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エルフ屠殺日記 後編

十五日目 

 世の中上手くいかないものだ。自信満々で挑んでみたら、あっさりと返り討ちにあった。理由は三つ、一つは相手が対抗手段を取ってきたから。何でも第二の魔法と呼ばれる技術であり、基本となる魔法をサポートする形で付与されるらしく、時間と鍛錬を掛ければ誰でも習得できるらしい。最悪だったのが、鬼島のそれが異形化時に身体を硬質化するということだ。おかげで二・三発打ち込んでも、生きて攻撃してきたのには驚いた。二つは、そもそも弾薬切れの隙の大きさ。片手で牽制しながら銃の入れ替えは無理があった、やはり最初の二丁で戦うしかないのだろうか。最後は、技量不足。相手も自分も高速で移動しながら戦うので、狙いがブレて弾薬不足でこちらが自然に追い込まれる。魔法を使わないほうが生き残りやすかったとは、もはや頭を抱えるほかない。 



十六日目

 技量の向上に努めてはいるが、手数でどうしても劣る。 



十七日目

 いっそうのこと、オートマチックの方が良かったのかもしないと考え試してみることにしたが、無駄でしかなかった。



十八日目

 回避重視ならどうだろう、と無駄弾と誤射に気をつけながら長期戦に挑む。確かに殺されることは減ったが、手数が無いと恐ろしく硬い皮膚を貫通できずに致命傷を与えられない。



十九日目

 顔などの急所は当たらない物だと考えることにした。



二十日目

完全に手詰まりだ、銃自体の撃ち終わりの隙が致命的である。拳銃以外の銃器は選択肢は取り回しが悪過ぎるて使い物にならない。ファンタジーの主人公ではないが、第二の魔法とやらに賭けるほかないのか。 



二十一日目

 そもそもだ、魔法少女になって一ヶ月程の若造が新たな力に目覚められるなんて、自分を期待しすぎだ。アレに相談しても答えてはくれないし、訓練センターには事務員くらいしか職員が居ない。どうしたらモノか、こんな窮地でもポジティブに意識を向けようとする自分自身が一番頼りにならない。



二十二日目

 愚かなことだが、自分でもイカレタ相手に話し掛ける事ほど滑稽な事はない。あれはそう、偶々ボールギャクからあえぎ声を発っして、廊下に這いつくばっていたなかじまくんに興味本位で話しかけたときの事だ。

 『なかじまくん、私はどうしたら良いのだろうか。もう疲れてしまったよ、流されるままの人生に。』

 『ンン?スピィ ムンンンンンンンン、ンンンンンンンン。』

 『ははは、何を伝えたいんだろうな。はあ、もう精神的にだめかも。』

 『ンンンンン~ンンン!ンンンンムンンン。』

 『・・・気になってはいたが、なかじまくんのラバーマスクの下はどうなっているのだろうか。ちょっと拝見させて貰っていいか?』

 その言葉になかじまくんは動くのを止め、呼吸音すら聞こえなくなる。突然の事態に私はなかじまくんに尋ねた。

 『どうした?』

 尋ねると同時に、なかじまくんは両手が縛られているはずなのにスッと立ち上がってきた。その異様な光景に叫び声も挙げられないほど絶句、注目しているとラバーマスクが人手もないのにするすると捲れ挙がっているではないか!ラバーマスクが完全に剥がれ落ちるとそこには神がいた。


 それを何と表現したらよいのか、学のない私には表現する能力がない。まるで深い漆黒、いや太陽の光の様な白だと言えばいいか、確かに見たはずなのに記憶のなかのイメージが刻々と変化し定かではないのだ。だが、その神々しさだけは覚えている。神は私に神託を授けた。




 『ンンンンンンン!ムウウウウウウウウウウ。ブフォ ンンンン、ムンンンン。』





             何言ってるか判らなかった。


だが神は私に進めといっているのだと言っている!そう考えた私は怨敵を討ちに行った。が、鬼島に一撃で殺される。冷静に考えればあの変態は邪神の類だ、関わるのは危険だ。いや、もしかしレナイ。サキホ    フ  から       ヘ 

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二十三日目

 昨日は途中で寝てしまったようで、日記が中途半端になってしまった。昨日はどうもあの件から身体に違和感を感じていて、その正体は何だったのかを纏めているうちに寝落ちてしまったのである。その違和感についてだが、撃ち終った銃を捨てる際に感じる。おそらくだが、その行為自体に何かしらの作用が働こうとしているのでは? 



二十四日目

 試行錯誤を何度も何度も繰り返すが、明確なビジョンが見えてこない。あと少し、あと少しなんだ。   



二十五日

 ヒントは身近なところにあった。引き出しに畳んだ下着を収納したときのことだ、銃も事務所に帰ったら保管場所を作らなくてはと考えた際、ピン!ときた。試しに銃に魔力を通わせながら、某漫画のポケットのような便利空間に仕舞うイメージを行う。すると、銃が手の中から消えた。そして、出すことも出来る。

『これだ!』  

その日のうちに拳銃を百丁と大量の弾丸を追加で発注をかけ、止め様に以前使用した対物狙撃銃も購入した。受付がその無茶な注文を渋い顔をしながら許可したので、思わず謝罪をしたがこんなのはまだ序の口のこと。ちなみに、一番酷かったのが純金百キロらしい。何に使うんだそれ。      


二十六日目

 まるで生まれ変わった気分だ!絶え間ない弾幕を張ることにより、鬼島をようやく釘付けにすることが出来たのだ。だが、鬼島も歴戦の古強者。最小限の動きで被弾しながらもこちらの懐に入ってくる。十秒でも相手の動きを止めることが出来たら確実に殺せるが、そう上手くはいかない。    



二十七日目

 今日からはただ撃つだけでなく、フェイントも混ぜながら行動した。帽子を投げつけ視野を狭めさせたり、長い防寒用のコートで銃口の向きを悟らせないようにするなどあらゆる手段を取る。だが、間合いを取るための近接格闘だけは一度も成功しなかった。ガン=カタでも勉強するか?     



二十八日目

 狙いやすい急所とはどこだろうか。正面は相手も意識していて、絶対に直撃しないモノだと割り切ってはいる。しかし、どこかに穴があるのではないか? 試しに閃光手榴弾を購入してみるが、投げる動作がネックだ。



二十九日目

 明日は最終日、それまでに鬼島を殺さなければならない。策は一つ、こっちはいくら死んでも大丈夫だという点を利用することだ。極限状態において、人は生存本能には逆らえない。例えソレがどのような状況下であってもだ。致命的な攻撃が絶え間なく発射されて、精神が健全であり続けられるわけがない。必ず見えない部分で無意識に庇ってしまう部分と、安心して放置する部分がある。そこを突くしかない。 



そして運命の三十日目を私は迎える。

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