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第二画 夢

第二話です。今回は、動書術についてちょっと触れ。四神の一族の一人が出ます。四神の一族は皆この作品の重要人物ですので、注目してみてください。

照らす月明かり―――――


風に揺れる松ノ木―――――


香る草木の香り―――



俺を呼ぶのは誰だ?―――


何で俺の名を知っている?―――


判らない―――


俺はお前を知らない―――


お前は―――






「……」



ふと目を覚まし、ゆっくりと寝起きでだらけきった身体を起こす一。



「何だ、あの夢……ちっ、寝覚めが悪ぃ……」



立ち上がり、布団をたたみ押入れに入れる。そしてベランダに出るとそこには雲ひとつ無い晴れ晴れとした空が広がっている。



「あら、おはよう一君」



一の居るベランダの右から女性の声が聞こえる。彼女は『藤島フジシマ カオル』。一の住んでいる五木イツキ荘の大家だ。



「薫さん、おはようございます。良い天気っすねぇ」


「そうね、暫くは続くそうよ、この天気」


「ははっ、それは良い。雨よりはましだ」



笑みを浮かべながら言う一。



「ところで一君。もう9時半だけど……学校行かなくてもいいの?」


「はい?」



部屋の中の時計を見る。短い針は9を、長い針は6を指していた。薫の言った通り、現在の時刻は9時30分。龍翔学院の投稿時間は8時30分。見事なまでの遅刻だ。


だが一は慌てることなく



「あ~遅刻っすね。まあぼちぼち行くんで、ご心配なく」


「ダメよ遅刻は。学生の本分は勉強なんだから、授業にちゃんと出ないと!」


「あーへいへい、わかりましたよ~……それじゃ準備しますかねぇ」



欠伸をしながら一は部屋に戻り昨日炊いたご飯とあまり物をおかずを平らげ、学院へ行く支度を始める。そして一は顔を洗った後テーブルの上にある、裏に陰。表に陽と書かれた手のひらサイズの半円状の板を懐に入れる。



「これでよし」



制服をしっかりと着、たもとに霊流筆、霊吸紙を入れる。玄関へ向かい、白足袋の上に黒い革靴を履いたような靴を履き玄関を出た。




/※/




清暦2001年 4月2日9時34分



壱年壱組の教室では既に授業が始まっている。現在行われている授業は語学。動書術の基本に関する事を学んでいる。



「動書術は対象物に術者の霊力、念を流し込み漢字を書くことで始めて力を行使することが出来る。これは皆が知っている基本だな。なら、もし動書術を使い霊力が切れてしまった時、どうするか分かるか?」



生徒は互いに顔を見合わせて「お前知ってる?」等小声で言い合う。



「何だ、誰も知らんのか?なら……虎乃宮 楓!答えてみろ」



「は、はい!」



指名された楓は慌てて席を立つ。



「術者の霊力が切れた場合、その大地の『霊脈』と呼ばれる場所から、一定量の霊力を供給することができます」


「その通りだ、座っても構わんぞ」



教師のその言葉に、楓は席に座り一安心する。教師はそのまま授業を続ける。



「虎乃宮の言った通り、この世界の大地には霊脈と呼ばれるものが存在する。そもそも、霊力というのは生物全てが持っており、霊力を作り出す器官『霊源』というものがある。そして草木は霊力のお陰で生きているが、霊源を持っていない。なら、何故霊力があるのか?それは霊脈のお陰だ」



霊脈、草木と漢字を黒板に書きそれを指で指す教師。



「草木は地から生えているため、大地の霊脈から直接霊力を吸収することが出来る。それと同時に、霊脈の内包する霊力が無くなった時、その草木は枯れ、大地は死に向かう。その為、動書術者は霊脈からの供給は制限されている。もし、制限以上の霊力供給を行った場合、龍翔学院校則第二条『霊脈からの過剰供給をした者は処罰を行う』に確答する。皆も注意するように」


