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第四画 闘

今年初更新です。漢字を用いた戦闘描写、難しいです……

術書じゅっしょ闘儀とうぎ


動書術者の間で行われる、互いの力を確かめるため、どちらが優れているか競うため行われる神聖な試合だ。勝敗の付け方はいたって簡単。相手を戦闘不能、もしくはどちらかが降参すればいい。この術書闘儀は古来より続く伝統的な試合である。






「ってわけだ、わかったな」


「うん、さっきの先生の説明より分かりやすかった。ようは動書術を使って戦うものなんでしょ」


「まあ、そうなる。とりあえず、相手ぶちのめしたり、降参させたりさせたりすれば良いって事だ」


「さっき神聖って言ってたよね?ぶちのめすって……けど、何で壱年生と弐年生の合同なの?」


「先輩と後輩の仲を良好にするためのきっかけとか、まだ術書闘儀をしたことのない壱年に弐年が手解きする為とかだよ。毎年恒例らしいぞ?」



何故そこまで一は詳しいのだろうか?と楓は疑問に感じた。そして直ぐに言葉に出す



「一君なんでそんなに詳しいの?」


「だから言ったろ?俺の情報網舐めんなよ」


「は、はあ……」


「そこ!私語を慎め!」


「は、はい!!」



担当の教師の渇により、楓は慌てて応答する。



「さて、早速術書闘儀を行うが……一番初めにやりたい者は前に出ろ」


「……」



誰も行く気配が無く、一はふと考える。自分が出れば、あの川村は必ずあちらから来ると。



「先生、俺いきます」


「む、確かお前は…壱年壱組の十文字 一か。よし、ならここに立て」



一は担当の教師に指定された場所に立つ。



「この十文字と相手する弐年は誰だ?」


「俺が出ま――」


「――待ちな」



弐年の列から川村が現れるが、直ぐに一人の生徒が前を遮る。



「なっ!?昴さん!?」


「止めとけ、お前じゃあの壱年ボウズの相手はつとまんねぇよ。どうせやったとして赤っ恥かくのはお前だ。代わりにオレが行くからお前は下がりな」


「ッ……わかりました」



納得いかない表情を残し、渋々川村は列へ戻っていった。



「(あの川村が?どう見てもあいつは他人の言うこと聞かなさそうなタイプだと思ったんだがな……誰だ?あいつ。まあ、大方検討がつくか)」



一は眼前にやって来る、袖がかなり短い巫女服を着。ショートカットにまるで炎の様に朱色の髪の女子生徒を見る。



「オレは弐年参組。朱憐シュレン スバル。お前の相手はオレだぜ、十文字」


「朱憐……か、やっぱりな」





「あー彼、相手が悪いねー」


「?」



楓は側によって来た茶髪の男子生徒に視線を移す。



「えっと……」


「ああ、ゴメン。俺は虎乃宮さんと同じクラスの加賀山カガヤマ ヒロム。よろしくー」


「う、うん、よろしく。ところで、相手が悪いってどういうこと?」


「あそこに居る弐年は朱憐 昴。四神の一族の一つ、朱憐家の人間で、その身に『朱雀』を宿す者。生徒会の副会長で、かなりの動書術の使い手って言われてるよ。これは一君があっという間に負けちゃうきがするな……」


「そんな……一君……」





「動書術は大きく分けて二つある。一つは炎や水、風などいった現象等を操る『性質』。もう一つは生き物の漢字を書き、その生き物を具現したり、その特徴を得ることが出来る『召喚』。基本、動書術者はこのどちらかしか使えねぇが……お前はどっちだ?」


「そうだな…とりあえずは性質と言っておこうか」


「とりあえずだと…?」



「両者準備は出来たか?それでは結界を張る」



担当の教師は、少し離れた祭壇に“結”と書かれた霊吸紙を置くと、一と昴の居る場所を中心に巨大な円状の結界が張られる。



「その結界内で受けた傷や疲労など、身体への全体的なダメージは、この結界をでれば直ぐ様治る。十文字、結界内では心置きなく戦え。朱憐、壱年相手だ。あまり全力をだすな」


