第二章 ③
六月 二十五日 金曜日
五時四十分、俺は目を覚ました。
下からはもう婆ちゃんが起きているらしく、しきりに動いている音が聞こえる。ちょっと早いが、体を起こしてカーテンを開ける。
外は薄暗いが朝日が輝いていて、初夏の朝という感じだった。そのまま階段を下り、厨房に顔を出すと祖母が大福の餅をこねていた。
「婆ちゃん、おはよう。何か手伝うことある?」
「おはよう。今日はやけに早起きだねぇ~。
今さっき仕込みは終わったから、大丈夫だよ。ありがとうね」やっぱりしっかりしているなぁ……。
俺自身早起きしてもやることがなかったので、散歩でもしようかなと思った。
でも今日は天宮が家に来る。そのことを思い出して、部屋の掃除をすることにした。
二階に行くと、キッチンに人の気配を感じた。気づかなかったけど、母ももう起きているらしい。挨拶しないと……。
「おはよう。味噌汁でも作ってるのか?」
「あら、おはよ~。今日は早起きなのねぇ?
さては聖子ちゃんが来るのが待ち遠しくて寝られなかったのかな?」
「そ、そんなんじゃねぇよ! ただ、昨日は早めに寝たからさ」
「そうなの~……今からお部屋を片付けるなら、私の布団も畳んでくれると嬉しいな~」
「人のこと気にしてる場合か? ……味噌汁吹きこぼれてるぞ」
「きゃあ! 気づいていたのならもう少し早く言ってよ~……」
まったく……別に天宮と俺は何にもないのに。
ぶつぶつ言っている母を後にして、今日招き入れる予定の俺の部屋を一瞥した。
少し掃除をすれば女子を招き入れても差し支えない部屋にはなるだろう。軽く掃除機をかけて机の上の本を本棚に戻す……これでよし。
現在の時間は六時半、さっき母さんに頼まれていた布団も片付けると、家族で朝食を食べ、制服に着替える。
準備が整ったところで、家族に行ってきますと言い、家を後にした。
学校に着いたのは八時過ぎ、少し早めに着いたので持参した小説を読む。
しばらくすると、このクラス(一から十まであるうちの七組、ちなみに天宮は五組)の担任が現れた。そのままSTを行い、礼をしてから去っていった。
この学校の教師は基本的に愛想がないので、必然的にSTも事務的に用件を伝えてから去っていくのが日常である。
別に進学校という訳ではないのだが、それでも愛想の欠片もない。俺から見れば、教師という仕事を渋々やっている感じがする。
中には愛想の良い楽しい先生もいるのだが、比率は少ない。そんなわけで、俺以外の生徒には不満を抱く奴も何人かいる。
まぁ俺からしてみれば下手に関わりを持ちたくないので、好都合といえば好都合なのだが。
そんなことを考えながら、〝幻界〟について想像し始めた。どんな世界かは体験してみなくては分からないと言っていたが、早く体験してみたい。
もしかしたら剣を交える冒険だってあるかもしれないし、妖精と戯れることだって出来るかもしれない。俺の期待は否応なく高まっていく。きっと天宮も楽しみにしているだろう。
そうだ、今日くらいは俺が天宮を迎えに行ってやろう。
そんな感じで想像はいろんな方向に膨らみ、気づけば午前の授業はあと一時間だった。
もう少しであの世界にいける。授業なんて早く終わってしまえ……。
午後最後の授業が終わると、清掃をして帰りのSTが始まる。
朝と同じように担任が事務的な口調で明日の授業変更や提出物などを告げると、生徒のさようならの挨拶と共に去っていった。早く天宮を迎えに行こう、そう思って教室を出る。
二つ隣のクラスを覗いてみると、天宮は帰る用意をしていた。数分待っていると、天宮が教室から出てくる。
「坂本君! もしかして待っててくれたの?」
「まぁな。たまには俺が天宮を待ってやろうかなと思ってさ」
「図書室ではいつもあたしが待ってるからね~……でも、ありがと」
そんなことを言いながら昇降口に行き、学校を出る。
