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悪い男達

日本で最も強力な権力を所持している人物とは誰であるか?

多くの日本人なら内閣総理大臣だと答える、そしてそれはある意味正しい。だが、真の意味で日本を変革することを成し得るほどの権力を所持している人物ではない。そもそも、世間の声や政局などの不安定な要素でコロコロと変わっていくような立場にある人物が、長期的な計画や天文学的な資本を用意できるはずがない。では、それらを有する人物とは何者なのか?その答えは東京都中央区銀座七丁目にある料亭『三光』、その一角に用意された個室で行われた会合にあった。


 「後藤はまた来ないのか、いくら伝説と呼ばれた傑物でも限度があるぞ有田。」

 「そう言われましてもあの方は自由人、いくら魔法省事務次官の私でも知り得ないことです武藤陸上幕僚長。」

 「その呼び方は止めろ、この場では別の役職で呼ぶか呼び捨てにしろ。」

完全に外部と遮断された和室、その席には三人の男が共に飲食をしている。一人は武藤重貞むとうしげさだ、陸上自衛隊の名目上でのトップであり、特別魔法災害対策構成軍の全権を握っている。いわば法律に囚われない影の軍隊を自在に行使出来る権利を持っているのだ。もう一人の男は有田浩太ありたこうた、強力なバックアップを背景に四十代後半の歴代最年少の事務次官でありながら、魔法少女やそれに付属する業界に関する行政機構の人事・税源を思いのままに操る、大臣以上の権力者である。そして最後の一人が、

 「若造共、後藤のヤツはどうでも良い。そんな事より例の計画はどうなっているのだ。」

 御年八十歳の和装に身を包んだ老人、高山信三たかやましんぞうである。日本最大の広告代理店エレクトロラインの会長であり、全てのマスメディアを支配下に置いて政治経済をコントロールする影の総理大臣と呼ばれた怪物である。

 「会長、その件に関しては先に連絡した通りです。現地交渉勢力の敵対勢力に我々とのチャンネルを構築し、彼らを本命とします。元々懐柔工作によっての政治掌握を極秘裏に進めておりましたが、報告に挙がっていた魔法少女が敵対勢力の種族に類似していることを確認。以後、我々の信頼を得るために世界を飛んでもらいます。」

 「有田、その事なんだが本当にに大丈夫なのか?俺にはどうもソイツがこちらの指示に従えるのかも疑問だが、まだ新米中の新米なのだろう。部下を預ける身としては不安で仕方がない。」

 「武藤さん、なに心配には及びません。調査上では彼女は裏切ることはありえませんし、もし連行する前に歯向かうそぶりを感じるようならば頭の掃除を行いますよ。それと、戦闘能力に関してはうちの訓練所で一ヶ月ほど訓練させて、全国に用意してある次元の揺らぎをワザと不安定のまま放置している場所に大規模な災害が発生してから送り込ませます。」

 「お前が言うなら俺は構わない、専門とする分野が違うからな。で、災害を起こす候補地はどこにするんだ。」

 「山梨県です、ほら例の会社の土地買収計画に反対して値を吊り上げている連中がいるじゃないですか。私としても政府としても、彼らの存在は不要なのでまとめて処分したいのですよ。まったく、民間主導だとしても次世代の交通機関の計画に逆らうとは嘆かわしいことです。」

 ワザとらしく首を振る有田を、武藤は冷めた目で見ていた。武藤はどうも狐のような有田の姿勢が気にいらなかった。

 「ふん、その件に関してはワシはお前に任せる。なに、我々が行うべき計画と理想の前では塵芥に過ぎん。精々、新世界への礎として働けるだけ光栄だろう。そう、誰にも邪魔させん。日本こそが両方の意味で覇権を得るためにもな。」

 こうして人知れず世界の流れは決められていく、激流に飲み込まれてもがき苦しむ幾多の命を勘定に入れながら。

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