本人そっちのけな気がする
「く~るみ~」
「胡桃。」
帰り支度をしていると、突然、目の前に2つの影ができた。
またか。
「…なに?」
はぁ、とため息を吐きつつ、2人に問う。
いや。本当は聞かなくても、この人たちの言いたいことはわかる。
理由?
―そんなの。この2人とのつき合いが幼稚園の頃からの腐れ縁だからに決まっている。
次の言葉を、10年以上にわたってほとんど1年中聞いていた、と言うのもあるけど。
「一緒に帰ろ~」
「帰るぞ。」
うん、やっぱりいつも通り。
この2人が変わったのは外見や話し方ぐらいで、中身は本当に変わらない。
「…」
そしてこの後の展開も、毎回やってて飽きないのか、と思うくらい変化しない。
にらみ合いから始まり、
「あれー?なんで祐樹も帰るのかなー?今日日直でしょ。」
王子と呼ばれるくらいの容姿を持つほうが先にからみ、
「フンッ。あんなもの。すぐに終わらせたに決まっているだろう。」
それに辛辣な口をきくほうが切り返す。
「…」
双方、再びにらみ合い。
マンガだったら稲妻が走っていたことだろう。
わたしはというと、ここらへんでゴングの幻聴が鳴り響いている。
これもいつものことだ。
「丁寧にやんないと、あとで怒られるよ~。」
高校に入ってから髪を茶色に染め、さらに王子っぽくなった人がほわほわと話す。
意訳すると『てめぇ、うぜぇんだよ。』とかになると思う。
「完璧に終わらせたに決まっている。どっかの馬鹿とは違う。」
こちらは染めてはいないが、メガネと細くなった瞳がことばの辛辣さを強調している。
茶髪王子と同様、ヤンキー風に訳すと『そっちこそ散れや。』か。
紹介し忘れていたが。
王子様のほうが光也、辛辣なほうが祐樹という名だ。
「ん~?そうなの?祐樹ってホント、人造人間みたいだよね~」
人造人間。祐樹はあまり笑わないし、なかなかに的を射ている。
わたしは2人の口論を適当に聞き流しながら
机の中のものを鞄に移しかえていく作業を再開した。




