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第一画 始

今回より本格的に始まります、漢字を心<カタチ>に。まだ、至らぬ場所も御座いますでしょうが、何卒子了承ください。

清暦2001年4月1日。


桜舞い散り、風が花弁を運ぶ。今日のこの日は龍翔学院の新学期であり、新しい生徒の入学式だ。


入学してくる生徒の顔はとても初々しく。学院の制服にまだ慣れてない所も多々ある。現在、龍翔学院の入学式の真っ最中で学長の入学生へのこれからの心得。今後の志を語り、訓話は終了。そして入学式も閉会となった。




/※/




昼の時間。壱年生の各教室では、生徒達の談話等が聞こえる。初めて出会ったばかりだが、もう打ち解けあったもの者もおり、まだ慣れて居ないのか自分の席に座っている者も居る。


すると壱年壱組の教室から、一人の少女が出て行く。学院の女子制服である上下白の巫女服、そして一年生の証である、青い帯を腰に巻き一際目立つ、その白い髪を黄色のリボンで後ろに纏めている少女。




彼女の名は虎乃宮トラノミヤ カエデ。世界で最初に動書術を行使した四つの一族“四神”の一つ、虎乃宮の継承者である。彼女は教室の空気にまだ慣れず、別の空気を吸いに屋上へ向かっている。



「確かこの階段をあがって、と」



一段一段階段を上っていく。彼女は普段から着物のような服を着ているため、歩きづらい巫女服でも階段を上るのに慣れている。屋上に着くと、扉を開け外の空気が一気に流れ込んでくる。屋上には一面芝生が生えており、中心には立派な一本の松の木が生えている。この草木も動書術による力で存在するものだ。草木の香る風は、楓の頬を撫で、とても心地よいものであった。



「良い風、私の家じゃこんな風は吹かないものね……ん?」



楓の耳に何かが聞こえる。寝息だろうか、辺りを見渡してもその寝息の主は見つからない。



「もしかして」



あの松の木に居るのでは?と楓は思い、木に近づきゆっくりと覗き込む。だが、そこには誰も居ない。



「気のせい?……違う」



確実に自分の目の前に誰かが存在し、寝息を立てて寝ている。恐らく動書術を使い姿を消しているのだろう。楓は懐から“虎”と書かれた筆を左手に、何も書かれていない白い紙を右手に取り出す。この筆と紙こそ、動書術を行使するのに必要なものだ。


動書術は術者の“霊力”と呼ばれる力を用い、筆から紙に霊力と念を流し込み、漢字を書くことで力を行使する事が出来る。


筆は“霊流筆レイリュウヒツ”この霊流筆は紙に霊力を通し易くする効果がある。墨は術者の霊力で生成することが出来る。紙は“霊吸紙レイキュウシ”筆から流れてきた霊力を吸収し易くし、効果を高めることが出来る紙だ。


恐らく、寝ている張本人は透明になる“トウ”の漢字を使っているだろうと考える。



「これを解除できるのは」



霊吸紙に“カイ”の漢字を書く。すると霊吸紙は淡く光りだす。光りは松の木の根本を包み、寝息の主が段々に姿を現す。そこに現れたのは、真っ黒な髪の男子の生徒だ。腕組し、木に背を預けながら気持ちよさそうに寝ている。



「この人が寝息の正体ね……はっ! 何気なく解除しちゃったけど、起きたらこの人怒るよね! どうしようどうしよう!!……けど本当に気持ちよくねているなぁ……」



ジーっと見ていると、男子生徒は少しずつ瞼を開け始めた。



「(あ! 起きちゃった!)」



どうしようかオロオロしだす楓。男子生徒は何が起きたのかさっぱり判らないが、目の前に居る楓に気づき



「……誰?」



と一言。楓は思考でどう言おうか悩んでいた。そして畳み掛けるような言葉が



「あ? お前、俺見えんの? 確か寝る前に姿消しといた筈だが……解除したのお前?」



初対面で険悪な関係になりたくない楓。何故なら彼の腰に巻いている帯は青、詰まり一年生だ。もし自分の同じ教室だったら、今後の関係がまずいと思い、冷や汗と焦りで頭が一杯になる楓。そして思いついた言い訳が口からでる。



「え、えっとねその、此処で寝てると風邪引きますよーって教えようと思って……」



明らかに解除した言い訳にはならない。男子生徒は数秒間下を向く。そして顔を上げると



「悪いな、気ぃ使わせちまって。まあ、善処はしとく」



そう言い、再び頭を下げ、睡眠に入った。楓は難を乗り越えた、と軽くため息を吐き、此処に居たら彼の睡眠の邪魔になると屋上を後にした。




/※/




楓は学食で昼食をとり、午後から教室での集まりがあるので戻ることにした。因みに昼食は白い炊き立てのご飯と焼き味噌大根、豚の角煮、鶏の竜田揚げだ。どれも良い味で、とても学食で作ったものと思えず、料亭のような味を出していた。



「そういえば、あの人何処のクラスなのかな?……綺麗な黒髪だったな、まるであの子みたいだった」



独り言を呟き教室の扉の前に来る。“カイ”と書かれた扉は、楓が前に立つと独りでに開いた。そして左から二番目、一番後ろの自分の席へと座る。



「何だ、お前このクラスだったのか?」


「はぇ?」



左を見ると、そこには先程の男子生徒が居た。



「き、君ここのクラスだったの!?」


「あ? まあな。つうかよ、さっきのあれ、解除した言い訳になってねぇだろ、全く安眠妨害だぜ?」


「ははは……ごめんね」


「まあ別にいいんだけどよ」



男子生徒は若干腹を立たせているような素振りで頬杖をつく。楓は「やってしまった」と自粛気味に俯く。



「十文字 一」


「え?」



楓は男子生徒の方をもう一度向く。



「だから、俺は十文字 一だ。お前は?」



その問いに楓はパァっと表情を明るくし



「私は虎乃宮 楓。よろしくね、一君」


「楓ねぇ……とりあえず、お前のあだ名はおせっかい女だ」


「ひ、ヒドイ!!」


「酷くねぇよ。そっちの方がひでぇだろ、寝てる所に動書術使って妨害すんだからよ」


「あうう……」



言い返せなかった楓であった。だが、楓は別の事を考えていた。



「(一君…か。名前同じだ、あの子と……)」




今回はヒロインの登場です。巫女服は至高です。何故上下白かと言いますと、女性の清楚さを引き出す。といった意味合いがあります。次回の更新は近日行いますので、お楽しみに。

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