プロローグ
想像、それは誰もがしたことがあるだろう。
俺は想像が大好きで、頭の中は常に夢と希望にあふれた世界が広がっている。それは外部に干渉されず、また己の意思で思いのままに改変することも出来るので、想像の中だけで言えば俺は『神』にも等しい存在なのだ。
俺は『神』になってかれこれ十年、今まで創り上げた世界は数知れず、そのどれもが己を『主人公』として登場させ、仮想の世界で数々の伝説を作っていった。
『主人公』という立場なんて、普段の俺の性格では絶対に選べない。現実での俺は控えめでおとなしい性格、たいして人との関わり合いも持たず、地味に生きている。『現実』は俺を目に見えない圧力で押しつぶし、窒息させたいのかと思うほどのしかかってくる。
でも想像の世界は俺を縛らない。想像の世界ではどんな圧力からも開放され、俺のあるべき姿を映し出してくれる。この世界で『神』になった俺は、存在が自由そのものなのだ。
現実での嫌な事だってこの世界に飛び込んでしまえば、三千世界の彼方まで吹き飛んで二度と戻ってこなくなる。この世界こそ、俺の全てなのだと全力で思う。
そもそもなぜ想像を始めたのかと言われると、理由は二つある。
一つは、俺が自分に自信が持てない引っ込み思案な性格に生まれたから。これは生まれつきだから変えようがないが、こういう性格の人は自分で言葉に出来ない分、心の中ではいろいろと考えているものなのだ。まぁ現実逃避と言われてしまえばそれまでなのだが。
そしてもう一つは、単純に読書が大好きだったからだ。本の世界は人の手によって生み出されるが、生み出された後はただ一つの物語を紡ぎだしてそれで終わり。
一度生まれた登場人物は、その物語の中で精一杯生きて読者の心を動かすが、その物語が終わってしまえば登場人物が次に生まれるのは同じ物語の冒頭だ。
そして繰り返し読まれ、そのうち読む人がいなくなると、その物語の登場人物は本の中で生きたまま死んでしまう。
それは俺にとってひどく悲しいことだった。大好きだったキャラクターも物語が終わってしまえば、ただ紙に染み込んだインクの一部になってしまうのだから。
だから、俺は心の中で彼らを蘇らせたのだ。
そうして心の中で蘇らせた人物を、頭の中に紡ぎだした新たな物語に登場させ、生きる意味を与える。こうして生き返った登場人物のことを考えるのは、俺にとって新たな物語と出会うより、遥かに楽しかったのだ。
そんな俺がいつものように他愛の無い想像にまみれた日々を送っていたとき、やたら大きい学校の小さな図書室で、一生忘れることの出来ない経験をした。
……想像が、現実になったのだ。
この部分はあまりいらないかなー、と後で思いなおしたのですが、せっかく書いたからには載せてあげなきゃ可哀想。そんなわけで、この小説はいきなりよぅ分からんプロローグから始まります。
次のページからは本編始まりますので、よしなに。