あの頃へ
花火の音を聞いた。
ドンドン、もの凄い音がしたので、僕は抑えきれない衝動によって、窓を思いっきり開ける。
夜空の澄んだ空気と風と共に、ピューッと大きく舞う花火を見る。
ドカン!
感激だった。
僕は何もかも叶えられなかった。
彼女の顔、身体、考えていることを思い浮かべてみる。
あの日以来、アイツはどう変わったのだろう。
それは、斎藤未来が上京する前のこと。
過去のあの時間において、アイツがいなければ、あの空間は無であったも当然だし、アイツがいたからこそ
今アイツを思い出す自分がいるのだ。
精一杯恋愛を楽しんだ
かけがえのない時間。
それは、俺たちが大学一年だった頃の話だ。
大学一年。
入ったのが滑り止めの大学で不満なやつもいるのかも知れないが、
自分は無事そこそこの大学へ入学することができた。
桜の花びらが感動的で、毎日勉強した成果が出たのだなと、改めて実感する、暖かくなってきた春の日、自分は登校する。
やった・・
大学生になった!
その実感は、K像を見たら沸き起こって、それをみた途端に涙が溢れ出した。
受験を勝ち抜いたからだ。
その泣き顔を側を歩く人々に見られぬよう、
そっとスーツの袖で
涙を拭い、
早足で
入学式が行われる
付属体育館に向かった。
その体育館にたどり着き、僕の頬は赤く染まった。アイツがいたのだ。
それは、中学の同級だった。
高校からは別々になってしまったはものの
その頃も自分はアイツのことは忘れられず、
あの頃告白出来なかったという未練が残っていた。
そのあいつが
今ここにいるのだ。
この大学に入り、
4年間を少なからず近い距離感で共にするのだ。
そうイメージすると
自分の胸がかなり熱くなってきた。