俺の家はここから徒歩三十分ほどで着くが、今日は天宮もいるのでバスを使う。これだと待ち時間込みで十五分ほどしかかからないので便利だ。しばらくバスに揺られ、俺の家の近くの停留所で降り、俺の家まで歩く。
家に着く頃には日も少し傾いていた。時間は大丈夫か聞くと、天宮は六時までなら大丈夫らしい。
現在の時間は四時四十九分。あちらの世界で四時間くらいは行動できるだろう。
「おじゃましまーす!」
元気に言った天宮を二階に上げた。俺は母に会うため、少し厨房に顔を出す。
「ただいま。天宮が来たから揚げ饅頭持って行くぞ」
「おかえり~! 聖子ちゃんにあんまり迷惑かけちゃダメよ?」母よ、それはお邪魔される家の子に言う言葉じゃないと思うぞ。
母の持ってきた揚げ饅頭と俺が食べる固焼きの煎餅、お茶をお盆に載せ、二階へと急ぐ。
俺の部屋に行くと、天宮が早速ミカドを机に出し、最初のページを開いていた。
「おーい、揚げ饅頭持ってきたぞ」
「ホントっ? やったぁ~! ……ここの和菓子は何を食べても美味しいね~」
そう言いながら幸せそうに揚げ饅頭をパクつく。
揚げたてで中身が熱かったのか、時折涙目になりながら〝はふはふ!〟と言っている。もう少し落ち着けよ……。
それを見て(?)いたミカドが最初のページに文字を浮かび上がらせる。
『ほぅ、なかなか美味しそうだ。我も食べられる体があればよいのだが……』
「そりゃ残念だったな。でも〝幻界〟なら食べられるんじゃないか?」
『む、確かにそうだが……やはりこちらの世界の和菓子を食べたいな』
そんな会話をしながら天宮が食べ終わるのを待った。天宮も一段落着いたのか、お茶を飲んで〝美味しかったぁ~〟と満足そうにしていた。もうそろそろ大丈夫だろう。
「じゃあ、〝幻界〟に行こうぜ! ……今の時間からなら三時間は大丈夫そうだな」
「そうだね。じゃあ、行こっか」
俺たちはミカドの正面に座り、ページを開いた。すると、以前入った時とは違う文字が浮かび上がった。
『我らの世界を、その身を以って確かめたいか?』
以前は世界が無かったからこのような文字は浮かび上がらなかったが、おそらくこれが本来の姿なのだろう。素直に返事をする。
「「はい」」
直後、新たな文字が短く浮かび上がった。
『では、行くがよい』
次の瞬間、俺たちの体は想創光に包まれた。そして白い光が消えたとき、俺たちはその場にいなかった。
目を開けると、見覚えのある花畑と桜の木があった。
ここは確か、以前〝幻界〟から外に出たときに最後に立っていた場所だ。しかも、時間帯もあの時と変わっていない。
つまり、俺たちが入っていない間はここの時間は止まっているということだ。それが分かると、少しだけ安心した。
これなら、この世界で自分たちが行ったことがこの世界の住人に忘れられることは無いだろう。
「やっぱり、いつ見てもこの景色は綺麗だよね~」
それは同感だった。俺もあの時と同じ感動を今でも味わっている。
『さて、景色もいいがそろそろ移動してみないか? 地図を持っていないから、この世界の全体像がよく分からんだろう。
まずはここがこの世界のどの位置にあるのか、確認する必要があるぞ』
「言われてみればそうだな……大陸が二つと真ん中に山があるのしか覚えてないな」
これからの旅に地図は必須だろう。俺たちの想像力がどれほどの世界を作り上げたのかは、正直俺たちにも分からない。
世界の大まかな設定は〝生命あふれる希望の世界〟なのだが、それより先のことは漠然としていて、自分でも理解しきれていない所がある。
「とにかく、この世界に住んでいる人に聞けばいいんじゃないかな?」
『そうだな……それが一番手っ取り早いだろう。まずは街へ行くべきだな』
街か……RPGとかなら近くにありそうなもんだけど、この世界ではどうなのだろうか?
