エルフ屠殺日記 前編
一日目
鬼島教官からいつでも訓練を振り返られるようにと、大学ノートを日記帳代わりに渡された。同じ事をたらたらと綴ってもしょうがないので、進展があった日のみ詳細を記入する。今まで日記など書いたことなど、小学生の頃のひまわりの観察日記しかないし、今日一日を思い返すだけで殺される恐怖で手が震える。だが書くしかない、でないと私はこれから続く地獄から背を向けて、一生穴倉にしがみ付くだろう。そうなれば、連中の思うように身体を弄繰り回されるはずだ。社会の自称大人達が大切にしろと口を揃えて言っている人権何てモノはここにはないのだから。あー、感傷じみて愚痴愚痴と無駄なこと書いてしまった、余計に疲れる。簡潔に書くと、鬼島の攻撃を目で捉えることは不可能だった。初日だけで百二十三回殺したぞ、と自慢げにロリに戻った鬼島がほざいていたので、怒りによって苦痛からの恐怖がほんの少しだけ和らいだような気がする。怖気づいたり、幼児退行引き起こしたりしてもテレビの故障を直すかのように殺され続け、心の正気を保つことが出来るのだから人体とは不思議なものである。あまりの無理難題にこれ本当に訓練なのかと訴えたら、本人曰く慣れたら避けられるしい。ふざけろ。それ以外の事は身体が覚えるの一点張りで、正直あの得体の知れないなかじまくんとやらの方が教官に向いているのかもしれない。
二日目
進展なし、二進も三進も行かない。ひたすらに殺される。アドバイスの一つぐらい欲しい。ああ、長文を書けていた前日が懐かしい。
三日目
生死体験を連続で繰り返しているからか、魔力の流れを強く感じられるような気がしてきた。だが、気だけである。手も足も出ないを物理的に何度も体験した。
四日目
鬼島を参考に、身体に魔力を巡らせて肉体強化を行おうと試行錯誤。そのせいで気が散り、死亡カウントが増大。五里霧中に陥る。
五日目
今日の訓練はある程度の収穫があった。魔力の循環をより意識することにより、身体能力と五感の強化が成功した。惜しむなら経験不足によって足がもたついたり、明後日の方向に腕がが曲がったことである。
六日目
六日目にして漸く十分以上生存することが出来た。が、嬉しさなぞ感じていない。糞ロリの『これからは足を使うか』の一声がなければどれほど良かったか。
七日目
巧妙が思いつかない。今までと打って変わって足技と、超高速でのフットワークとフェイントをフル活用する化け物の攻撃をどう避けろと。
八日目
足技だけではなく、身体全体で押し潰す攻撃を多用してきた。それと、足で自慢の耳を抉られる体験を何度もした。味わいたくはないが、打開策はない。
九日目
疲れた。今までなぜ逃げようと考えなかったのか不思議なほどだが、もしや頭に何かされたか?どうしようもない。
十日目
ただひたすらにしぬ。
十一日目
自暴自棄になって魔力の循環量を限界まで増量した。何度も身体が炸裂するうちに、しだいに、研ぎ澄まされた感覚を掴みかけそうになる。だが、判った事がある。理論ではなく理屈である。
十二日目
破裂すると破裂させられるを繰り返す。以上
十三日目
遂に極地へと到達したと言うべきか。超人的な感覚により相手も自分も遅く感じることによって、動作の準備と予測が可能となった。但し、相手の速度が新幹線から特急電車にマイナーチェンジしたレベルである。これはいけるかもしれない。
十四日目
やっと戦闘時間が一時間に到達した。あまりの感動に久々に筆が進む。ロリ曰くここからは魔法の使用を許可するようだ。そう言われても武器がなければ無能である。困って相談してみると『普通は通販かここの売店で販売しているぞ、知らなかったのかおぬし?』という素敵な返答を受けた。通販で銃器が購入できると思うか?お前の一般常識を世間と一緒にしないで貰いたいものだ。とりあえず、地下一階にある売店の受付で通販のカタログを頂き、政府で扱っている銃器のラインナップを見せてもらう。訓練センターでの武器の購入は魔法省に書類を申請すれば無償で入手できるらしいので、遠慮なく強力な拳銃が記載されているページを開く。五十口径が普通に載っていたのも驚いたが、アメリカ製でも関係なく購入申し込みの夕方に用意することが出来る点が信じられない。本当に日本かここ、どこかで非ライセンスで製造しているのか?選択肢はオートマチックのデザートイーグルか、リボルバーのM500か。悩んだすえにM500を八丁と弾薬、それとホルスターを購入した。理由は単純、オートマチックだと連射でジャムりそうだし、どの道リロードの早さもそれ自体が隙を生むからである。なので、両手持ちで速攻をかけ、それが駄目なら銃を撃ち終わったリロードを行わないでホルスターの銃で攻撃を仕掛けるしかない。ああ、明日が楽しみだ。