「まあ、善処するぜ?先生。さて、オレは準備OKだ」


「俺もだ」


「両者準備が整ったところで……これより、闘儀を行う!両者、尋常に……勝負!!」




一は袂から霊流筆、霊吸紙を取り出し



「先手を打たせてもらう」



霊吸紙に“炎”と書く。霊吸紙は燃え盛り、一つの炎球を作り出す。そしてその炎球を昴目掛け、思いっきり放つ。



「無駄だぜ!」



昴も同じく“炎”と書き、それを地面に叩きつける。すると一の放った炎よりも更に勢いのある炎が現れ、一の炎はいとも容易くかき消された。



「はぁ!?マジかよ!?」


「そんなチンケなもんで、オレの炎を越えられると思うなよ?次はコッチからだ!」



“火球”と書きそれを握りつぶし、昴の周りには幾つもの火の玉が出現する。一に向かって火の玉は飛来してくる。



「ちっ!」



方向を変え、追ってくる火の玉から逃げ始める一。



「(流石に朱雀を宿しているだけはあって、炎関連の動書術がかなり強力だ。どう対処するか……)」


「オイオイ、逃げてるばかりじゃオレには勝てねぇぞ!」


襲い掛かる玉を避けるつつ、頭で思考を繰り広げる。火の玉の勢いが収まると一はここぞとばかりに立ち止まる。だが、昴はそれを見逃さない。



「止まっちゃあダメだぜ!」



火の玉を全て消失させ、霊吸紙に“炎”と書き、二枚目に“噴射”と書く。霊吸紙を握りつぶし、一にその手を向ける。そこから凄まじい勢いの炎が噴出し一へ向かう。



「火には水!」



直ぐに“水”と書き、地面を踏む。一の目の前には水の壁が現れ火炎を防ぐ。



「二枚以上使ったって事は漢字の組み合わせか。あいつ手ぇ抜くき絶対ねぇだろ……仕方ねぇ、俺もいっちょやりますか」



火炎が消えかかり、水の壁も消失しかかる。昴は次の攻撃を加えようと準備に移るが



「――は?」



突然昴の右側の地面に、大きな傷が出来上がった。この形状からするに、風の刃。“風”を用いたものであろう。だが何時の間に?昴は一に視線を戻す。



「俺はさ、霊力も大したこと無いし、大して動書術の技術も無い。けどな、俺にはたった一つ、誰にも負けないものがある。それは漢字の早書きだ」


「早…書き?」


「ああ。動書術は漢字を書き終えると同時に発動する。だから書くのが早ければ早いほど、発動スピードは早くなる」


「っ……書くのが早いからって!!」



昴は漢字を書こうとするが、それよりも先に一が動く。一は“水”“塊”と書く。水の塊は一の頭上に出現、そのまま昴に向けて放つ。“火球”と書き、水の塊を火の玉で迎え撃つが。



「なっ!?」



足元の地面が割れ、鋭い岩が昴に襲い掛かる。辛うじてかわすが、水の塊は完全に消失しておらず、昴の体を包み、そのままの勢いで地面に倒れる。



「かはっ!ごほっ……!?」



水に濡れた、重い身を起こす昴だったが、一がこちらに走ってくるのが見え、立ち上がろうとするが。先程の水の塊の勢いが相当だったのか、足に力が入らない。



「これで終わりだぁ!!」


「ち、ちくしょう……」



昴は思わず唇を強く噛む。二年生と一年はその状況に息を呑む。今まさに一に敗北する昴であったが




「――あれ?」


「「「――え?」」」



一同素っ頓狂な声を上げる。何故なら一が先程の水の塊で水浸しになった地面で、足を滑らせて転んでしまっていたからだ。しかも運悪く転んだ場所には岩があり、一はそれに頭を強打したのだ。ピクリとも動かない一に教師は近づき



「……おい、十文字」


「……」



応答はなし、気絶しているようだ。



「……気絶したら、いくら結界から出ても起きないからな……この勝負、朱憐 昴の勝利だ」


「は、はあ……」


「私は十文字を保健室に運ぶ。各自で弐年生とペアを組み、自習だ!」



教師は一を抱え、保健室へ走っていった。



「……えっと、状況うまく飲み込めないんだけど……」


「俺も……」



楓と弘は走り去っていく教師の背中を見ながら呟いたのであった。




台無しだよ。まさにコレ一言に尽きます。

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