その時、遠くから歩いてくる人影が見えた。あの人物がおそらく〝幻界〟で初めて会う人間になるだろう。少し様子を見てみる。
見た感じ、俺と同じくらいの身長、多分百七十センチくらいだろう。長い黒髪で、体つきは結構ゴツい。
ジーパンと白シャツにチェック柄の上着を着ているその様は、普通に〝人間〟だった。もっと現実離れした生物に会えると期待していただけに、少しガッカリしてしまう。
くだんの人間はこちらに向かってきた。体つきは厳ついのだが、細めのタレ目であっという間に優しげな印象を与える。
俺たちに気づくと、手を振ってきたので俺たちも振り返す。やっと話せる距離までやってきた。見れば見るほど普通の人間だ。
「お前たち、こんなところで何をしているんだ?」
低めの声で尋ねてきた。ちょっと警戒されているかもしれない。
「ええと……そう! 花見です。ちょっと二人でこの桜を見に来たんですよ」
「そうか……俺はシュンという者だ。
お前たちは、もしかして〝ピュア・ヒューマン〟なのか?」
「〝ピュア・ヒューマン〟? なんですかそれ?」単刀直入に聞いてしまった。
「〝ピュア・ヒューマン〟を知らない……そうか」
そう言うと、シュンと名乗る男は、突然体を震わせた。
すると、彼の体に変化が起きた。まず体、先程まで体格の良かった胴体が急に痩せ型になり、手足も異様に細くなった。次に顔、顔のパーツは変わらないのだが、頭の上のほうに大きな耳が生え、口元が突き出た。さらにひげや体毛が生え始めた。
数秒後、全身がピンク色の猫と人が合体したような生物になった。
「やはりお前たちは怪しい。もし〝ピュア・ヒューマン〟だったらすぐに殺すが、そうじゃなかったときは無益な殺生になる。少し手合わせ願おう」
言葉の節々から殺気を感じる……こいつ、本気だ。
「手合わせ、ってことは戦えという事か?」
「その通りだ。もしお前たちが〝ピュア・ヒューマン〟ならば、一瞬で俺に引き裂かれるだろう。
なぜなら、〝バース・トライブ〟が〝ピュア・ヒューマン〟ならば特別な能力は持たないはずだからな」
さっきから俺が分からない単語を並べているが、要するにこいつは誤解しているのだ。
だったら話は早い。こいつを倒せばいいのだ。
「わかった。……痛い目を見ても知らないからな?」
その言葉を挑発だと受け取ったのか、目をカッと見開いたシュンは、手をぶらつかせて低姿勢をとった。おそらく攻撃の体勢なのだろう、そう思った俺はすぐに〝木刀〟を想像した。
しかし、以前は出た想創光が全く発生しない。
「どういうことだ? ここは想像で物体を創り出せる筈じゃ……」
その疑問に、後ろからミカドの声が答えた。
『お主らが最初にここに来たときは、我が制限を緩めておいたのだ。想像するだけで想創光を発生できるようにしていたが、今は想像するだけでは物体を創り出す事は出来ぬぞ?』
嘘だろ……じゃあ今はどうすれば物体を創り出せるんだ?
「行くぞ……想創! 〝爪強化(エンハンスド・クロー)〟!」
俺が考えている間に、シュンがそう叫んだ。すると彼の手から想創光が発生し、数秒で掻き消える。
その手からは、普通の猫では考えられないほどの巨大な〝爪〟が現れた。同時に、彼は俺に向かって走ってきた。大きく腕を振りかぶり、俺を切り裂かんとする。
俺は間一髪で避け、すぐにシュンを見据える。早くこちらも対処しないと、いつか攻撃をくらってしまう。一体どうすれば……どうすればいいんだ?