「「「はい!」」」


「それでは次の――」




/※/




清暦2001年 4月2日12時15分




「ふう……」



午前の授業は全部終わり、昼休みへ入る。楓は風を浴びようと屋上へと向かう。そしてふと考える。それは隣の席の一が居なかった事だ。


一とはある意味妙な出会いをしたため印象深い。それに同じクラスメイトとして楓は心配していた。



「そういえば、一君居なかったなぁ……もしかして屋上に居たりして」



そんなことは無いだろうと屋上まで上がり、松の木まで行くと



「よう」


「えう!」



妙な声を上げて、ずっこけそうになる楓。何故なら松の木の後ろに昨日と同じく、一が寝転がりながら陽気に挨拶をしてきたからだ。



「ちょっ!一君!何でここに居るの!?っていうか、何時来たの!?」


「あ~遂さっき」


「もう、12時だよ!明らかに遅刻でしょ!」


「まあな」


「まあなって……はぁ」



ため息をつき、一の横に座る楓。



「何で隣に座るんだよ」


「ダメ?」


「駄目じゃねぇけどよ……なんかヤダ」


「ヤダってなに!ヤダって!」



大声を出したせいで少し疲れながら木に背を預け、一を横目でちらりと見ながら。



「昨日から思ってたけど、一君って不思議な人だよね。なんていうか……こう、基本に捉われないとうか」


「どういう意味だよそれ。ったくわからん奴……」


「?何か言った?」


「別に……」



すると楓が一の前に立ち



「そういえば一君、昼食とった?」


「あ?いや」


「それじゃ一緒に――」


「――断る」


「何で!?」



予想外の言葉に動揺する楓。一は間髪入れずに



「俺昼飯食わねぇタイプなんだ。人間ってのは昼とんなくても、朝と晩しっかり食ってれば大丈夫なんだよ」


「そ、そう……」



がっくりと肩を下げ、ゆっくりとその場を後にしようとする楓。明らか残念そうな表情をした楓を見て一は頭を軽くかき



「……ちっ、何であんな表情すんだよ」



「仕方ねぇ」と立ち上がり、小走りで楓の横に立つ。当然楓は不思議そうな表情をする。



「気が向いた。一緒に行く」


「!……ありがと」



ニコッと笑う楓。一はフン、と鼻で笑う。





食堂へ向かう道中の廊下。楓と一の目の前から、一人の青い長髪の女子生徒がこちらへ来る。楓はその生徒を知っている。



「あら、貴女…虎乃宮の」


「は、はい!あの、もしかして龍堂リュウドウ 真琴マコト先輩ですか!」


「はい、そうですが…」



龍堂 真琴三年。四神の一族の一つ、龍堂の後継者でありその身に『青龍』を宿している。そして生徒会長でもある。楓は同じ四神の一族の者として、彼女に強い憧れを持っているのだ。



「初めまして!私、虎乃宮 楓と申します!この度は龍堂家の後継者である真琴先輩に御声を掛けて頂き、非常に嬉しく思っています!」


「そう固くならなくても良いですよ、もっと肩の力を抜いて、同じ四神の者として、貴女には期待しています。頑張ってくださいね」


「はい!それでは、私はこれで!」



楓は丁寧な一礼をし、真琴の横を通り過ぎる。が、楓は一が横に居ないことに気づく。後ろを向くと、一は真琴の前に立っていた。



「一君?」


「悪ぃ、先入っててくれ。後からちゃんと行くからよ」


「え?……う、うん」



小さく頷き、楓は歩き始めた。残ったのは真琴と一。二人の間に沈黙が続くが、それを破ったのは真琴だ。



「ようやく終わったのですね、十文字君」


「ええ、お陰さまで“龍堂”先輩」



龍堂という部分を強調して言う一。真琴はうっすらと浮かべた笑みを崩さず



「けど本当に良かった……心配しましたよ」


「そすか、心配かけたようで。んで、話しそれだけですか?」


「そんな冷たいこと言わないでください、私は貴方を……」



一に近づき、その頬を触れようとする真琴だが



パンッ!



「!?」



真琴のその手を一は強く弾いた。



「今更家族ぶんなよ、真琴。お前があん時見せた表情ツラ、一時も忘れた事はねぇからな」


「ッ……」



一は真琴を一瞥すると、その横を通り過ぎる。



「十文字君…!」



真琴の呼びかけに一は反応を示さず、こちらを見ることなく歩いていった。真琴は胸をきゅっと押さえ



「一さん……ごめんなさい……こんな不甲斐ない姉で……ごめんなさい……」



その真琴の青い瞳から涙が零れ落ちる。涙で潤んだその視界に映る一、真琴はそれをただ見ていることしか出来なかった。




いきなりシリアス?ムードですね……暫くは学園の授業風景などを映して行きますので、次回もお楽しみに!!

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