奴の鼻と口が、僅かだが、普通の人間より突き出ていたのだ。

俺はあまりの光景に、小さく息をのんだ。

すると、素早くサカは振り返り、俺のほうを見ていた。

そして、俺の顔を見ながら目を細め、ニヤリと口元をゆがめた。



――――お前も気をつけろ?、こいつのお気に入りはお前だ。



そのとき、全身の血がいっせいに引いたのを感じた。

そして、ブルリと震えると、サカは顔を上げ、よく通る声で笑い声を上げた。



あの噂は・・・化け物ってのはマジだ。



そのとき、監守が危険なものだと俺が心に刻み込んだ瞬間だった。


・・・そういえば、サカがずっと化け物の姿で居るようになったのは、このときからだったような気がする。






まあ、どうでもいいか。

とにかくだ、監守たちが居る限り、俺たちは何も出来ないってことだ。

だから、死刑までの余生を、ここでどう楽しむかってことが一番大切って訳だ。


















**********


















『―――――朝だ!!起きろ!!』



がんがんと耳障りな音を響かせながら、扉を叩く人物が大声を上げた。

俺は、薄目で扉を見てみると、そこにはサカの姿があった。



俺は、のそりと体を起こすと、大きな欠伸をしながら目を擦った。

そんな俺をみて、サカはさらに扉を激しく叩きはじめた。



『――――起きろ!!!』



再び、サカの怒鳴り声が部屋の中に響き、俺は思わず目をギュッと閉じながら耳を塞いだ。


あ~、うるさい

頭ががんがんする~


俺はフラフラしながら立ち上がると、サカは不機嫌そうに鼻を鳴らした。



『相変わらずダラけているな、そんなだから奴に目をつけられるんだぜ?』



突然、サカの声色がチャラくさいものに変わった。


俺は適当に手を振って返事すると、サカはため息を吐き出しながら首を振った。



『まったく、もう少し警戒を持ってもいいんじゃないか?』


「余計なお世話だ。いいからとっとと次の奴を起こしに行けよ」



俺がそういうと、サカは適当に返事をすると、扉を開けて部屋から出て行った。


やれやれ・・・やっと行ったか。


俺は、大きく伸びをするために両手を高く上げ、唸り声を出した。



「はあ~、この瞬間に生きてるわ~」



俺は深呼吸をしながら、感嘆の声を漏らした。

そして、もう一度欠伸をして、やっと立ちあがった。



俺は身も心も起こすため、シャワーを浴びてから部屋から出ることにした。

ここは、いつでもシャワーとトイレは使えるようになっているので、何の気兼ねなく朝シャワーを浴びることが出来る。

昔の生活からは考えられないような贅沢だ。

俺は、身にまとっていた服をするすると脱いで、タオルの入っているかごからタオルを取ってシャワールームの中へ入っていった。






====10分後====





「は~、色々すっきりした!!!」



俺は、そういって髪の毛をワシャワシャと拭いた。


う~ん、シャワーはやっぱりいい!!!


肌を伝う暖かい水

優しく体を包み込む白い湯気

そして何より、体の汚れを落とし、良い匂いがするこの塊がすばらしい!!!

石鹸って言ったっけ?

とにかくいい!!


俺は、手に持った泡立つ白い塊を、手の中でころころ転がした。

そして、塊を顔に近づけ、大きく息を吸い込んだ。



『――――おい!!いつまで寝ているつもりだ!!!』



突然、扉が乱暴に開けられ、サカが部屋の中に入ってきた。

俺はびっくりして、手に持っていた石鹸を地面に落としてしまった。



『――――・・・』


「・・・えーと、イヤンッ///」



俺はワザとらしく股と胸を隠すと、身をよじって背中を向けた。

ちなみに、俺は風呂を出たばかりだったから裸だ。



『うっは!!マジで?!やべー!!!』



突然サカがでかい声で騒ぎ出した。

俺は、とりあえず地面に捨ててある自分の服を拾い、サカに背中を向けたまま着替えを始めた。



『生着替えじゃん!!!やべっ!!生きててよかったーーー!!!!!!』



サカは鼻息を荒くしながら俺の背中を見つめてきた。


あ~、あれだ

見られながらって相当恥ずかしい。


俺は、そう思いながら、さっさと服を着た。

すると、サカは残念そうに声を漏らし、ため息を吐いた。



「変態が、少しは目をそらそうとか考えないのか?」


『気に入ってる奴の裸だぞ?!、燃えるし萌えるだろ!!!』



いや、え~とっ

すまん、まったく分からないんだが・・・


サカは、俺が微妙な顔をしているのに気が付くと、一つ咳払いをして背筋を伸ばした。



『―――――我の器は、女体に興味があるらしい。許してくれ』



サカはそういうと、頭を下げた。


・・・いや、まあ

化け物のほうに謝罪されてもな~


俺は腑に落ちなかったが、サカが一向に頭を上げようとしないのでとりあえず許すことにした。



『―――――だが、お前の怠慢が招いたことに変わりは無い、さっさと来い!!!』



サカは、怒鳴り声を上げると、俺の部屋を出て行った。

俺は、サカの背中を見送りながら、地面に落ちた石鹸を拾い上げた。

そして、拾い上げた石鹸を鼻に近づけもう一度深く息を吸い込んだ。



「・・・よし!!」



俺は石鹸をポケットに仕舞うと、自分の部屋を出た。




















これが、俺が囚人として生きた最後の記憶になった。















どうも皆さん、初めまして

作者の蛇路ジャロです。


今回、プロローグということで短めにまとめたつもりではいるのですが、いかがだったでしょうか?



この作品は、分かりずらいかもしれませんが“女”主人公です。

もし、表現が足らず伝わっていなかったらすみません。

あらすじをよんで「恋愛要素があるの?」と考えた方がいるかもしれませんが

基本的にそうするつもりはありません。


あくまでこれは、ギャグ物語です!!!!



更新が遅いので、気長に待っていただくと幸いです。

感想・要望・指摘などがございましたらドシドシお願いします。

最後に、この作品を読んでいただき、本当にありがとうございます。

私の他作品も、興味がありましたらお時間があるときに読んでみてください。


それでは、長々と失礼しました。



私はこの辺で

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