「ふん、一筋縄にはいかないな……でも動きは素人だ。本気を出すまでも無い」
そういうとシュンは俺の元に走ってきた。同時に巨大な爪で切り裂く。それを避けるとまた切り裂く、さらに切り裂く……このままでは埒があかない。
その時、後ろからセインの声が聞こえた。
「この世界……理解したよ! 想創! 〝火の玉(ファイア・ボール)〟!」
すると、彼女の手が想創光に包まれた。光が消えたとき、そこにはナメクジを倒したときと同じように大きな〝火の玉〟が姿を表す。
「アイツ……〝マジカル〟が使えるのか。〝フィジカル〟と〝スキル〟しか使えない俺には分が悪いかもな……」
よく分からない用語を幾つも出したシュンは、狙いを俺からセインへと変えた。
セインはというと、火の玉を手にして狙いを定めている。これなら勝てるかもしれない……。
「行っけぇぇぇぇぇぇっ!」
シュンに向かって火の玉を投げた。軌道は完全にシュンを捉えていた。
「想創……〝速度上昇(スピード・アップ)〟」
小さな声で発声した瞬間、シュンの体が想創光に包まれた。
光が掻き消えても見た目には変化が無い……このままいけば火の玉はシュンに直撃だろう。
しかし、火の玉が眼前数センチまで迫り、当たると思った瞬間、その場にシュンの姿は無かった。火の玉は空を切り、そのまま飛び去っていく。
辺りを見回すと、セインの真後ろで立ち、セインの首元に爪を立てていた。なんと、あの短時間でセインの背後に一瞬にして回りこんだのだ。
「おやおや……俺も甘く見られたもんだ。分が悪いとはいえ、そんなチョロい花火じゃ何発打っても俺に当たりはしないぜ」
これはピンチだ……下手に動けばセインが殺されるかもしれない。かといって、今の俺にあいつに対抗する術が思いつかない。
……まてよ、もしかしたらいけるかもしれない。
「セイン……お前のおかげで俺もこの世界を少し理解できたかもしれない。もう少し待っててくれよ……想創! 〝木刀(ぼくとう)〟ッ!」
そう叫ぶと、想創光が手元から発生した。手元に物体を感じた俺はすかさずそれを握り、振り払う。光が掻き消えると、そこには〝木刀〟があった。
思ったとおりだ……さっきからシュンやセインが言っていた〝想創〟という言葉、あれはこの世界において物体や事象を発生させるキーワードだったのだ。
思い返せば、ミカドもこの世界を創り出したときにこの言葉を言っていた気がする。それが分かればこっちのものだ!
「想創! 〝速度上昇〟!」
先程シュンが言っていたことと同じ言葉を発する。しかしイメージは違う……セインを助けるために、あいつよりもっと早く!
