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常識の檻

「魔法省としては、反逆なんて幾らでもリカバリー出来る問題だと捉えているからでしゅ!現に私達の体内に埋め込まれちいる、監視装置で全ての行動はある程度モニタリングされていましゅ。それなりの行動をとりゃばすぐに処分が遂行さりぇて、都合の良いじんぶしゅに書き変える事なんて平然と行えりゅからでしゅ。」

 カミカミで所々拙い言葉であるが、古田の言いたいことは伝わってくる。ソレに納得できるかどうかは別な問題だが。

 「監視装置というのはなんだ?まさか脳にマイクロチップでも埋め込まれているというわけか。」

 「違いましゅ。われわりゃに執行されたしゅじゅつの際に変態時の観測用装置の名目で子宮に仕込まりゃたものでしゅ。対象を殺害する機能はついていましぇんが、それはワザとつけていないとさりぇていましゅ。」

 (・・・あのときのモノか!)

 思い出すのは忌々しい東日本大学付属病院のことである。カナメは地獄の様な激痛を味わったことを忘れたことはないが、その装置自体は最終段階の工程で取り除かれたと思い込んでいた。いや、思い込まされていたのかもしれないが。

 「なるほど、強い衝撃を受けて誤作動を起こして死んでしまっては元も子もないし、政府からしてみれば『貴様らの命綱を直接は握ってはいないのだぞ、安心しろ!』とアピールすることが出来る。言ってしまえば聞こえは良いが、それでは不十分なのでは?私は訓練センターで百回以上生き死にを繰り返してきたが、その装置は完全に消滅しているか機能していないかのどちらかだと思うぞ。」

 実際に警戒されるだろうが、体のどの位置に存在していても魔法という手段が取れる以上、無効化しようと思えばいくらでも手段は取れるのだ。

 「サカモトしゃん、それでも問題はないのでしゅ。サカモトしゃんは世の中に不満を持っているからといって表で虐殺行為をしたり、国会議事堂を襲撃したりする魔法少女はなぜ現れないと思いましゅか?」

 「確かに私自身も冷酷な仕打ちを受けていたが、実力行使の一線を越えなかったのは一定以上の常識が備わっているからだ。ある意味、自己の進退を損得勘定に賭けた結果だとも言える。最も、善悪すら判断できないシリアルキラーに変貌しても可笑しくない人物は山ほど居ると思うがな。恐らく精神的なストッパーが仕組まれているか、実行する前に消されたかのどちらかだ。」

 自分の将来を滅茶苦茶にされて恨まないヤツなんて、どんな聖人であろうとも存在し得ないはずがないとカナメは考えている。手段を上手に選んだヤツが聖人なのだと。

 「その通りでしゅ、誰しもがいだいている倫理的常識を強烈に刷り込むことによって、魔法省は反社会的な行為を抑制し自制させていましゅ。100%の管理が出来ないいじょう、頭の中の選択肢を除外させるのでしゅ。・・・しつちょうとしてサカモトしゃんに言えるのはここまででしゅ。」

 (まさか手術の際に、ここまで弄繰り回されるととはな。)

 それなりの覚悟を持ってカナメはこの世界に入ったつもりである。しかし、その前提すらもしかしたら刷り込みによる都合よく変換された紛い物だとすると、自らを支えていた根幹が幻のように消え去り、足元が覚束なくなりそうな感覚に陥りそうである。ともかく、古田と小早川の二人にこれ以上怒気を発して追求しても何も始まらないだろう。魔法省上層部にでも直接説明される機会なんて物は有り得ないし、思惑に乗せられるしかない完全に納得したわけでは決してないが。

 「いや、こちらこそ脅すような真似をしてすまなかった。ご説明感謝いたします。」

 古田に向かって頭を下げる、今後の事を考えるとこの狂った組織の中でも古田の存在は重要であり、敬意を払うべき存在だ。無為に扱うという行為は取らない。例えソレが刷り込みによる従順性の表れだったとしてもだ。

 「そんな頭をしゃげられても、わたちはカナメしゃんを室長として作戦指揮下に入れる事に対しゅる責務を果たしたまででしゅ。それよりも、わたちは小早川しゃんがカナメしゃんに説明し忘れたあることについて謝罪をしなければなりましぇん。」

 「え、ええ!?な、何か不備がありましたでしょうか室長。しょ、省内の規定通りの説明は行いましたが。」

 古田に不備を指摘されて、小早川は慌てふためいていた。連絡ミスの件で注意された上で、また注意を受けたのだ。動揺しないほうが可笑しいが、小早川が忘れていたこととは何だろうかとカナメは疑問に思う。

 「肝心の戦闘時における、あの人達のことについて説明をわすれているじゃあないでしゅか!カナメしゃんの今後のマスメディアでの活躍を左右することでしゅよ、編集室にいるから直接出向いてきてもらいなしゃい!」

 「は、はい只今連れて来ます!」

 幼い顔を真っ赤にしながら大人の女性を叱り付ける様はなんとも言えない奇妙な光景だった。しかし、マスメディアでの活躍を左右する人物とは何者なのか?カナメはこういう肝心なときに役立つ根室が居ないのを悔やんだ。 

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