体が想創光に包まれて、掻き消える。シュンと同じく体に変化は無いが、今ならあいつより早く動けるはずだ。
「チッ……こうなったらさっさと殺すしかないか」
そう言うとシュンは大きく爪を振り上げた。このままだとセインの首が飛んでしまう。
「助けて……」
シュンが爪を振り下ろした。セインの首は巨大な爪によって切り裂かれ、大地に血しぶきが舞い、首が落ちる……はずだった。
「何っ?」
シュンの爪は硬いものに当たっていた。それは……木刀だった。
自分自身信じられないが、シュンが爪を振り下ろした瞬間にセインの元まで移動し、彼女を押し倒し、左手の木刀でシュンの巨大な爪を受け止めたのだ。
「間に合ったか……」
「リュウ! ……ありがと」
「礼はこいつを倒してから言ってくれ……行くぞ!」
巨大な爪を押し返すと、後ろに跳んで間合いを遠ざける。
スピードはほぼ対等だが、それだけでは戦闘経験が少ない俺たちに勝ち目は無い。しかし、こちらは二人だ。
「俺があいつの体力を減らすから、頃合を見計らってさっきのを頼む!」
「任せて! じゃあ、気をつけてね」
そういうと、俺たちはいつ来てもいいように身構える。
「ふん、たかだか〝ピュア・ヒューマン〟の、しかも素人が二人がかりでも俺を倒せると思っているのか? あんまりナメてるとブチ殺すぞ!」
シュンはそんな言葉を吐き捨て、俺に向かって一瞬で飛び込んでくる。
「オラァ!」
巨大な爪で俺に切りかかるが、そのモーションに入ったときにはすでに迎撃体勢が整っている。
切り裂くであろう軌道を予想し、左に避ける。シュンの体に大きな隙が出来た。
「どぉぉぉぉぉっ!」
現実の剣道ならば〝逆胴〟の動きで、上段から袈裟に切り下ろした。木刀なので切れはしないが、体力を削るには十分な力だろう。
「ぐはぁっ!」
木刀が腹部に直撃したシュンはその場にうずくまり、痛みに悶えていた。
彼にとっても想定外の威力だったのだろう、立ち上がるときには体がふらついていた。
「くそっ……こんな素人に、負けてたまるかっ!」
まだ気力の続いているシュンは、そこから立ち上がり再び俺に向かって飛んでくる。
「させないよ……想創! 〝火の玉〟!」
ちょうど後ろに立っていたセインが叫ぶと、彼女の手には先程と同じく〝火の玉〟が姿を表す。それを投げずに前にかざすと、俺はすぐに右へ避ける。
シュンはというと、飛び込んでいるので急制動は効かない。そのまま巨大な炎の玉に向かって突っ込んで行き……。
「うわっちぃぃぃぃぃ!」
思い切りぶつかった。少々間の抜けた悲鳴をあげながら地面を転げ回る。
そうしているうちにその場で気を失った。
「ちょっと……やりすぎたかな?」
「いいんだよ、これで。これに懲りたらもう襲って来たりしないだろう」
『お主ら、初めての実戦にしてはよい戦いだった。我も教えることが少なくて済みそうだ』
「お前……最初から知ってたな?」
『もちろんだ。最初から教えてはつまらないだろう?』
「つまるつまらない以前の問題だろ! 俺たちは危うく死ぬところだったんだぞ?」
『いや、お主らなら死なないと信じていた。最悪の場合、我が死ぬ前に回復してやるから大丈夫だったのだがな……』
まったく……この前から思うが、困った性格の本だ。
「それはそうと……こいつはどうすればいいんだ? 放置してどこか行くのも問題だろう」
「そのことなんだけど、この猫さんに案内してもらうのはどうかな?」
「案内してもらうのは構わないが……あんだけひどい目に遭って未だに〝猫〟と認知できるのがすごいと思う。どう考えても化け物だろアレは……」
「そんなことないよ~! ピンク色の可愛い猫さんじゃない!」可愛いのか?
「可愛いと思うやつに火の玉を遠慮なく浴びせるのはどうかと思うが」
「まぁ……細かいことは気にしちゃダメだよ?」
「そうですか……」
そんな他愛も無い話をしていると、シュンが目を覚ました。
「けっ、何故俺を殺さなかった? 俺はお前たちを――」
「俺たちはお前に襲われたから抵抗しただけだ。別に殺そうとまではしていない」
その回答が意外だったらしく、シュンは目を見開き、瞬きを繰り返した。
「本当か? 俺は今まで数え切れない程殺されかけたからな……」
「あたしたちはそんな酷い事しないよ! ……いきなりだけど、一つ頼みがあるの」
「な、なんだよ」
「ここから一番近い街まで案内してくれない? あたしたちは知らない間にここに来ていたから、帰り方が分からないの……」
「知らない間って……お前たちは〝転移(テレポート)〟で飛ばされたのか? それとも記憶喪失か?」
「詳しいことは言えない……とりあえずこの世界について教えてくれると助かる」
「この世界についてって……どこから知りたいんだよ?」
「全部だ」